新型コロナ感染症の蔓延で緊急事態宣言が発せられ、市民一同在宅待機、外出自粛となって、急速に普及し出したのがオンライン○○の類である。それらの中には、過去既に開発されて活用が始まっているものも多いが、この社会状況の中で、一気に使われ出したものも少なくない。以下多くのオンライン○○について、整理しながら述べたい。
【オンライン授業】 学校教育を映像で行うという意味では、50年以上前から、科学映画や教育テレビなどでコンテンツがつくられ、作り方も既に成熟している。また、今世紀に入ってからは、衛星放送によって地方の受験生に予備校の授業が配信される事例も増えてきた。つまり、誰かが相当な準備をして動画による授業を配信するということについては、日本社会のインフラは既に整っている。が、学校というところは、生身の先生が、生徒と対面で授業をすることを身上としているので、いきなり学校が休業になると、アカの他人の作ったコンテンツを生徒に見せるのではなく、先生が自分で行う授業をテレビ会議に近い方式でやりたいと言うことになる。
この種のテレビ授業のソフトも、ここ数年普及が始まっており、なかなかよく出来たものもあるのだが、如何せん平時には当の先生達が、そんなものを使う意欲があまりなく、白墨と黒板さえあれば、学生生徒は学校にやってくるものだと思っていたので、急に日本中の学校が休業しても、先生がソフトの使い方を知らず、十分な対応ができないというのが現状である。生徒の方もみんながパソコンを持っている訳ではないので、オンライン授業に対応できない者もいる。要すれば、先生達が教員免許を取るときに、オンライン授業のやり方の基礎を学び、且つ貧乏な生徒にもパソコンかタブレットを配る制度を設ければ、今後は何が起きてもオンライン教育は、可能となるだろう。もっとも平時に戻ったときに先生が再び安心してしまい、オンライン教育への意欲を失わなければの話だが。
【オンライン会議】 ビジネス用のテレビ会議から、帰省できない核家族が、おじいちゃんおばあちゃんのもとに【オンライン帰省】とかをするためから、とにかく他人とのコミュニケーションを、webを通じて行うインフラは、ハード、ソフトともかなり整っている。緊急事態宣言が発せられると、企業、ビジネスの世界では比較的スムースに在宅勤務、オンライン化が進み、某電気会社社長の言うにはかえって以前よりディシジョンメーキングが効率よく為されるようになったとか。但し二つこれでは解決しない問題がある。一つ目は、工場や建設現場、農漁業などで、人間が、情報ではなくモノを取り扱う世界。二つ目は、きわめてセキュリティの高い情報を扱い、会社のサーバーから自宅に情報を持ち出せない場合、あるいはテレビ会議を誰かに覗かれない工夫等が必要な場合である。
【オンライン飲み会】 これは、筆者も試みたことはあるが、世界各地の事業所の従業員が、酒を飲みつつ相互交流するとか、酒を飲みながら、オンライン会議をやるとか、特別の事情がない限りあまりうまくは行かない。飲み会運営は、参加者の酔い具合、つまみの頼み方等かなり微妙な技術が必要でありオンラインでは難しい。仮想世界で初音ミクかなんかと飲み会した方がまだましである。
【オンラインデート】を恋人同士でするというのも、そもそも究極の目的は「濃厚接触」にあるのだから、恋文や長電話程度の効果しかなく、隔靴掻痒、もどかしさを解消できない。一方で、家族間の場合、コミュニケーションの目的は「濃厚接触」にはなく、「お互いの無事」を確認することにある場合が多いので、既存のソフトウェアで十分事足りる。(以下次号に続く)