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COLUMN

TOPATO通信益法人を活用すれば、
タックスヘイブンはいらない???
5289号

ATO通信

5289号

2016年6月30日

阿藤 芳明

益法人を活用すれば、
タックスヘイブンはいらない???

 残念ながら(?)我がATOのお客様には、今話題のパナマ文書の対象となる方はいらっしゃいませんでした。いわゆるタックスヘイブンは、パナマの他にもケイマン諸島、バハマ、モナコ、サンマリノ共和国等々世界中枚挙に暇がありません。何故このようなものを利用するかと言えば、言うまでもなく脱税ならぬ節税目的。でも、そんなことをしなくても、公益法人を設立できれば合法的、合目的的で、公益にも資する節税策が可能かも…。


1.個人に財産がなければ相続税はかからない!

 当たり前ですが、財産を個人としてお持ちでなければ相続税は掛りません。個人ではなく法人で財産を持っていても、その法人の株式を個人でお持ちであれば、その株式の財産価値が相続税の対象です。では、どうすればいいのでしょう。
 ご自身が株式を所有しない会社に財産を移転してしまえばいいのです。ただ、実際に事はそれ程簡単ではありません。例えば子が100%その株式をお持ちの会社に、上場株式や不動産を無償で譲るとします。譲り受けた会社は受贈益として、その財産の時価相当額に法人税が掛ってしまいます。差し上げた方の個人にも、時価で売却したと見なされ、時価相当額で譲渡税が課税です。また、無償と言う極端な例ではなく、例えば時価1億円の不動産等を3,000万円で売却しても、やはり1億円で売却したとみなされてしまうのです。時価の1/2未満での売却は時価での課税となるためです。
 それでは、1/2を超える6,000万円で売却したらどうでしょう。1億円と言う時価課税はありません。個人は6,000万円の譲渡税で済みますが、差額の4,000万円は法人が得をしたものとされ、受贈益と言う法人税が課税されてしまうのです。


2.公益法人なら課税はなし!

 法人に財産を移転するのは、このように容易ではありません。しかし、その法人が公益法人なら話は別。公益法人の場合、限定されている34業種の継続的に行なわれる収益事業を行えば、それについては課税の対象になります。が、それ以外は総て非課税です。従って、公益法人が受ける補助金、助成金、寄付金等の対価性のない収入は、限定されている収益事業ではないので課税されません。
 一方、寄付をした個人の方は、相続税の対象となる財産が減るばかりでなく、所得税も軽減されます。所得控除と言って所得金額から控除され、課税される金額が減少するか、公益法人によっては納税額のうち、その税額そのものが減額される特典が付いてくるのです。相続財産が無税で減るだけでも嬉しいのに、所得税まで減税されるとは何とも夢のような世界なのです。


3.公益法人が設立できれば…

 公益法人が設立できたとします。ここでは個人から拠出された財産を運用するための組織として、それに公益性を持たせた公益財団を念頭にお話しします。相続税はその公益財団に財産を移した分負担は減りますが、その後の財団の運営はどうなるのでしょう。公益財団には、最高議決機関である評議員会と執行機関である理事会が有り、それぞれ3名以上の評議員、理事で構成されます。監査役に相当する監事がお目付け役。計7名が最低基準で、親族で占められる理事、監事は各々1/3以下と規制されています。ここで言う親族とは3親等内の親族のことで、7名体制であれば目付け役の監事を除き理事、評議員を各1名、合計2名を身内で固めるのが”実務的”と言うことになります。
 つまり、ご本人と身内一人の他、息のかかった第三者で先ずは理事、評議員、監事を選出し、自らは理事長に就任します。その公益財団を理事長として実際に運営し、その相続人が子子孫孫にわたって理事長を務めれば、大切な個人財産は公益財団として守ることができるという仕組みです。


4.公益法人の実態

 現在の法制度では、法人は一般法人と公益法人に分類されます。そして社団法人や財団法人等かつては公益性が主体となっていた法人も、現在は一般社団法人、一般財団法人なら株式会社と同様に登記のみで簡単に設立が可能です。その上で公益法人を目指す場合は、公益認定基準を満たすことが要求されるのです。この認定は内閣総理大臣、又は都道府県知事が行うとされていますが、絶対にやってはいけないのが都道府県知事による認定です。何故なら、都道府県の認定を受けた公益法人は、これら自治体の天下り先として利用され、拒否すれば公益性を取り消される可能性があるためです。実質的な乗っ取りがあり得ると言う話なのです。それに比べ内閣府として国がやることは流石です。そのような妨害行為もなく、何代にもわたって公益財団の理事長を務めることができるのです。しかし、内閣府に公益性を認めてもらうには、多大な労力とノウハウを必要とします。
 最後に質問です。ここまでお読み頂いて、相続財産を公益財団に移そうと決意したとします。その相談にATOは乗ってくれるのか?勿論乗りますが、それ以前に相応の財産が必要です。その財産の作り方についてまではお力になれませんが…。

※執筆時点の法令に基づいております