未利用地は直ぐに換金化できるため、将来の相続税の納税資金用として保有する方もいらっしゃるようです。しかし、固定資産税などの維持費がかかることもあり、とりあえず駐車場用地として活用することが考えられます。そこで、今回は未利用地を駐車場用地として活用する場合の税務の取扱いについてご紹介します。
1.駐車場としての利用パターン
駐車場としての利用には、(a)自分で駐車場を営む、(b)土地を業者に貸して、業者が駐車場設備を設置して駐車場を営む(以下「土地貸し」という)、(c)土地にアスファルトなどの構築物を設置した上で業者に貸して、業者が必要に応じ駐車場設備を設置して駐車場を営む(以下「構築物付の土地貸し」という)、の3つのパターンが考えられます。
近ごろは、コインパーキング用地として、(b)の土地貸し又は(c)の構築物付の土地貸しをされている方が多いようです。個人の場合、いずれの賃貸収入も不動産所得となりますが、消費税や個人事業税では異なる取扱いとなる場合がありますので、以下においては税務上の相違点について取り上げます。
2.消費税の取扱い
(1) 土地貸し(上記1.(b))の場合
土地に施設として何ら手を加えられていないときの土地の使用は、土地の貸付けに含まれます。 土地の貸付けは、消費税の非課税売上げとして取り扱われるため、賃貸収入部分に対する消費税を納める必要がありません。
(2) 構築物付の土地貸し(上記1.(c))の場合
駐車場設備の貸付けとなり、消費税の課税売上げとして取り扱われます。よって、その他の消費税の課税売上げと合計して年間1千万円を超える場合には、消費税の納税義務者となるため、賃貸収入部分に対する消費税を納める必要があります。
3.個人事業税の取扱い
「駐車場業」に該当すると個人事業税を納める必要があります。駐車場業に該当するか否かについては、(b)の土地貸し及び(c)の構築物付の土地貸しの場合のいずれにおいても、次のように取り扱われています。
(1) 駐車可能台数が10台未満の場合
駐車場業に該当しないため、駐車場用土地の賃貸に係る所得について個人事業税を納める必要がありません。
(2) 駐車可能台数が10台以上の場合
駐車場業に該当し、駐車場用土地の賃貸に係る所得の金額と他の事業所得及び不動産所得と合計して年間290万円を超える部分の所得に対して、税率5%の個人事業税を納める必要があります。
以上のとおり、一般には、駐車スペースが10台以上(ただし建築物内の駐車場は1台以上)あると個人事業税の駐車場業とされています。しかし、(b)の土地貸しの場合は、単なる土地の貸付けですので、駐車場業と言えるか疑義がありました。この点について、東京地裁は、以下の理由で駐車場業には該当しないとして、個人事業税の課税を取り消す判決を下しました(令和3年3月10日)。
・管理運営は業者の責任で行っており駐車場に関する貸主は経営のリスクは負っていない。
・駐車場の稼働状況に関わらず貸主は毎月定額の賃料収入を得ている。
この判決によって、個人事業税の駐車場業に係る取扱いが変更されるかどうかは明らかではありませんが、今後の動向に注意する必要があります。
4.相続税の取扱い
被相続人の相続財産の相続税評価額の合計額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合には、相続税の申告義務が生じます。
(b)の土地貸し及び(c)の構築物付の土地貸しの場合のいずれにおいても、駐車場用地が構築物(業者が設置した場合を含む)の敷地となっていれば、貸付事業用宅地等として小規模宅地等の特例(最大200㎡までの部分について50%の評価減)の対象となります。適用に当たっては、駐車場用地を相続した相続人が相続税の申告期限(相続開始から10か月以内)までに被相続人の賃貸事業を引継ぎ、かつ、申告期限までその土地を保有していることが要件となります。相続税の小規模宅地等の特例では、(b)の土地貸しも(c)の構築物付の土地貸しの場合も適用対象である点に相違はありません。
なお、駐車場用地が更地(アスファルトや駐車場設備などの設置なし)の場合には、小規模宅地等の特例の適用対象ではありません。
5.まとめ
一般的には、構築物付の土地貸しの場合の方が、単なる土地貸しよりも賃貸収入は多く得られると思います。
しかし、その反面、初期投資費用がかかることや消費税の対象となる点からすると、単なる土地貸しの方が負担は少ないといったメリットもあります。
よって、これから未利用地をコインパーキング用地として活用しようとしている方は、賃貸収入だけで考えてはいけないでしょう。支払う税金もしっかりと考慮した上で、どのような貸付方法とするか検討されてはいかがでしょうか。