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~百貨店の外商取引から財産が判明!!~
243号

え〜っと通信

243号

2021年7月15日

田中 奈美

金・骨董などその他の相続財産
~百貨店の外商取引から財産が判明!!~

 相続税を申告する場合、不動産や預貯金・上場株式などの金融資産については、まず申告漏れはないと思います。しかし、申告が必要な資産はそれ以外にも色々な種類があります。今回は、意外と申告漏れが多い資産や税務調査の時に指摘されやすい資産について説明致します。


1.意外と人気の金

 近年価格が上昇している資産として金があります。金は昔から価値あるものとされ人気があります。不動産と異なり所有していても固定資産税はかかりませんし、換金しやすいため遺産分割時にも困りません。ただ、相場による価格変動があるため、換金時期によっては取得時期より価格が下がり損をすることもあります。


2.支払調書

 そんな使い勝手の良い金は、昔は財産隠しの定番として有名でした。残念ながら現在は200万円超の取引は自動的に税務署へ連絡(支払調書)がいきますので、申告をしないと必ず税務署からお尋ねがくるでしょう。金は隠せる!はもう昔の話です。


3.相続税の申告時に注意すべき点

 ここでは、金を所有している場合、相続税の申告時にどのような点に注意すれば良いか実際の調査事例を基に話を進めていきます。被相続人は生前金の購入をしていたとの相続人の話から取引があった金の取引業者へ残高照会を行いました。その結果、残高はゼロ。過去5年間の取引履歴も無しとの回答でした。ご自宅に現物の金もないことから、金について相続財産に計上することなく申告をしました。


4.税務調査がやってきて

 相続税の申告を終えてやれやれと思っていたところ、税務調査がやってきました。税務調査官は、色々と既に調べてきていて、相続人へ金のことを確認してきました。こちらとしては、既に金の取引業者に残高確認や過去の取引履歴まで確認を終えていたので、自信満々に対応しました。しかし、税務署は思わぬところから取引履歴の証拠をつかんで提示してきたのです!


5.外商取引から金の取引がばれる!?

 なんと、税務署は百貨店の外商取引履歴から金の購入を突き止め、現物確認を要求してきたのです。被相続人は確かにその百貨店の外商取引を利用していました。相続税申告書作成時に、高額な商品の取引が無いか取引履歴の確認も行っていたのに、金の取引については照会内容にはでてきていませんでした。こちらも合点がいきません。調査官に尋ねると、外商担当者が相続人へは提示しなかった特別な取引履歴について税務署に開示していたのです。その取引履歴には、取引日、購入内容、購入者、購入者の署名など詳細なデータが載っていたのです。この特別な取引履歴は外商部のデータには反映されない、担当者預りの特別な取引とのことでした。金の購入後売却履歴もないことから、金を所有していると考えられるので、相続財産として申告が必要になるとのこと。こちらも益々混乱。金の取引業者に対する照会で取引履歴がでてこなかったのは、百貨店の外商へ金を卸しただけで、外商が誰へ売却したかは取引業者のあずかり知らぬところだったのです。そうは言っても、肝心の金の現物が見当たらない。税務署との折衝が困難を極めました。


6.何故、外商取引がわかったのか

 それにしても、何故税務署がその百貨店の外商との取引がわかったのか、不思議に思いました。それは、相続後の相続人の預金の振込履歴から判明したのです。前述しましたが、相続税申告書作成時に取引履歴を取り寄せたので、その手数料の支払いから取引があることがわかってしまったのです。念入りに事前調査した結果が思わぬ波紋を引き起こすことになったのです。被相続人だけでなく、相続人の預金の動きも念入りに調査しているのです。


7.預金の動きは情報の宝庫

 被相続人の預貯金の動きをチェックすると、貸金庫の手数料やトランクルームの保管料の引き出しがあります。貸金庫が調査時点で残っていれば、調査官は必ず中身を確認します。メモ1枚、銀行の振込票1枚からあらゆる取引を想定し、相続人に確認を求めます。トランクルームを契約しているのであれば、そこに何を(例えば絵画とか)保管しているのか、必ず確認を求めます。


8.骨董品も外商経由で購入

 この被相続人、骨董品・絵画の収集も趣味で他の百貨店の外商から色々と購入していました。そのため、相続時には専門家へ鑑定評価を依頼し、きちんと相続財産として申告をしました。百貨店の外商は本当に色々な商品を用意して奨めてきます。小口のものから大口のものまで種類は様々です。コロナ禍でステイホーム期間中の今、外商取引が増えていて、益々外商取引の確認が重要に思えます。


9.把握が困難な新しい資産も

 不動産は課税通知書、金融資産は取引報告書などが送られてくることから、財産の把握が出来ています。しかし、最近はネット取引の時代、管理の仕方も紙ベースから電子データのみへと移行しています。被相続人が相続人達に内緒で取引をしていると財産の存在自体わからなくなってしまう可能性は大きいです。被相続人のメールを確認し、どのような業者と取引をしているのか、今後は新たな確認が必要になるでしょう。

※執筆時点の法令に基づいております