シングルマザーといわれる人たちが増えているこのご時世、いわゆる婚外子も少なくないはず。もし、被相続人に嫡出でない子がいた場合、その相続はどのようになるのでしょうか。
1.民法で言う嫡出子と非嫡出子
(1)嫡出子とは
法律上の婚姻関係にある男女の間に生まれた子供をいい、下記に該当する子をいいます。
・婚姻中に妊娠した子
・婚姻後201日目以後に生まれた子
・父親の死亡後又は離婚後300日以内に生まれた子
・未婚時に出生し父親に認知された子で、後に父母が婚姻したとき
・未婚時に出生した後に父母が婚姻し、父親が認知した子
・養子縁組をした子
(2)非嫡出子とは
法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子供で、上記(1)に当てはまらない子をいいます。
2.非嫡出子の戸籍
(1)母親と同じ戸籍に入籍
非嫡出子は、父母が認知することにより親子関係が生まれます。しかし、母子関係は認知などしなくても、分娩によって当然に発生するものとされています。 この場合、子は母の戸籍に入り、母と同じ姓を名乗り、母の親権で保護され、母の遺産を相続することになります。 |
(2)父親にも認知をされると
父に認知されていない、いわゆる私生児は、父の遺産を相続することができません。 しかし、父が自身の住所地か本籍の役場、又は子の本籍の役場に認知届をすることによって、父子関係を持つことができるのです。 認知をされても、家庭裁判所の許可を得ない限り母の戸籍に入ったままですが、父が認知した事実は父子いずれの戸籍にも記載がされます。 |
(3)父母との続柄の欄の記載
平成16年10月以前は、非嫡出子の戸籍上の父母との続柄欄には、単に「男」「女」とだけ記載されていました。しかし、差別的であるとの理由から、平成16年11月以降は、出生の順に「長男(長女)」、「二男(二女)」等と記載されることに変更されました。既に戸籍に記載されている場合は、申出により、記載の変更履歴を残さないよう戸籍の再製がされます。 |
3.法定相続分
非嫡出子は、認知をされることによって親子となるため、当然に相続権も発生します。
その法定相続分はというと、嫡出子の半分となります。
4.意外な落とし穴
うっかりすると、同じお腹を痛めて生んだ子供同士で、法定相続分に差が出てしまうというケースです。
女性Aは未婚時に子Bを生みましたが、その後子Bの父親と異なる男性と結婚しました。夫婦の間には子Cが生まれ、その後に離婚し、母子3人で仲良く暮らしていました。
ところが、Aがなくなり相続が開始します。各人の法定相続分は子Bが1/3、子Cが2/3となるのです。法律上、子Bは非嫡出子、子Cは嫡出子であり、同じ母から生まれたにもかかわらず身分に差があったためです。
もし、Aが子Bを養子にしていたら、上記1.(1)にあるとおり子Bも嫡出子となり、二人を同等にすることが可能でした。実の子を養子にするなんておかしな話に感じるかもしれませんが・・・
実は、非嫡出子の法定相続分が嫡出子の1/2であることについては、平成23年8月に大阪高裁で違憲であるとの判決が出ているのです。民法改正は容易ではないですが、今後の動向には注目すべきではないでしょうか。
5.遺産争いを防ぐために
相続人にとって、嫡出である子と嫡出でない子が混ざって遺産分割協議をしなくてはならないということは、争いの種になる可能性が高く気が重いものです。
無駄な争いを避けるために、親は遺言を書いておくべきではないでしょうか。ただし、遺留分には気を付けたいものです。嫡出子にも非嫡出子にも、遺言でも侵せない相続人の権利として、遺留分があります。詳述はしませんが、法定相続分の半分の割合です。
もし、優先的に財産を残したい子がいるのであれば、財産を相続させない子には、生前に遺留分の放棄をさせるということも必要になるかもしれません。
遺産争いを防ぐということは、何も非嫡出子がいる場合に限りません。スムーズな財産承継のためにはぜひとも生前から対策をしていただきたいものです。