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~相続税調査でのやり取りを踏まえて~
209号

え〜っと通信

209号

2018年9月14日

田中 奈美

名義保険はばれる!?
~相続税調査でのやり取りを踏まえて~

 相続税申告書を作成する際に、相続人の皆様に名義預金・名義保険の有無は必ず確認するようにしています。というのは、この名義関係をメインに相続税調査が行われているからです。今回は、相続税調査でのやり取りも踏まえてどのように名義保険がわかっていくのかご紹介致します。


1.名義保険とは

 名義預金という言葉はよく聞かれると思いますが、名義保険についても課税当局は厳しく調査してきます。契約者の名義が子供であるにもかかわらず、親が生前保険料を負担していたケースのことです。親が保険料を負担した時点で保険料負担部分の贈与申告をしていない限り、この保険は実質親の財産となり、相続税の申告時に「名義保険」として申告する必要があります。相続税の調査時に問題になるのは、このような名義保険があるにもかかわらず、親の相続財産としてこの名義保険が計上されていないからです。


2.相続税調査での質問内容

 調査はまず、被相続人および相続人の生前の生活状況を確認してきます。例えば、被相続人が親、相続人が子供である場合のケースで話を進めます。親が一人暮らしの場合、子供はどの位の頻度で親を訪ね、誰がお金を管理していたのか聞いてきます。その他にも、どのような金融機関と取引があったのか、趣味はなんだったのか、海外移住の有無やどこで亡くなられたのかということを大体午前中の時間に確認します。これらの話は一見、何気ないことを聞いてきているかのように見えて、全て午後の具体的な指摘事項へと繋がっていくのです。そして、必ず亡くなった被相続人の自宅で調査をしたがります。それは、ご自宅にあるものすべてが相続財産の漏れがないかどうかを確認する重要な物的証拠となるからです。カレンダーはどこからのものか、金庫の中身は、メモ帳の〇〇銀行は相続財産に計上されているか、などなどすべてを確認していきます。


3.被相続人の預金の流れで発覚!

 午後になると、調査官は話を具体的に詰めてきます。被相続人である親の通帳を事前にチェックしてきて、大きな入出金について質問をします。その中に、「親の郵便局の口座の流れで子供名義保険の保険料支払日と同じ日にほぼ同額の出金がありますが、これはどのような出金でしょうか」。今回のケースは、子供名義の名義保険があったのですが、あえて親の相続財産として申告しませんでした。いきなりの直球での質問です。しかもこの保険料の取扱局は、親の自宅の目の前にある郵便局扱い!対して、子供の自宅は親の自宅から1時間ほど離れたところにあり、午前中の質問で子供が親の自宅を訪問するのは週に1度程度と答えたばかり。


4.相続人の口座もチェック!

 さらに追い打ちをかけるように、「子供の預金から保険料相当額の出金が見当たらないのですが・・・」と続けて指摘。調査官は、親の預金だけではなく、相続人である子供の預金についても十分に調べてきていたのです。これが、数万円の保険料なら言い逃れもできるのですが、何故か親は数年分の保険料を一括して前払いしていたため、金額が数百万円だったのです。
 ならば、その前払い部分だけを生前贈与として贈与税申告する方向で、話を進めようと思ったのですが、話はそこで終わりませんでした。調査官は保険契約時からのすべての支払いの流れを把握しており、契約時からすべて親が保険料を負担しているのではないかと指摘してきました。保険料の支払日、支払額、取扱局をすべて確認済みで、支払方法も現金払いなのか振込なのかも把握していました。数年前の支払い時期には、子供はまだ現役で親の自宅から遠い会社に勤務中。ここも午前中のヒアリングで状況は押さえられていますので、何とも言い逃れができない緊迫感が発生しました。


5.余分な税金が・・・

 以上のようなやり取りから、もはや子供名義の保険は、実質親が負担していた名義保険となり、相続発生時での解約返戻金相当額を相続財産として修正申告をしました。
 修正申告をした場合には、相続税の増額部分である本税のほかに、(1)過少申告加算税(本税の10%~15%、仮装隠ぺいの場合は35%)(2)延滞税(平成30年は年利2.6%)と、余分な税金を支払わなければなりません。


6.保険の課税強化

 郵便局のやり取りはわからないのでは?というのは一昔前の話で、現在は郵便局もかなり税務調査には協力的になったと感じます。金は見つからない、郵便局のお金はばれないとかいう話をよくお年寄りから聞いたこともありますが、マイナンバーも導入されたこの情報社会で隠せる財産など有りません。特に、今回取り上げた名義保険といい、保険関係の課税強化はますます厳しくなっています。2018年から「死亡(相続)による契約者の変更」をした場合にも、保険会社から税務署へ「支払調書」が送られます。調書には契約者変更の回数や死亡した者の既払込保険料の金額、解約返戻金相当額などが記載されます。この改正によって、名義変更した保険契約について、名義変更前と後で誰がどれだけ保険料を負担したのか明確になり、今まで課税漏れがあった保険もこれからはきちんと申告が必要となりますので是非ご注意を!

※執筆時点の法令に基づいております