前月に続き、オンライン○○についての、整理と論評である。
【オンラインファッション】 既製服をオンラインで注文するには、つねにサイズの不安がつきまとう。ブランドによって、S,M,Lのサイズ表示は微妙に違う。試着せずに自分にあったサイズを求めることにはリスクがある。そこで、この稿の筆者は、かなり以前、駅構内やショッピングセンターなどにある証明写真ボックスに似た「人間シルエット測定器」の広範な設置を提案したことがある。これは、箱の中に人間が入って服を脱ぎ、頭の頂から靴の先まで、洋服・靴のオリジナル作成に必要な寸法諸元をスキャンしてもらい、web上に登録する装置である。試着室での脱ぎ着程度の時間で登録は可能である。これさえあれば、webカタログで見たモデルの服装を、そのままAIが自分用のオートクチュ-ル(注文服)に仕立ててくれる。実際にはzozoが似た様なことをもう少し簡易にしたビジネスモデルで実施している。
【オンライン診療】 いまや感染症拡大防止と、医師の生命を守るためにオンライン診療は欠かせないシステムとなりつつある。これも平時には、「初診は対面で」とか、いろいろな制限が付加されていたのだが、今次の新型コロナ事変で漸く、より制限の少ない形で普及が始まることになった。
が、医師が的確な診断をオンラインで下すためには、患者の訴えを聞き、診察することと並行して、各種の検査が不可欠となる。新型コロナウィルス感染が蔓延して、はじめて検査者をリスクから守る安全な検査を、速やかに多数行うことも、問われるようになった。
今後は患者が自分でバイタルデータを測ることができる検査装置を開発し、そのデータをオンラインで医師に送信することが、オンライン診療を促進するためにも必要となるだろう。血圧、心拍数、体温などは割合簡単に、腕時計くらいの装置で、オンライン化できるだろう。だが、問題なのは血液検査であると思う。(既に糖尿病などでは、患者自身が血糖値を図るキットが普及している)
【オンライン選挙】 選挙のための投票も選挙運動も基本的には「人寄せ」によってこれまで行われてきた。その意味で、選挙のオンライン化が実現すれば、感染症対策上かなり有効であることは論を俟たない。まず選挙そのものについて言えば、マイナンバーカードを(強制的にでもよいから投票券の代わりに郵送するのでも)普及させ、選挙権の行使をマイナンバーと紐付けて行うことが急務である。マイナンバーと紐付いた電子的な投票であっても、「誰がどの候補者に投票したか」を分からなくするスクランブルの技術は既に開発されて、政府の作った電子投票のソフトは存在している。が、技術実証のための実験で失敗して現在お蔵入りになっているらしい。
次の重要なポイントは、在宅投票である。
高齢化が進む現在、また海外在住者も多数存在している現在、投票所や大使館に足を運ばなくて済む仕組みの開発は急務である。これも、マイナンバーカードとの連携によって、実現できる。が、投票する者を、家族や入居施設の管理者等が監視したり、強要したりしないことをどう担保するかが問題である。
もう一方のポイントは、【オンライン選挙運動】のためのノウハウ開発である。候補者が自らの名前を連呼して、選挙区を走り回り、集会や街頭演説で人寄せをすることは、どのようにして避けられるか。ウェブサイトやSNSなどを用いた選挙運動の成功例をつくることが急務である。今年11月に予定される米国の大統領選挙あたりが、そのチャンスであろうと思われる。