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え〜っと通信

43号

2004年11月11日

竹下 慶子

保険料贈与を活用して孫の代まで相続対策

生命保険は、生命保険料控除や、相続税の生命保険金の非課税枠、年金保険の受給権評価をはじめ、幅広く節税に利用されています。保険契約に係る節税方策の1つに『保険料贈与』という方法があります。贈与税の申告等で贈与の事実関係を明確にする他、連年贈与と指摘されないようにする、など、注意点はありますが、相続税の納税対策にはお勧めの手法です。


1.保険料贈与とは?

 父(60歳)と母と長男という家庭を例に挙げて考えてみます。父の相続税は相当な額になると予想されます。そこで次のような方法により保険に加入することに。契約者は長男で、父を被保険者とした保険に加入します。受取人は長男です。保険料を低く抑えるため、変額終身保険に加入することにしました。死亡保険金額3,000万円、保険料払込期間は10年で毎年約195万円の保険料を支払うものとします。当然、長男は年間195万円もの保険料を支払うお金はありませんので、毎年父が現金210万円を贈与します。長男は贈与税の申告を行い、贈与税10万円を納付します。
 何年かして父が亡くなると、長男に3,000万円の保険金が支払われます。受取った保険金のうち支払保険料との差額に対して、所得税(一時所得)がかかります。一時所得の金額は{(3000万円-1950万円-特別控除50万円)×1/2=500万円}となります。所得税の税率は住民税と合わせて15~50%ですので、多く見積もっても250万円です。手許に残る{ 3,000万円-250万円=2,750万円}は、まるまる相続税の納税に充てることができます。


2.父が保険料を払うのとどっちが得?

 一方、父が契約者となり直接保険料を払い、死亡保険金を遺族が受取る場合には、相続税の対象となり、法定相続人1人につき500万円の非課税枠があります。前述の保険料贈与とどちらが得なのでしょうか。

① 保険料贈与の場合の税負担
  贈与税10万円×10年+所得税住民税最高250万円=最高350万円
② 相続税の対象となる場合の税負担
  保険料贈与のケースと比較して増加する相続税の対象となる財産の額 約3,000万円

 相続税の税率は10%から50%の累進税率です。勿論、財産が少ない場合にはゼロですので、税負担は0~1,500万円の間で財産の額などにより異なる、ということになります。相続税率50%の方にいたっては、1,150万円も差が出るのです!


3.おじいさんから孫への贈与が効果的!

 将来ご両親から多くの財産を受け継ぐことになる方も、いつかはお亡くなりになります。そのときの相続税を考えれば、早めに対策を打つに越したことはありません。そこでの保険料贈与を活用してみましょう。
 父・子(45歳)・孫という家族を想定します。孫が契約者・保険料負担者・保険金受取人、子が被保険者という保険に入ります。例えば、保険金額4000万円、保険料払込期間5年の変額終身保険で年間保険料は約290万円とします。父から孫へ年間310万円の現金を贈与し、20万円の贈与税を納めれば、290万円の保険料を支払うことができます。何十年も経って子が亡くなったときには、孫に保険金4000万円が支払われることになります。孫への贈与で、孫が将来納めなければならない相続税の準備もできるのです!

 保険料贈与は、保険料が安い若いうちに始めるのが効果的です。また、贈与税は贈与を受ける人ごとに課税がなされるもの。贈与対象者が複数名いれば、それぞれに保険料贈与を行うことで更に節税効果が増します。早めの対策で孫の代まで安泰です。是非ご検討を!

※執筆時点の法令に基づいております