お役立ち情報
COLUMN
原則として月に一度、
代表 高木康裕が自身で執筆しております。
お客様の立場に立って、
新たな税務の情報や事例をご紹介。
辛口で税務の現場のナマの姿をお伝えして参ります!
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5139号
『譲渡』はいつあったのか?
土地を売れば譲渡税の対象となり、申告もしなければなりません。では、いつの時点で譲渡があり、課税されるのでしょうか?ちょっとの工夫で税負担にも大きな差が生じます。そこで、今回は譲渡、そしてその申告の時期について考えてみました。
1.原則は引き渡し基準原則としては、引き渡した日が譲渡のあった日、なのです。そうは言っても、何をもって引き渡しか、がまた問題です。売買代金の決済や移転登記が総て終われば判断に迷うこともないでしょう。しかし、残金も一部は残っている状況で、工事が開始された。決済は済んだが登記は未済で土地の利用もできない。分かり難い状況は様々で、実務的には正にケースバイケース、頭の痛いところです。
2.契約日基準もOK多くの場合、申告は遅らせて納税の日が一日でも延びる方が歓迎されるでしょう。しかし、売買契約を締結した日、を譲渡があった日として申告する事も認められています。税務署としては早めに納税があった方が税金が確保できて好都合だからです。 が、年度違いで税率が変更される、今期なら大きな赤字が見込まれる等々、早期に申告をした方がお得なケースもままあること。そんな時は残金決済が終わってなくても、契約の締結の日をもって申告です。
3.年度ごと、物件ごとの使い分けも可能です!さて、一般論として税法では親族間ならではの取引や経理を嫌う傾向があります。第三者間ではやらないのに、同族関係者間だからこそできてしまう行為は否認の対象とされるのです。これを認めれば利益操作が可能となり、結果的に税負担を減少させることにもつながるからです。その親族間の行為の妥当性の判断基準の一つに、毎期継続して同じやり方をしているかどうか、が問われることも結構多いもの。しかし、土地の売買については、上記の引き渡し基準、契約日基準の使い方は極めて大らかです。例えば、昨年は引き渡し基準、今年は契約日基準、と言うことも認められます。更には同一年度でも、土地Aについては引き渡し基準、土地Bは契約日基準が認められてしまうのです。しかも、個人に比べ厳格なやり方が求められる法人においてさえも、なのです。
いずれにせよ、どちらの基準で申告するかにより、実際の納税も凡そ一年違ってくるわけで、資金繰り上大きな相違が生じます。
4.事業用資産の買換えへの応用ここで話は一転。事業用資産の買換えの特例をご存じの方も多いことと思います。一定の資産を売却し、一定の資産に買換えると、最大で税負担が1/5にまで減少するという代物です。総じて売却資産と買換え資産には組み合わせがそれぞれ決まっています。そんな中、最も使い勝手の良いのは売却資産は10年超所有していること、買換え資産は国内に所在するものであること、いう極めて簡単なもの。この便利な特例が平成15年末で期限切れ、廃止の予定です。
今となっては時間不足、直ぐに売却先など見つからない、と諦めてしまった方も沢山おられることでしょう。ここで何かいい知恵はないものか?
総ての人を救うことはできませんが、ご自身の意のままになる同族会社、関係会社等があれば、それらの会社を利用です。勿論価格は適正な時価でなければなりません。が、これさえ守れば相手先は問われないのです。例えば平成4年12月末までに等価交換でマンションを建築した地主さん(所有期間が10年超となる最終時)。この特例を利用すれば、より収益性の高い物件に買換えられる、本当に最後のチャンスです。契約日基準で申告しさえすれば、買換え物件は来年末までに取得すればいいのです。
5.最後はお金の動きが鍵!ここで更に悪知恵を働かせる人もいるでしょう。そもそも同族間で売買契約をするのなら、日付なんてバックデートで何とでもなるのではないか。登記は若干遅れても、登記は強制されるものではないはず。つまり、年内に急いで契約を締結しなくても、申告期限までに済ませれば十分間に合うと、この手の方はうそぶくのです。確かに登記が遅れても、登記は絶対条件ではありません。中には未登記だってあるくらいです。
が、税務署を甘く見てはいけません。とりわけ特例の適用期限が切れるギリギリ間際の契約は、疑ってかかるのが税務署の常識というものです。特に契約の締結だけで金銭授受がない取引は、所詮ペーパーだけの仮装取引と言われても、言い逃れは難しいもの。第三者間取引なら、1~2割の手付金を払うのが当たり前のこの世界。お金の動きがない以上、取引の正当性は主張できないと考えるべきでしょう。ならば、取りあえず銀行口座を通して金銭授受をしておいて、その金額に合わせた契約書を後日作成すれば…?
筆者には答えようがない質問です。
当社は真面目な税理士法人、そんな脱税まがいのお手伝いはできません。応用編については、各方、良心に従ってお考えあれ!2003年12月15日
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5138号
遺産分割のやり直し!
相続の手続きで何と言っても大変なのは遺産の分割。その分割がやっと整ったにも拘わらず、様々な理由から分割協議のやり直しと言う事態が生じることも。ただ、気をつけたいのは税負担です。思わぬところで思わぬ税金。そこで、遺産分割のやり直しが本日のテーマです。
1.遺言なければ分割協議遺言が残されていなければ、相続人全員による分割協議で財産の割り振りをしなければなりません。民法上でその期日は決まってはいませんが、相続税の申告期限である10カ月後が申告義務のある方の実務上の期限です。
詳述は致しませんが、この期限内に分割が整わないと、税務上の様々な特典が受けられません。そのためでもないでしょうが、何とか無理矢理に妥協する事も多いようです。
蛇足ではありますが、遺言に定めていない財産があれば、それについては分割協議が必要です。また、遺言があっても相続人全員の同意があれば、遺言を無視して分割協議で財産分けをする事だって可能です。
2.実質を伴わない分割協議こんなご相談を受けました。相続人は3人兄弟 の甲乙丙、大きな賃貸物件であるオフィスビルの相続です。遺言によれば、3人での共有を指定です。これ以外の細かな財産は遺言に規定がなかったため、前述のようにオフィス以外の他の財産については分割協議を行いました。何とか期限までに相続税の申告も納税も済ませたそうです。本来ならば遺言により賃貸物件は3人の共有のため、その賃料も3等分されるべき。しかし、甲一人が登記未了のままオフィスビルを管理し賃料も独占、ここから3人の長い長い争いの始まりです。
当然の事ながら、乙と丙は弁護士を立てて甲に賃料の返還を求めます。甲はと言えば、そもそもの遺言の正当性を否定、家裁での話し合いはもつれました。そして、8年の歳月を要してようやく決着のきざし。ビルは甲が取得をし、他の財産と相応分の金員を乙丙に支払う事になったのです。
さて、この間、ビルの賃貸収入については、甲は一人でその全額を申告していました。この状態、つまり財産の分割のやり直しがまとまりそうな状態で税務面のご相談を頂いたのです。 オフィスビルの登記までする段階で、です。
3.本来の手続きは分割協議のやり直し本来の手続きはどうなるのでしょう?理屈の上では一度決まった分割協議のやり直しです。当然、相続税の負担も当初のものとは異なります。
当初よりも税負担の多くなる人は修正申告、減る人は更正の請求や嘆願書の形で還付を求めることになるわけです。が、税法上は別として、いかんせん8年も経過してしまっています。
それに何より分割協議をやり直したら、税務上は新たな財産の移転ととらえ、贈与税が課税なのです。つまり、建前として税負担無しに分割協議のやり直しはできないのです。
が、繰り返します。実際には家裁での調停という分割協議のやり直しに全員が同意をしている状況なのです。
4.税務署は事実を何処まで追ってくるか?まず、オフィスビルの登記をすることになるでしょう。甲一人の単独所有、登記原因は勿論分割協議に基づく『相続』です。
では、登記をすれば必ず税務署にバレルのか? 公正かつ適正な税務に協力すべき、税理士の立場からはちょっと申し上げにくいのですが、独り言を申し上げましょう。登記原因に依るというのがその答えです。原因が売買や贈与であれば直ぐさま目を付けられます。しかし、原因が相続であれば、それを一つ一つ申告の有無を確認などしないのです。なにしろ、相続税の申告は100人の方が亡くなっても、5人しか対象者がいないのですから。売却すれば、それだけで申告が必要な譲渡税とは違うのです。まして、8年も前の相続を当時の分割協議書と合致しているかどうかの確認など、できようはずもありません。つまり、家裁での調停事項どおり事を進め、登記をしても、実務的には問題はないのです。(そのようにお勧めもしておりませんし、このお客様がどうなさったかは私も知りません。)
遺産分割のもめ事を回避するのは遺言と言いながら、遺言で総てが解決できる訳ではありません。内容次第では遺言がその後の親族間に感情的なしこりを残します。ああ遺言、あっても問題、なければ更に問題です。やっぱり最善の相続対策は死なないこと、と心得ましょう!2003年11月28日
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5137号
相続時精算課税制度はこう使おう!
今年から導入された、注目の相続時精算課税制度。
何しろ生涯で2500万円までの贈与が非課税で、これを超えても贈与税の税率は一律20%。相続税の対象とならない方には、これ以上の朗報はありません。が、実際の相続時には結局相続財産として計算の対象に。税負担だけを考えた場合、相続税は必ずしも軽減されると断言はできません。言ってみれば相続の前倒し、と考えればよい訳です。
そこで、こんな使い方を考えてみました。
1.収益物件を贈与するなら…例えば賃貸アパートの建物本体をこの制度を利用して贈与した場合はどうでしょう?
物件によっては若干の贈与税の負担はあるものの、アパートからの賃貸収入そのものは、生前にお子さんに移転させることが可能です。結果として、所得税や住民税の負担を子に移行させることになり、トータルでの家族の税負担は減少。更には親に財産が蓄積せず、相続人である子に納税資金の準備さえできることになります。
しかし、そのためだけであれば法人を設立し、その法人が賃貸アパートを所有すればよいのです。賃貸物件の収入総てがその法人になるため、役員報酬という形で子に所得を分散させることだって可能です。これなら贈与税もかからず、将来相続財産に取り込まれることもありません。
つまり、税負担だけを考えた場合、この新制度、お得な制度であると言い切ることは難しいのです。
2.“生き金”と“死に金”ここで、贈与の本来の意味を考えてみましょう。贈与とは、父や母が積極的な意志を持って、子に財産を無償で譲り渡す行為です。貰う側の子も親の意志を理解した上で、その財産を譲り受けるのです。
相続のように、無言のうちに財産を承継するわけではありません。もちろん、相続においても亡くなっていく方の意志が、全く反映されないわけではないでしょう。しかし、仮に遺言という形式を取った場合でも、あくまでそれは親から子への一方通行。子がそれに対して意見や感情を表現しようにも、もはやそれはかなわない行為なのです。
それに対し生前における贈与とは、双方向の行為です。親が子に財産を有効に役立てることを託し、子はそれに感謝をもって応えることができるのです。とりわけ、子が教育資金や住宅ローンで苦労している時代であればなおさらです。
同じお金、同じ財産でありながら、譲られる時期によって、大きな差が出てくることにもなるのです。正に“生き金”と“死に金”。相続と贈与では親にも子にも、その与える影響は計り知れない程の“効果”があることだけは間違いありません。その意味では、この制度、今後の親子関係を改めて考える有効な手だてであるとも言えるでしょう。
3.遺留分放棄の制度と組み合わせると…“争族”を避けるために遺言書を作成する。結構なことではありますが、それで総てが解決できるわけではありません。遺留分の定めがあるからです。解決策は遺言と遺留分放棄の組み合わせ。
遺留分放棄とは耳慣れない言葉ですが、相続放棄とは違います。相続自体を放棄するわけではなく、遺留分の侵害があっても文句は言わないことを生前に約束することです。相続放棄は実際の相続前にはできません。が、この手続きは親の生存中でも可能です。家庭裁判所に申し立てをし、許可をもらうのですが、それなりの理由が必要です。
例えば生前に十分な贈与を受けたから、相続時には遺言の通りでそれ以上の要求はしません、と言う風に。今まではこれをしたくても、生前に贈与をすれば多額の贈与税負担のためにできませんでした。それが相続時精算課税制度と遺留分放棄との組み合わせで可能になったのです。何しろ将来の相続税を別にすれば、2500万円までは非課税で、それを超えても20%の税率で済むのですから。
例えばこの制度で次男に生前に1億円の贈与を考えてみましょう。贈与税は1500万円で手残り8500万円。これなら今の時点で住宅ローンを完済し、更なる余裕も生まれます。一方、財産の大半は後を継ぐ同居の長男とする遺言を作成します。この遺言作成に際し、次男に内容を開示すると共に、1億円の贈与を話した上で遺留分放棄をさせるのです。次男も間違いなく喜んで納得の上、放棄に応じてくれるでしょう。いわば、相続手続きを生前に終了させてしまうのです。目の前に今の時点で1億円積まれたら、少なくとも筆者は考える余地はありません。
(どっちなの?)2003年10月30日
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5136号
値上がり分かって直前に贈与!?
土地を贈与するとします。その土地をいくらで見るかは、相続税法上の時価、と言うことに。贈与税は相続税法に規定されているからです。さて、何かの都合で今は安いこの土地が、突然価値ある土地となり、高額に化けると分かって、直前に贈与したらどうでしょう。従前の安いままの価格で贈与できるのでしょうか?世の中にそんな上手い話があるかどうかが本日のテーマです。
1.贈与時の時価が原則です。贈与財産の価額は贈与時の時価とされています。しかし、税法は総てについて具体的な評価方法は定めておりません。そこで、実務上の指針となるのが『財産評価基本通達』で、一般にも公開されているものです。土地については、市街地等では路線価が、路線価が付されていない場所では倍率方式が基本です。路線価方式は既にお馴染みのもの。定められた路線価を元に、間口や奥行き等を考慮して評価です。倍率方式は固定資産税の評価額を基に、単純に規定の倍率を乗じたもの。極めて大雑把な評価方法です。
2.突然、価値が増大する局面での贈与さて、ある日降って湧いたように地上げ、隣地買収等の申し出が。何と相当に高額な買い取り価格を提示されたとします。今までは二束三文の土地、高く買って貰えるとは嬉しい限りです。ここで相続対策を兼ねて一計を案じます。このまま売れば確かにお金は入るものの、結局相続税でお国のものに。売却前に子に贈与したらどうでしょう?今なら土地の評価額、どうせたかが知れたもの。贈与税も大した負担にならずに済み、それを子が売ればお金は子供に。が、小心者の私、俄にこんな疑問がフツフツと湧いてきます。高く売却できると分かっていながら直前に贈与。贈与税の価格は従前の低い価額でなく、高額な買い取り価額と税務署は言うのではないか?第三者が買いたいと言った価額が、正しくその時点での時価になるのではないか?
それが善良な市民、見上げた納税者と言うものです。しかし、ここは焦らず理論的に考えましょう。
3.親子間では贈与であって、売買ではない!今、親子でやろうとしているのは贈与です。贈与税の課税はあくまで贈与時点での時価。その時価は『財産評価基本通達』で計算すればよいことに!
確かに売ればもっと高く売れるでしょう。それは売却という、所得税法上の時価ではないのか?贈与税という相続税法上の時価とは違ってもいいのではないのか?
そうなのです。一口に時価と言っても色々です。同じ時期での同じ土地であったとしても、時価の考え方は違うのです。税務の世界では、公示価格というものが売却する際の時価と言うことに建前上はなっています。しかし、相続税法は土地を公示価格で課税したら、担税力の観点からも、また評価の安全性を担保する観点からも問題が残る。そのため公示価格の概ね8割相当を路線価と定め、その価格で課税する事になっているのです。
つまり、売却すれば多分、相当程度の確実性をもって高い価額で売却できても、それは実際に売却してみて初めてその価格が実現するもの。贈与する際の時価とは考えなくてもよいのです。但し、親子間でその後の高額買い取りを前提に、売買する場合はそうはいきません。多分売れるであろうその金額が時価になってしまうのです。また、贈与ではあっても、その贈与以前に実際の売買契約があったのでは、従前の安い金額での贈与は難しいでしょう。
4.ある時は財産評価基本通達、ある時は“時価”例えば相続税の申告で、土地がAB2ケ所あったとします。Aは財産評価通達がBは鑑定による価格が有利なら、それぞれ異なる方法(Aは通達Bは鑑定)で評価しても良い事は、ご存じの方も多いはず。それと同じような考え方で良いのでしょう。前述の例で、直後に買い取られる高額な金額を贈与税の評価額として申告したら、税務署は高過ぎる、と言って減額更正するのでしょうか?そんなことは太陽が西から昇ることがあってもあり得ません。
それはそれとして、税務署は納税者に有利な選択を許しておいていいのでしょうか?ある時は通達、ある時は鑑定等による時価など許されるのでしょうか?全く問題はありません。考えてもみて下さい。何を以て評価をしても、決して税務署が損をすることはないのです。仕入れ値段はないのですから。
そして税金とは、いつの世も時の権力者の都合によって、『有り難う』も言わず、単に召し上げるだけのものなのですから。2003年9月29日
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5135号
プロの隠し味
個人の不動産所得の計算くらいなら、何もお金を払って税理士に頼む必要など無い!何しろ自分でやれば費用はタダ。浮いたお金で温泉にでも行った方が精神的にも経済的にも健康的?
ちょっと待って下さい。中には完璧な方がいらっしゃるのも事実です。しかし、我々から見ると御自分で申告する方は意外なところで損をしていることも多いもの。専門的なことは申しません。基本のキだけでも、ちょっとの工夫でこんなことが…
1.建物本体と付属設備を分ければこんなにお得!現在、新築建物に認められている減価償却の方法は定額法だけになっています。そのため、賃貸用のアパートやマンションを建築した場合、何の疑問も持たずにその全額を建物として定額法で減価償却していませんか?それ自体、誤った処理方法ではありません。でも、建築工事の内容を細かに分析し、建物本体と附属設備である電気設備、給排水設備、冷暖房器具等を別々に資産計上したらどうでしょう?
まず第一に耐用年数が大幅に短くなります。建物は鉄筋系でマンションならば47年。それに対して附属設備はそれぞれ6年~15年、何と半分以下の年数で償却ができてしまうのです。更に、減価償却の方法も附属設備になれば定率法が可能です。これで早期の償却が可能となり、建築当初の節税効果が格段に優ること請け合いです!
2.専従者給与はとにかく103万円以下?奥様を専従者にし専従者給与をお支払いになる。結構な節税策です。給与を支払っても、なおかつ奥様の所得金額が38万円以下なら奥様自身も税金の課税対象にならずに済む。この所得金額38万円から逆算すれば、給与所得控除額が65万円あり、給与は収入金額にして年間103万円。これで決まり!
と、これが素人の浅はかさ(失礼!)なのです。勿論、103万円がベストチョイスと言うケースもあるでしょう。しかし、問題は一体ご主人の適用税率が何%なのかと言うことなのです。
説明の都合上、敢えてラフな計算例で考えてみましょう。例えば、ご主人の課税所得が3000万円で、所得税住民税合計の適用税率50%の場合です。奥様に500万円の専従者給与を支払うと、奥様にも所得税住民税が課税です。他の所得や控除項目がないとすれば、約50万円の負担を担うことに。
ただ、奥様へお支払いになった給与500万円が経費となって税負担を軽減しています。従前の103万円よりご主人の所得は約400万円減少で、これも50%の適用税率で計算すると200万円ほどの節税です。つまり、奥様に課税のないことだけに重点を置き、奥様への給与を103万円に抑える。又は奥様にも税負担はあるものの、500万円の給与にして、差し引き(200-50)の150万円 を節税する。決して難しい算数ではないはずです。
3.簡易な貸借対照表で良いのです!不動産賃貸業、つまり不動産所得のある方で一定規模以上の場合、青色申告をされると大きな特典が用意されています。何の事かというと、申告時の青色決算書に貸借対照表を添付すれば、青色申告特別控除額として55万円が所得から控除できることになっているのです。55万円控除と言えば大きなものの、一般の方は貸借対照表と聞いただけで諦めてしまうのです。厳密にはと言うか、理論的にはこれを作成するには複式簿記が必要ですが、実務はいたって簡単です。期末時点の残高を確認し、表を埋めれば良いのです。法人と全く同じにはできる訳がありません。最初から帳簿があったわけではないのですから。一定以上の記載があれば十分で、これで55万円をゲットできることを一般の方はなかなかご存じないのです。
4.プロは全体を考えます!上記の例はホンの一例で、基本的な事項でもちょっとの工夫で大きな違いがでてくるものなのです。 更に言えば、当たり前ですがプロは所得税の申告書を作る際、他のことも考えます。消費税への影響、法人の活用法、挙げ句は将来の相続税負担等々、これらを総合的に考えて、はじめて答を出すのです。所得税の申告時に所得税だけを考えていたのでは、素人と言われても仕方ありません。
突然ですが、ここで問題です。あなたは税理士に頼んで安心するのと、ご損に2003年8月29日
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5134号
善意の”寄贈”も意外に苦労します
苦労をして築き守ってきた財産。その財産をめぐって相続人達が争えば、何とも見苦しい事に。また、必要以上に美田を残せば、相続人の人生を狂わせる結果になるかも知れない。そこで、いっそ財産をどこかに寄付しよう、世のため人のため、と考えたとしましょう。意外に厳しいのが無償で寄贈した場合の税務の世界。何か良い知恵はないものでしょうか?
1.原則は相続税は個人だけ!相続税が課税されるのは、言うまでもなく、原則としては個人だけです。例外はあるものの、本論ではないのでここでは省略です。
さて、相続や遺贈により、個人が財産を貰った時だけ課税なら、遺言で法人に寄付をしたらどうなるのでしょう?
2.相続税はかかりませんが…確かに貰った方の法人に相続税はかかりません。
しかし、法人税が待っています。基本的に法人は、財産を無償で譲り受ければ時価での課税。貰った財産を時価で算定して、受贈益課税という形で法人税がかかることになるのです。
例えば通常の相続税なら、土地を評価する場合、路線価で算定をした価格で計算です。建前としてはこの路線価、時価の8割相当と言うことになっています。しかし、法人が貰えばこの路線価は使えず、まるまるの時価。これに法人税率を乗じて法人税の課税です。
3.それなら堂々と同族会社へ寄贈したらならば、我が未上場の同族会社を利用したい、こう考えるのが人情です。自らが社長であるX社に対し、遺言で死後10億円の寄付を残したとしましょう。勿論X社にはこの10億円に約40%の法人税等が課税です。
これに対し相続税の最高税率は50%。適用される相続税の税率次第では、法人を利用するのも悪くはありません。今話題の法人税率の引き下げが実現すれば、有利性はより高まることになるでしょう。そして更に、もしこのX社に繰越欠損金が6億円あったなら、その欠損金と相殺される分には課税がなく、原則差し引き4億円だけに課税です。
4.ここなら法人税も非課税です話は寄贈に戻りますが、税務署もせっかくの人の好意を総て無にするわけではありません。税法に規定する公共法人は言を俟(ま)つまでもなく、公益法人等に対する寄贈も本来の公益活動に資するものであれば非課税なのです。
これら公共・公益法人等として、税法では特定の団体を限定列挙しています。住宅金融公庫、首都高速道路公団、宇宙開発事業団等々がそれに該当するものです。ただ、注意すべきは財団法人と社団法人です。財団も社団も共に公益法人等と言う範疇に入ってはいます。しかし、ここで言うのは、あくまで民法という法律に則って設立されたものだけ。例えば世間によくある財団法人○○病院は、民法ではなく特別法である医療法の規定によるため該当はありません。前述の同族会社の場合と同様です。
さて、人生の最期をお世話になった○○病院。感謝の意を表して死後は3億円の寄贈をしたい、なんて話はよくあること。しかし、それを貰った病院も、3億円全額を使うことはできません。ここでもしっかり法人税が口を広げて待っているからです。現金ならまだしも、無味乾燥な病院の壁に秘蔵のゴッホを贈ろうとしたら、課税を嫌った病院にマンマと断られた、なんて話も聞いたりします。笑えないような困った話です。
5.自ら財団、社団を作ったら…最後に昔からある伝統的手法をご紹介しましょう。それは、自ら民法上の財団や社団を作ってしまう方法です。これなら確実に自分の名前と名誉を遺(のこ)し、無税で財産も残せます。しかし、昨今この手の財団や社団の設立を許可して貰うのは至難の業。あわよくば設立が認められたとして、理事のポストは役人の恰好の天下り先。許可の実権を握る関係省庁から理事就任の打診があるとかないとか。
仮に設立が認められても、一族で主要ポストを占めることなどハナから無理。節税にはなっても財産は自由にはならなくなってしまうのです。
奥の手は既存の財団、社団で休眠中のものを買収するのだそうな。蛇の道は蛇で、仲介ブローカーの活躍で、天下り先の餌食からも免れるとか。
いずれにせよ、世のためも人のためも難しそう。そもそも税法は、税金を取り立て、税務署を喜ばすための法律なのです。で、どうするか?例によってここから先は個別に、有料でのご相談です。2003年7月31日
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5133号
やり方一つで延滞税は回避?
相続税の申告書を作成する場合、我々が最も頭を悩ますのが財産の評価です。勿論、税務署に忠実な評価なら心配はないものの、それが実態にそぐわない場合に問題が生じます。忠実ではないが故のリスクがあるからです。
そこで、本日はそのリスク回避法、とっておきの奥の手のご紹介です。
1.通達は絶対ではない!財産の評価方法については、税法上は時価としか規定されていません。そこで税務署では細かな規定を通達という形で補完、一般に公開もしています。ただ、これはあくまで税務署の職員用。法律ではないため、必ずしもこれの通りでなくても構わないものの、従っていれば、文句を言われるはずはありません。路線価に基づく評価が正にこれ。が、通達では実態を反映せず、不利な評価になってしまう場合もあり得ます。この場合、時価であることをこちらで立証すれば通達どおりではなくても勿論OK。
代表例は不動産の鑑定評価による申告でしょうか?
2.強気申告と弱気申告通達通りでは実態を反映しない場合の申告の仕方は2通りです。第一法は、とりあえず当初の申告は意に添わないものの通達で。後日、更正の請求というやり直しの減額申請を行うもの。駄目モトで減額申請するため、何のリスクもありません。が、積極性に欠け成功率も次の第二法に較べてやや低い弱気の申告。これに対する第二法、当初より通達を無視し、己の信ずる道で勝負です。税務署に否認され、追加の税金、加算税、延滞税のリスクを負うものの、強気申告が奏功し、成功率は上がります。税務署もその積極姿勢に圧倒され、否認するのも第一法よりは骨が折れるからです。
3.リスクの中味は加算税と延滞税上記でお分かりのとおり、本税は落ち着くところに落ちつくもの。両者の違い、リスクの中味は結局のところ、加算税と延滞税です。加算税とはいわゆる罰金で、延滞税は納税が本来の期限より遅れた利息、とでもご理解下さい。脱税をするわけではないので、加算税も比較的軽微、本税の10~15%です。結論から言えば、加算税についてはどうにも回避ができません。
さて、延滞税のリスクとはどう言うものでしょう?申告をし、最終的な税務署の結論が出るまでには時間がかかるもの。結論が出て不足分の税金を納めるまでには当初の納期限と相当の時間的ズレが。そのずれた分だけ、年14.6 %(但し、最初の2ケ月は変動金利で現行 4.1%)の利率で延滞税。サラ金並の高利と文句を言っても相手は税務署、強硬手段で課税です。
4.延滞税回避の秘策!ならば、これを回避するにはどうするか?
予め、否認された場合の税金を当初から納めておけばよいのです。これを予納と言い、晴れてこちらの主張が通れば条件付ではありますが、気持ちよく、のし紙ならぬ利息(還付加算金と言う)まで付けて返してくれます。この辺はサラ金よりもずっと上品なのです。逆に主張が通らず、税務署に否認されればそのまま充当、予納金が本来の本税となります。この場合、当初から納めていたことになるため、延滞税がかからない仕組みになっているのです。
ただ、ご注意頂く点は、予納する旨、書面で提出をする必要があります。そうでないと税務署では、納税者が間違った金額を納税したものと勘違いし、直ぐに返金されてしまうからです。また、予納とは言っても、納付の必要がないと判断されるまで、返してくれとは言えません。予納も、歴とした適法な納税なのです。ただ、無制限に予納を続けるわけにはいきません。通達上は概ね6ケ月以内と言うことになっているからです。そして最大のオマケは前述の還付加算金。これは変動金利ですが、延滞税の最初の2ケ月と同じ利率で現行は4.1%。
5.過誤納と予納とは違うぞ!今時の低金利を考えたとき、予納は桁違いの高金利商品?それならわざと多めに納め、還付加算金狙いを考える方がきっとおられることと、筆者は確信しております。が、そう簡単にはいきません。税務署も管理部門が目を光らせ、過誤納は即刻返金。第一、仮に予納の旨を書面で出しても、意味がなければ過誤納扱い、相応の理由がなければ予納は難しいのです。税務署にとっても還付加算金は付けたくないため、処理は迅速そのもの。何故かこれだけはお役所仕事ではないのです!
2003年6月26日
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5132号
『鑑定より高く売却、申告や如何に?』
-今一度、土地の時価を考える!-相続税の申告において、路線価に基づく税務署の評価方法が、常に適正な価格を反映している訳ではありません。土地の形状や道路付け、実際の周辺相場によっては本来の価値以上の評価がなされる危険もあり得ること。 そんな時は鑑定評価で申告です。
が、申告後、鑑定価格より高く売れたらどうなるのでしょう?売却の申告をごまかす訳にもいかず、いずれ税務署の知るところに…時価をめぐって税務署とドキハラの攻防戦。
ご一緒に冷や汗をかきながら、もう一度時価について考えて頂きましょう!
1.鑑定価格より高く売却できたら…先般も申告を控え、評価が高過ぎる疑念があり、鑑定評価で申告です。路線価3億2000万円に対し、鑑定は2億6000万円でした。実際、不動産業者数社に当たっても、路線価ほどにも届かなかったのです。自信を持った鑑定でした。
しかし、申告期限の直前に何と3億6000万円で売却できてしまったらしいのです。
実はこの事実、申告後数カ月を経て、相続税の調査の段階で我々も初めて知ることになったのです。顧問先のお客様ではなく、相続税の申告だけをご依頼のお客様だったため、申告後の経緯は知らずじまい。いざ調査になり、この状況だったのです。ただ、相続税の申告書も譲渡税の申告書も既に提出済みで総ては白日の下に。勿論調査では開口一番の指摘事項でした。さて、税務署も鑑定評価による申告をそのまま鵜呑みにするわけではありません。問題点があれば税務署だって再鑑定で臨みます。しかし、総ての事案に鑑定を取るわけにもいきません。この事案に対しては、実際の売買価格とは言わないまでも、路線価までの引き上げ、修正を要求されたのです。
事実は、買い手が土地の仕入れから建物の建築、販売まで、総て自社でやれる地元の業者だったのです。建築部分で利益が見込めるため、土地については利幅を無視し、破格の値段を提示できたのでしょう。売り主であるお客様も後先を考えずに飛びついたようでした。税務署に対しては、他の業者からの買い付け価格を証拠資料として提示。いわば例外的なケースとして納得して貰うことができました。何とか無事に修正無しで調査も終了。当社も知らなかったことだけに、冷や汗のかき通し。心臓に悪い事案でした。
2.収益還元価値の考え方さて、公示価格、路線価、固定資産税評価額等々土地の価格も色々です。いずれもそれぞれの目的のための時価、と言う事にはなっています。これらは、取引事例比較法なる周辺相場を基準とする算定手法を中心としています。ただ、昨今は収益還元法の考え方が流行です。その土地がいくらの収益を生むかにより、価値を算出する手法です。鑑定理論上は従来からあるものの、実務では主役とは言えない状況のようでした。
しかし、昨今の地価状況、都心の特定地域だけが値上がりし、その他は値下がりという二極分化状態。特に商業地区においてはこの手法、有効なと言うより、必須の時価算定法と言って間違いないのだそうです。
残念なことに、従来税務署には収益還元価値での鑑定、申告はほとんど認められていなかったのが実態です。ただ、時代の流れには税務署と言えども逆らえません。判例にもちらほら収益還元価値が採用され始めており、取引事例一辺倒は減少すること必至です。
3.固定資産税の評価は?路線価にこの収益還元法が取り入れられていなくても、相続税はまだ救われます。前述の例のように鑑定評価と言う手段があるからです。悲惨なのは固定資産税、従前どおりの考え方から一歩も踏み出していないのです。因みに、お持ちの土地にマンションやオフィスを建てて頂きたい。そこからどれ程の収益が生み出せるのか。そして、そこから導かれる収益還元価値としての土地の時価と、固定資産税の評価額とを比較してみて下さい。
収益還元価値をほとんど無視した固定資産税評価額。それに基づいて毎年実際の価値以上の高額な固定資産税を払っているとしたら…
お持ちの土地、このままで本当に大丈夫ですか?2003年5月30日
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5131号
調査にマイナス増差はない!?
相続でも重要!建物の固定資産税評価額またまた相続税調査の話で恐縮です。通常、税務調査があれば、何らかの誤りが発見され、追加の税金を納めるのが一般的。逆に税金が減る場合、調査はなかったことに……何とも理不尽な税務署のお話です。
1.相続税における建物の評価額相続税においては、財産の評価は"時価"で行うのが原則です。その時価、建物については税務署の社内規定である通達で、固定資産税評価額と言う事になっています。
さて、平成13年3月に賃貸住宅が竣工、借り主も埋まったところで5月に亡くなられたNさんのケースです。申告の期限は翌14年3月。ところが固定資産税は毎年1月1日の所有者に課税です。つまり、13年の1月には竣工していないため評価はなく、14年になって初めて評価も決まり、課税となるわけなのです。結論を言えば、相続税の申告までに評価額は決まらない。こんな時は、建築価額の70%相当で評価すればいいことに。
2.意外に安い固定資産税の評価額!固定資産税の建物評価は、建物の構造や部材等により細かな評点方法が決められており、その総合評点により算出されることになっています。建築価額に比して、鉄筋系で70 ~80%程度、木造系で40~50%程度でしょうか。賃貸の場合はそこから更に3割引の評価です。正に賃貸住宅は相続対策と言われる所以。さて、Nさんの場合、建築価額は約2億円。申告に際しては、これの70%相当、1億4千万円がまずは基準です。ところが14年の5月になって固定資産税の通知が来てみると、なんと申告額との差額が6千万円もあったのです。
これはヒドイと、申告のやり直し、更正の請求と言う手続きを考えている矢先に相続税の調査の通知が。ま、こんな状態なら、万が一調査の過程で何か誤りがあったとしても、6千万円までは保険に入っているみたいなもの、と安心していたのです。が、甘かった。
3.調査にマイナス増差はない!?調査は朝から順調に進み、何事もなく終盤に。申告内容に御納得頂いてお帰りになろうとしていた時です。満を持して言い出しました。『実は建物の固定資産税評価が申告の直後2ケ月経って通知が来たのです。それによると6千万円も差額があったんですよ。更正の請求をしようと思っていたのですが、調査に来るとおっしゃる。それで、ちょうど良い機会だと思い、お待ちしていたのです。これこれの通りですので、この調査で確認して頂き、減額して下さい。』
調査官『???』。ややもして『更正の請求というのは間違った申告をした場合、一定の期間内に税額の軽減をする救済策です。本件の場合、間違った申告ではなく、建築価額の70%相当と言う適正な評価方法で算出をしているわけで、何というか、つまり、その、…』歯切れが悪い。
早い話、誤った申告をしたわけではないので減額はできないとおっしゃるのです。
調査官の気持ちが分からぬ程、こちらも野暮ではないつもりです。しかし、通知が5月になったのは、固定資産税の係の都合。こちらに非はないのです。通知が3月なら6千万も安いのに、5月だったのは運が悪かった、では済まない話ではないでしょうか?
4.仕方なく更正の請求で決着!こうなれば仕方がない。更正の請求という手続きです。ただ、その中で皮肉たっぷりに書かせて頂きました。本来、調査の過程で分かったのだから、調査額として減額すべきではないのですか、と。
当方としても、誤りではないと言われると苦しいものはありますが、どう考えても納得のいかない話。正直、行く末を案じてはおりましたが、遂にご託宣が参りました。満額回答です。6千万円減額で税額として3千万円が戻ったのです。
相続時に固定資産税評価が出ていないケースはよくあるもの。諦めず、交渉をしてご託宣に期待です!2003年4月30日
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5130号
たまには得する『個人成り』!
新たに事業を始めるに当たり、当初は個人営業でも、ある程度の規模になれば、法人成り(会社組織にすること)はよくある話です。色々な面で有利だからでしょう。珍しいケースでしょうが、その逆、つまり個人成りで得した事例のご紹介です。
1.何故、"法人成り"が有利なのか?一般論で言えば、最大の理由は体裁というか、社会的信用とでも言うものでしょうか? 個人事業では、いかにも頼りない存在に見える点は否定できません。法人にすれば税務の面でも特典は様々です。例えば、家族を役員にして、所得の分散を図るのは国民的常識です。理論的なことは別にして、実績以上の役員報酬が支払われるのも実務ではよく見られるもの。交際費だって個人より法人の方が、限度計算はあるもののずっと認めて貰い易いのが事実です。最後に、お客様も法人のお金は何となく自分のものではないのでしょう。下世話な話で恐縮ですが、我々税理士も個人からより報酬を頂き易い。
2.会社役員Αさんの事例Αさんは都内で釣り堀とバッティングセンターを経営する会社の代表者です。事業自体は昨今の不況もあってジリ貧の大赤字。近年は満足な役員報酬も取れない程の有様でした。土地は大地主であるお父様から賃借しているものの、場所柄、有効活用とはとても言えない状況です。一時は廃業も考えたのですが、熱狂的な固定客の声援もあり、規模を半分に縮小しての営業継続となりました。残り半分にはお父様の相続対策も踏まえ、お父様名義の賃貸マンションを建設したのです。法人名義での建設も考えたのですが、所得・法人・相続税等総合的な判断からお父様個人での建設を選ばれました。
さて、地の利にも恵まれ、マンションは満室。大地主であるお父様の不動産所得は益々増え、嬉しい悲鳴の一方で、所得・住民税負担に喘ぐ結果に!
3."個人成り"でお父様の所得にすれば…ここでΑ社は赤字でお父様は大黒字の状況に一計を案じ、逆転の発想をしてみました。
それはΑ社をお父様の個人事業にしてしまうことなのです。所得状況を下記の場合で考えてみましょう。お父様の不動産所得
Αさんの会社の所得40,000千円
△10,000千円言うまでもなく、このままでは両者は別々の人格。利益と損失を通算できるはずもありません。しかし、話を非常に単純に割り切って、Αさんの会社の所得をお父様個人の事業所得と考えてみましょう。
お父様の不動産所得
お父様の事業所得40,000千円
△10,000千円これならお父様の所得として通算ができ、差し引き30,000千円の所得です。しかも、事業の部分は実質的にΑさんが専属で行うわけで、お父様の青色事業専従者と言う立場も可能です。つまり、お父様から給料を貰い、その分が経費になると言う仕組みです。仮にΑさんの給料を年間で12,000千円とすれば、お父様の所得は30,000千円-12,000千円で18,000千円と激減し、全体でうまく所得の分散ができることになるのです。今までΑ社から満足な役員報酬も取れなかったΑさんも大喜び、次代への所得の移転が意外な形で実現できました。
4.やっかいな借地権の存在実は個人なりに当たり、一つ避けて通れない問題がありました。お父様から賃借している土地の一部にΑ社の借地権が存在していることです。こうなると、不用意に会社を清算すると、清算所得という課税があり得るのです。そこで、会社の存続を前提に借地部分の底地をお父様から取得することに。但しΑ社にお金はないためお父様から無償で贈与を受けました。ただ、これは受贈益と言って、本来はΑ社に法人税がかかるのですが、累積赤字と通算です。つまり、法人税の課税はなく、同時にお父様の底地という財産が減少することで相続対策にも寄与することになったのです。尤もお父様は法人に無償で贈与した場合、詳細は省きますがみなし譲渡と言う譲渡課税がなされます。しかし、相続税の最高税率に比較して約半分、不利な話ではないのです。これでΑ社は建物と借地権でない完全な所有権である土地を有する会社にはなったものの、実態実業がありません。Αさんの奥様が主催する陶芸教室運営のB社と合併し(Α社はB社に吸収)B社が土地建物の所有者としてお父様に建物を賃貸したのです。
この結果、お父様は地主であると共に釣り堀とバッティングセンターを個人営業で主催。これで前述のように赤字と黒字の通算ができ、更にB社に家賃を払うことで経費が増大。その家賃はB社に入り、Αさんの奥様の役員報酬の原資になっているわけです。何ともでき過ぎな個人成り。いつでも会社さえ作れば良いと言う単純なものではないものの、この日本、会社があればやっぱり色々便利です。2003年3月28日
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5129号
えっ!年明けに相続税調査?
今年は何という年なのでしょう?年明け早々、税務署から立て続けに3件も相続税調査の連絡が入ったのです。確定申告が目前という時期に、です。
税務署の恨みを買い、狙い撃ちにあう程悪いことはしていない筈なのですが…
1.特官部門は例外です以前にも税務署の調査のスケジュールはお話したと思います。東京局の場合、相続税は8月までの申告期限分について、通常は9月から年末までが調査の時期。例えば10月が申告期限なら、調査はその年はなく、翌年の9月以降となるわけです。逆に言えば、昨年8月末までの分は、年が明けた今は調査は無しと考えて差し支えないのです。が、しかし、一つの例外あり!通称、特官部門がそれで、特別国税調査官とそれを補佐する調査官から構成されます。資産税だけでなく、法人税にも所得税にもありますが、要は大口事案や困難事案を処理する面々。
相続について言えば、超大口資産家と呼ばれる方々を管理し、調査するのです。一般部門では、年が明ければ譲渡事案の呼び出しや、贈与のチェック等確定申告の準備に大童の季節。が、特官部門はそんな細かな仕事はやりません。ひたすら大口困難事案の追求、調査なのです。
つまり、冒頭の3件の調査は、総て超大口資産家の方々だったのです。
2.短期決戦、急ぐ結論!税務署には事務年度なるものがあります。7月の異動時期を皮切りに、12月末までが最も重要な調査の成果の評価時期なのです。相続に限って言えば、顕著な調査結果が出ると見込まれるものは、当然ながら年内に調査。美味しいものから順に手掛けるのは調査の定石で、年明け後の調査は言ってみればオマケの世界。従って調査も重点を絞り、短期決戦です。中には調査においでになるなり、一枚のメモ用紙を差し出し、『本日の調査の確認事項は別紙の通りです。調べて後日、税理士の先生を通じてご回答下さい。これにて本日の調査終了』と、僅か30分でご帰還になったものまでありました。通常は丸1日かけ、あれこれ質問、家捜しするにも関わらず。そして、当局の見込み違いと判明するや、即刻調査は終了です。
筆者も税務の世界に身を置くこと20数年になります。が、あんな調査は自身やったこともなければ、立ち会ったことも初めてでした。効率的で早く終わることは有り難いけど、何とも拍子抜けの感は否めません。やっぱり手抜き工事かも?
3.保険会社の資料箋は要注意!今回の税務調査で共通の項目、それは保険会社の資料箋です。税務署は個人法人を問わず、納税者に関する様々な税務的、経済的な情報を収集しています。誰がいつどんな事情でお金を支払った、又は収受したと言うことを。これを資料箋と言い、調査の時に活用、資料箋に記載の事項が申告に反映されているかを確認するのです。
昨今、生命保険会社からの資料収集が活発なのでしょうか?今回のいずれの事案も狙い目は生命保険でした。ただ、当局の目の付け所に?マークの付くものも。バブル当時の悪名高き変額保険がそれ。当時、銀行が土地を担保に融資を実行、変額保険を盛んに売った時期がありました。この商品、大半の方が大損をし、リスクについての説明不足で裁判沙汰になったのは周知の事実。興味深いのは、今回の調査で保険会社と銀行相手に訴訟をし、最終的には両者と和解した事例です。和解の条件として、銀行借り入れを実質的に保険会社が低利で肩代わりしたため、お客様口座にその入金がなされました。驚いた事にそれが税務署の知るところに。賠償金だとでも思ったのでしょうか?
お客様にしてみれば、借入先が銀行から低利の保険会社に変わっただけ。債務の欄に計上はあるものの、税務署が期待するように、賠償金ではないので財産としての計上などあるはずもありません。それを不審に思っての調査の選定だったのです。事情を説明し、御納得頂いた上でお引き取り願いました。大体、バブル当時の変額保険で儲かった方などどれ位いるのでしょうか?保険会社から入金あれば直ぐ財産だと考えるのは、あまりに早計。選定理由がこれだけなら、忙しいこの時期、調査でなくて税理士を税務署に呼びつけ、確認させれば済んだのです。
お陰様でいずれの事案も無事、事なきを得、調査は終了でした。が、壁に耳あり障子に目あり。色々な所に税務署の目は光っていることを、改めて感じさせてくれる今日この頃です。2003年2月27日
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5128号
話題沸騰“変額年金保険”
今や資産を取り巻く環境は、劣悪、極悪、非常に厳しいものがあります。そんな中、考え方、使い方によっては面白い商品が話題です。その名も変額年金保険。【変額保険】と聞いただけで虫ずが走る方もいらっしゃるのでは…しかし、時代は変わりました。誤解の前にしっかり理解、図解で納得、最後にお得は如何でしょう?
1.なかなか増えない低金利まず、今の預貯金を2倍にするのにどれ位の年数が必要か、お分かりでしょうか?《72÷金利》と言う算式で算出ができるのです。
年金利が0.1%で720年、0.5%で144年、1.0%でやっと72年、10年で2倍になった時代もあったのに、です。そうは言っても元本保証の預貯金は一見すると安全確実。問題は、預貯金では"額"を保証はしても、その時代に合った"価値"までをも保証するものではないと言うことです。同じ100万円も今と昔では天と地ほど差があるのです。一方、年金だってこの先当てにはなりません。要は額ではなくて価値なのです。
2.変額年金の仕組みそこで興味深いのが変額年金保険です。仕組みはいたって簡単。契約締結時に一時払保険料を支払い、後は10年以上の期間で自由に積立期間を設定です。積み立てが終了すれば年金として受給ができますが、それはその間の運用実績によって多くも少なくも、まさしく変額年金。もし、積立期間中に死亡した場合には、保険金として初回支払い済みの金額が保証され、その時点での運用実績によってはプラスαも期待が可能。目玉は積み立て終了後の年金の受取り方法で、保証期間付終身年金や期間を定めた確定年金、一括受取り等好みや目的に応じて自在です。
3.税法上のメリット1初回払い込みの保険料は、積立期間中は基本保険金としていわば元本保証。商品は保険ではなく、あくまで年金のため、かなりの高齢者でも購入可能です。例えば当初保険料1億円を預金取り崩しで支払い、1年後に死亡なら、その時点で1億円の保険金。税務上の評価は死亡保険金で、500万円×法定相続人の数に相当する金額は非課税です。預金ならばそのまま1億円の評価、どっちが得かは一目瞭然。
3.税法上のメリット2例えばご本人を年金受取人、被保険者としてご自身が契約者となった場合です。年金原資が1億円、80才で年金受給を開始の20年確定年金を選び、85才で死亡と仮定しましょう。年金額は年519万円を6年受給で3114万円、残り7266万円を遺族が引き続き年金で受給すると、税務上は勿論相続財産扱い。が、遺族が受け取る年金の評価が面白い。下表のように残存年数により、年金総額に一定率を乗じた金額、このケースでは50%、3633万円の評価なのです。早い話半額評価、これらはホンの一例で、まだまだ工夫は色々です。これらの商品、保険会社はもとより、銀行、証券会社等々で扱っており、内容も千差万別、素人判断は危険です。そうか、やっぱり○○○財産相談室で相談か!
2003年1月30日