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COLUMN
毎月職員が交代で執筆しています。
ただ、自分の順番が回ってくると、
その対応は様々です。
税務のプロとして、日頃の実務や研究の成果を
淡々と短時間にまとめる者、
にわか勉強で急に残業が増える者、さて今月は…
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102号
住宅取得等資金500万円までの贈与なら非課税に
~相続時精算課税制度との併用も可能~長引く不況の追加経済対策として、先般「住宅取得等資金の贈与が500万円まで非課税」といった減税措置が施行されました。従来から、持ち家促進を狙いに住宅税制に関しては色々な手当てがされてきました。今回も需要不足に対処する観点から、高齢者の余裕資金を活用した住宅取得の支援制度として盛り込まれました。
その住宅取得のための時限的な贈与税の軽減について、今までの暦年課税や相続時精算課税との併用を含め説明いたします。
1.2年での累積額500万円が非課税に具体的には、住宅取得等資金について、下記の要件をみたす場合には500万円までは非課税となります。
①贈与者・・・直系尊属(父母、祖父母、曾祖父母・・・)
②受贈者・・・受贈された年の1月1日現在で20歳以上の子、孫
③適用期限・・平成21年1月1日から平成22年12月31日までの贈与
④対象要件・・贈与を受けた資金の全額を、翌年の3月15日までに住宅の取得等に充当
(床面積が50㎡以上など一定の条件を満たした住宅用家屋の新築、住宅用家屋と同時に取得する敷地、費用額が100万円以上の増改築等が対象となります。)
⑤居住要件・・贈与を受けた翌年の3月15日までにその住宅に居住
(3月15日までに一定の状態まで建築が進んでいながら未完成だったり、やむを得ない事情から居住していない時でも、遅滞なく居住することが確実と見込まれれば適用が認められます。)
⑥選択手続・・贈与を受けた翌年の3月15日までに申告が必要
もちろん500万円を超えた部分については課税の対象とされますが、この非課税500万円分は、贈与者が死亡した時の相続税の計算において加算されません。
2.それぞれの贈与制度との関係は?さらに、この特例は暦年課税制度または相続時精算課税制度(*)との併用が使用可能となっています。
例えば、暦年課税と併用の場合、贈与税非課税額は、基礎控除額110万円+500万円で610万円になります。相続時精算課税制度の適用を受ける場合は(住宅取得等資金特例1000万円を含め)特別控除3500万円+500万円で4000万円となります。
すでに相続時精算課税制度の適用を受けている場合、今回の非課税特例を適用した上で、500万円を超える部分について相続時精算課税制度の適用を受ける事となります。
また、相続時精算課税制度の場合には贈与者が父母に限られているのに対し、今回の非課税特例では「直系尊属」とし祖父母や曾祖父母からの贈与も対象になります。
3.注意が必要なところも・・上記の通り、これから住宅の取得を考えている方にとっては、それぞれの贈与制度を上手に適用することで非課税枠が拡大します。
ただ、相続税精算課税か暦年課税制度の適用かは贈与者ごとになるので注意が必要です。つまり「母からの贈与は相続時精算課税制度を適用する」と選択した場合、それ以降の母からの贈与はすべて相続時精算課税となります。この場合、今回の非課税特例は暦年課税との併用は出来ず、500万円を超える部分は相続時精算課税制度の適用を受ける事になります。
今回の非課税特例は、贈与された金銭で住宅ローンを返済したり、土地のみを購入したりする場合は対象とならないので注意が必要です。また、500万円という控除額は、受贈者一人での限度額です。残念ながら、両親と祖父母から500万円づつ合計2000万円の贈与全額を対象とする事はできません。
せっかくの非課税特例です。積極的に“贈与”を活用して、マイホームの夢を実現させましょう。子の喜ぶ顔を見せるのが、何よりの親孝行なのだと自らに言い聞かせて!* 相続時精算課税制度
親から生前贈与された財産を、相続時に相続財産の価額に含めて計算します。もちろん、それにかかる贈与税は相続税額の計算上控除されます。生前に相続財産を受贈できる「贈与税と相続税が一体となった制度」です。2009年11月16日
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101号
今年、来年買う土地で、将来の土地譲渡益課税を繰り延べる
~平成21・22年土地先行取得の場合の譲渡所得の課税特例~将来お持ちの土地を売却した場合の譲渡益を最大80%まで繰り延べることができるという、今年の税制改正で創設されたこの特例は、2年間限定。特に今年中の土地の取得にはより有利に働くため、今回はその概要をお知らせいたします。
1.特例の内容これまでの譲渡所得の特例からすると、馴染みのない方法です。まず取得ありき、譲渡はゆっくり考える買換制度と言えばいいでしょうか。
不動産所得等の業務を行う個人及び法人のいずれも適用を受けることができます。まず、平成21年1月1日から22年12月31日までの間に土地等(土地、借地権等の土地の上に存する権利で、棚卸資産でないもの。建物は対象外)を取得します。そして取得日を含む各年分(法人の場合には各事業年度)の確定申告書の提出期限までにこの特例の適用を受ける旨の所定の届出書を提出します。こうしておけば、その取得日を含む年の翌年以後10年以内に、所有する他の土地等(譲渡時に事業用のものに限ります)を譲渡したときの譲渡益の80%(譲渡時に平成22年中の取得土地のみが対象となる場合は60%)について、先に取得しておいた土地等の取得価額を限度として、課税の繰延べが受けられます。
2.特例を受けるための要件今年と来年取得する土地等を「先行取得土地等」、将来譲渡する所有土地等を「事業用土地等」といいます。それぞれの要件は表1の通りです。いくつかポイントを確認しましょう。
(1)用途制限
先行取得土地等には用途制限がありません。事業用土地だけでなく、自宅や別荘用の土地の購入でも対象となるのが特徴です。一方、事業用土地等は、譲渡する時に自社ビル、貸アパートや一定の設備等が伴う貸駐車場の敷地といった事業の用に供されている必要があります。
(2)取得先・取得原因
先行取得土地等の取得先・取得原因は限定されています。夫婦や親子間の取引、相続や贈与等による取得は対象となりません。土地取引を活発にするための政策的な制度ですから、これは仕方ないことかも知れません。
一方、売る方の事業用土地等には、事業に準ずるものも含まれ、現在所有している土地等に限りませんから、将来取得する土地でも対象となります。
3.譲渡益から控除される金額は表2の事例では、譲渡益の80%が先行取得土地等の合計取得価額を超えますので、取得価額相当額の利益が課税繰延べとなります。この結果、A,Bとも、税務上の取得価額はゼロになります。
4.今年、来年購入土地はまず届出を今年、既に決まった土地の取得がある場合、現時点で売却予定がなくても、とりあえず来年の確定申告時に特例の適用に関する届出書を提出しておきましょう。もし10年以内に他の土地を売らなかったとしても、特例を使わなかっただけのことです。何のペナルティも生じません。
今年に取得した土地を活用できるのは来年1月1日以後の譲渡からとなります。譲渡所得を計算する上での取得日と譲渡日は原則引渡し日ですが、選択により契約日とすることもできます。現在、特例を意識せずに検討中の取引でも、適用できる可能性もあります。
届出後も、実際の譲渡があるまで長い付き合いとなる特例です。何年か後に土地を譲渡した際の年分の確定申告書に、この特例の適用を受ける旨の記載をしなければ何もなりません。この際、先に届出をした先行取得土地等の売買契約書や諸費用の領収書等を添付しなければなりません。届出提出後はこうした書類の保管をしっかり行う必要があります。
なお、この特例とは別に、今年と来年に買う土地等そのものを、所有期間5年経過後に譲渡した場合、その譲渡益から1,000万円を控除できるという特例も創設されました。こちらは10年以内という期限はありませんし、取得時の届出は不要です。特例の併用はできませんが、5年経過後に売却して益が出る場合には、こちらの特例を使うことも可能です。2009年10月15日
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100号
法人の所得が赤字になったら?
法人が赤字となった場合、その赤字(欠損金額といいます。)は翌年以降に繰越して、翌年以降の黒字(所得金額といいます。)と相殺することができます。これを「欠損金の繰越控除」といっています。これと似て非なる制度に、「欠損金の繰戻し還付」というものがあります。実は、平成21年度の税制改正で、中小企業者等に限って、この制度の適用ができるようになりました。今回は、この繰戻し還付制度について、繰越控除との比較を交えてご説明します。
1.法人税の取扱い(1) 欠損金の繰越控除
欠損金の繰越控除とは、青色申告書を期限内に提出している場合、その事業年度に生じた欠損金額を、翌年度以降7年間繰り越すことができ、翌年度以降の法人税の計算上所得金額から順次控除できる制度です。
一般的な1年決算法人では、最大翌7事業年度まで繰り越すことができることになります。しかし、その翌7事業年度が赤字続きで、繰越した欠損金が使えなければ、期限切れとなって切り捨てられます。
また、冒頭でも触れたように、この制度は青色申告法人が対象です。さらに、欠損金が発生した事業年度から欠損金を控除する事業年度まで連続して確定申告書を提出していることが要件となります。
(2) 欠損金の繰戻し還付
① 制度の概要欠損金の繰戻し還付とは、青色欠損金が生じた事業年度開始の日前1年以内に開始した事業年度における法人税額の一部が還付される制度です。
還付を受けるには、申告書とは異なる「欠損金の繰戻しによる還付請求書」を提出しなくてはいけません。② 対象法人
実は、この制度、H4.4.1以後終了する事業年度については、解散事業年度等一定の場合を除き、適用が停止されていました。それが、平成21年度税制改正において、H21.2.1以後終了事業年度から、中小企業等(資本金等が1億円以下の法人など)に限って復活することになったのです。
その他、法人税額の還付を受ける事業年度から欠損金が生じた事業年度まで、連続して青色申告書を提出していることが要件となります。③ 還付税額の計算具体例
上記の表の場合における法人税の繰戻し還付税額は、次のように計算します。
前期に繰戻しをした当期の欠損金額(6,000)は、すでに使ってしまったので、翌期以降に繰越す額はないことになります。
2.地方税の取扱い(1) 欠損金の繰越控除
① 法人事業税についても、法人税同様、7年間の欠損金の繰越控除の制度があります。
② 法人住民税(法人税割)は、繰越欠損金控除後の所得金額に対する法人税額を元に計算するので、繰越控除の恩恵を受けているといえます。
(2) 欠損金の繰戻し還付
① 一方、法人事業税には、繰戻し還付制度はありません。したがって、法人税について繰戻し還付を受けた場合、翌期以降に繰越す欠損金額が、法人税と法人事業税の計算上では異なってくるので、要注意です。
上記1.(2)③の例で言うと、法人税上の繰越欠損金は0ですが、法人事業税上では6,000となります。
② 法人住民税については、還付を受けた法人税額を、その後の7年間の各事業年度で、法人税割の課税標準である法人税額から控除します。
例えば、翌期の法人税額が2,000となった場合、上記1.(2)③の繰戻し還付額1,080を控除して法人税割を計算します。
3.選択の判定基準以上ご説明してきたとおり、法人税については、欠損金を翌期に繰越すか、前期に繰戻すか選択の余地があります。
そこで、どちらを選択するかですが、ひとつの判断基準としては、翌期以降の業績見込みが挙げられます。
前述のとおり、欠損金を繰越せる期限は7年間です。今後も赤字続きの予定で、たまたま前期が黒字になったのであれば、繰戻し還付が有効です。
しかし、たまたま当期だけが黒字だったのであれば、前期や翌期の所得金額(法人税額)によって、有利な方が変わってくる可能性があります。ただし、繰戻し還付請求には、税務署の調査を呼び込む可能性もあることをご留意ください。
大好きなものを最初に食べるか、最後の楽しみに取っておくかに似ている気もします。2009年9月16日
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99号
相続税にまつわる納税猶予と継続届出書
~申告期限後もご注意を~去年から今年にかけて、各マスメディアが非上場株式に係る相続税が猶予されるようになったと大きく報道し、納税猶予は多くの人が知るところとなりました。ただこの制度、本当に税金が免除されるところまで到達するにはいくつものハードルをクリアする必要があるのが実状です。相続税の申告が終わった後に提出する届出書もその1つです。申告後も継続して税務署へ届出が必要となりますのでご注意ください。
1.農地を相続した場合・・納税猶予の概要相続税の納税猶予の対象としては、従来から農地に係る特例があります。被相続人の農地を相続して農業を引き継ぐ相続人は、一定の相続税を猶予できるという制度です。
対象となる農地には生産緑地も含まれることから、都市部においてもかなりの方が利用していると言えるでしょう。
2.非上場株式を相続した場合・・納税猶予の概要平成21年度の税制改正で、新たに非上場株式に係る相続税の納税猶予が創設されました。被相続人の非上場株式を相続して会社の代表者として引き継ぐ相続人は、一定の相続税を猶予できるという制度です。
対象となる非上場株式は、非常に細かな要件をクリアしたものである必要がありますが、今後は適用例が増加していくものと考えられます。
3.継続届出書の提出が必要上記はあくまでも税金の猶予という制度です。したがって、担保提供も必要ですし、猶予期間中の要件を満たさなくなった場合には猶予が打ち切られてしまい、相続税と利子税を支払う必要があるので注意です。
特に要件の1つとして、猶予期間中は定期的に税務署へ状況報告としての届出書(継続届出書)を提出する必要があります。晴れて免除となる一定の要件に該当するまでは、相続税の申告期限後も細かな手続きが必要ということです。①農地の納税猶予
※農業委員会の証明書も取得する必要があります。
②非上場株式の納税猶予
※当初5年間は経済産業大臣の確認書も取得する必要があります。
上記の継続届出書を提出期限までに提出しなかった場合には、原則として納税猶予が打ち切られてしまいますので、提出の管理は非常に重要です。特に最近の納税猶予については継続届出書の提出は不可避となっていますので、肝に銘じておく必要があるでしょう。
4.申告後の管理が大切相続税申告だけを税理士に依頼した場合には注意が必要です。申告後は依頼した税理士とのお付き合いが無くなるかもしれないからです。ご自身や周りの誰かが気付けばいいのですが、継続届出書は申告後にやってくるものです。忘れるかも知れません。もし、税務署等から継続届出書についての案内が郵送されず、何も気付かなかったら・・・。
申告時の適用要件や、税金が免除されることばかりが伝わっていますが、そのためには相応の手続きも必要です。
税理士との付き合い方も申告書作成までだけではなく、申告後の様々なケアも含めて考えることが重要です。2009年8月14日
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98号
損をしないと受けられない特例もあります
~居住用財産の譲渡損失の特例~自宅を売却した場合の税金の特例といえば、3,000万円の特別控除が有名です。しかしながらこの特例、利益(譲渡益)が生じた場合の話です。では損失(譲渡損失)が生じた場合にはどうなるのでしょう。土地建物の譲渡損失は、平成16年分より原則他の給与所得・不動産所得等と相殺することはできません。譲渡損失は切り捨てです。ただ、一定の要件を満たす場合の自宅の譲渡損失に限って、給与所得・不動産所得等と相殺することができます。今回は、この自宅を譲渡した場合の譲渡損失の特例についてのお話です。
1.制度の概要通常、土地建物の譲渡損失は給与所得・不動産所得等(以下総合所得といいます)と相殺することはできません。しかしながら、自宅の譲渡損失のうち一定の譲渡損失については、総合所得との相殺が可能です(損益通算といいます)。しかも、相殺しきれなかった譲渡損失については、譲渡損失が生じた年の翌年以後3年間にわたって総合所得との相殺が可能です(繰越控除といいます)。
なお、この制度、次の2つに大別されます。
(1)特定居住用財産の譲渡損失の特例
(2)居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の特例
以下、それぞれの特例について内容を説明します。
2.特定居住用財産の譲渡損失の特例(1)適用要件
下記の要件を満たす場合に損益通算が可能となります。
①平成16年から平成21年の間に譲渡すること
②譲渡年の1月1日において所有期間が5年超であること
③配偶者、直系血族、生計一親族等以外への譲渡であること
④譲渡した自宅につき住宅借入金があること
なお、繰越控除の適用については、その年の合計所得金額が3,000万円を超える場合には、適用がありません。(2)一定の譲渡損失
下記の算式により計算した金額が、損益通算・繰越控除の対象となります。住宅借入金等の残高-譲渡資産の売却価額
つまり、自宅を売却した金銭で借入金を返済してもなお、借入金が返済しきれない場合に、その返済しきれない金額に相当する金額がこの特例の対象となります。何とも厳しい条件付の特例です。
3.居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の特例(1)適用要件
下記の要件を満たす場合に損益通算が可能となります。
上記2.①~③
④譲渡年の前年から譲渡年の翌年までの間に一定の要件を満たす自宅を取得すること
⑤取得した年の翌年末までに居住の用に供すること
⑥適用を受けようとする年の末日において一定の住宅借入金等の残高があること
なお、繰越控除の適用については、その年の合計所得金額が3,000万円を超える場合には、適用がありません。
(2)一定の譲渡損失
譲渡所得の金額の計算上生じた損失金額(敷地については、500㎡までの部分に対応する損失)が、損益通算・繰越控除の対象となります。
4.一粒で二度おいしい?繰越控除を適用する年分については、その年の合計所得金額が3,000万円以下であることが要件となりますが、譲渡年の損益通算の適用については、この制限がありません。したがって、不動産の売却部分以外の所得がいくらであっても損益通算の特例の適用を受けることができます。しかも、損益通算の結果、合計所得金額が3,000万円以下となるのであれば、他の要件も満たせば、住宅借入金等特別控除の適用を受けることもできます。
また、譲渡した自宅に借入金の残高があり、かつ、取得した自宅に借入金の残高がある場合には、上記2.3.のいずれか有利な方法により申告することが可能です。
5.申告書に意思表示が必要ですこの特例の適用を受けるためには、確定申告書に一定の事項を記載し、一定の書類を添付することが必要となります。
この特例に限らず、特例というものは、その適用を受けるためには申告書にその意思表示が必要となります。あくまで特例ですので、適用を受けなくても正しい申告書です。税務署はわざわざ教えてくれません。毎年同じだから申告書は自分で作成している。そういった方もおられると思いますし、立派なことだと思います。しかしながら、時には違う目(者)で物事を検証するということも必要なのではないでしょうか。思わぬ発見(特例)で得することがあるかもしれません。2009年7月15日
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97号
申告期限をすぎてしまったら
~延滞税・利子税・加算税について~どのような税金にも、期限や期日といった数多くの締切ルールがあります。定められた期限までに確定申告をしなかったり、税金を納めなかったりすれば、本来納めるべき税金に加えて、さまざまなペナルティが課されることになります。
相続税の法定申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内で、納付期限についても同様です。
今回はこの法定申告期限までに、相続税の申告及び納付ができなかった場合、追加で徴収される税金、附帯税について説明します。
1.附帯税の種類には・・附帯税には「延滞税」「利子税」「加算税」の3種類があります。
○延滞税
納めるべき税金を法定納期限までに完納しなかった場合に、遅れた期間に応じて課されます。
税率は、法定納期限の翌日から完納するまでの日数に応じて、原則年14.6%(法定納期限後2ヶ月以内は、公定歩合+4%)です。(図1)○利子税
延納など納付の延期が認められた場合に課されるもので、利息と同様な性質を持っています。
税率は、延納の期間や公定歩合、財産の保有状況(不動産等の割合)などに応じて決まります。○加算税
法定申告期限までに申告を行わなかった場合に課されるもので「過少申告加算税」「無申告加算税」「重加算税」があります。
税率は、10%~20%程度ですが、仮装隠ぺいによる重加算税は、最高で40%にもなります。
もちろん地方税にも同様のペナルティはあり、附帯税ではなく附帯金といいます。
2.物納から延納の場合は?延滞税は、締切ルール違反に対する遅延利息に相当するものといえます。それに対し利子税は、合法的に延長された期限に対する約定利息に相当するものと言えるでしょう。
延納が認められた期限までの納付には利子税が課され、期限を経過した納付については、その経過期間にかかる延滞税が課されます。
物納の場合、平成18年度の改正によって申請から許可(または却下)までの期間について利子税が課されることになりました。また、許可が出る前に自ら取り下げた場合には、完納までの期間について延滞税がかかります。(図2ケース1)
同じ改正によって、物納からの延納への切り替えは、一定の理由により物納申請が却下された場合に限って、延納申請することができるようになりました。この延納への手続きを行う事によって、延滞税ではなく利子税の対象となります。利子税は、おおむね延滞税より低く抑えられていますから、延納申請を忘れずに行うことが必要です。(図2ケース2)
3.やはり事前準備が大切!上記の通り、延滞税の税率の方が明らかに金融機関での借入利率よりも高くなっています。また、加算税は延滞税や利子税のように期間に比例するものではなく、不誠実に対する一定の行政ペナルティのため、さらに高い税率となっています。
もちろん、こういったペナルティの税金は必要経費にはなりませんので、税金はなるべく納期限に納付するべきなのでしょう。晴れの日には傘を貸してくれても、いざ雨が降り出すと取り上げられてしまう事もあるのが銀行だ、などと悪口を言う方もおられます。しかし高率な附帯税を考えると、やはり銀行と仲良くしておいた方が良さそうです。2009年6月15日
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96号
適用期限が延長された特定の事業用資産の買換えの特例の活用は
特定の事業用資産の買換えの特例のうち、最も一般的に使われているのが、譲渡の年の1月1日における譲渡資産の所有期間が10年超という条件の特例です。適用期限が来る度に今回こそ廃止か、と言われ続けていましたが、平成21年度税制改正により更に3年間期限が延長され、平成23年12月31日までの譲渡分まで、その適用が可能となりました。
1.特例の概要特定の事業用資産の買換え特例は、一定の条件を満たす買換えについて、譲渡収入のうち買換えた資産価額の8割については今回は課税しません、その残りについてだけ税金の計算をすれば良い、というものです。この特例を活用すれば、わずかな税金を納めるだけで、多額の資金調達をしなくても新しい事業用資産を取得することができます。
同じ種類の資産の買換えに限らず、駐車場用地を売却して貸付用マンション1室に買い換える、新たにアパートを建築する等、組み合わせは自由です。買換資産は、資産を譲渡した年に取得するのが原則ですが、所定の届出書を税務署長に提出することにより、譲渡した年の前年中、あるいは譲渡した年の翌年中に買換資産を取得することもできます。
2.事業用の資産この特例は、個人、法人双方に適用がありますが、個人の場合には譲渡資産も買換資産も所有者自身の「事業」の用に供されているものでなければなりません。未利用の空き地や親族に無料で貸している土地などは対象となりません。ただし、譲渡資産がその所有者と生計を一にする親族の事業に使われていた場合に限って、所有者本人が事業に使っていたものとして取り扱うこととしています。ご主人の所有土地の上に奥様が建てたアパート経営をしている場合、その土地をご主人の事業用資産として特例を受けることもできます。
ここでいう事業とは、必要経費を差し引いて利益の出るような相当の対価を得て継続的に行われていれば該当します。例えば、不動産収入はあるが賃貸マンション1室のみ、というような、事業と称するに至らないような規模のものであっても適用できます。法人の場合には、社宅も対象となります。
ただし、一時的に貸し付けたようなものは認められません。
3.買換資産によっては特例を適用しないほうが有利この特例の適用に当たっては、どのような買換資産を取得するかで、その後に発生する税金の負担に差が出ます。この特例は、あくまでも課税の繰延べです。最終的に買換資産を売却する時まで課税を猶予されているだけです。ですから、買換資産の税務上の取得価額は、実際の購入金額ではありません。買換え前の、譲渡資産の取得費を元にして計算します。例えば、相続で取得した土地でその取得経緯や取得価額が不明の場合には、譲渡収入の5%として計算を行い、これをそのまま引き継ぐのです。このため、買換資産が建物等の減価償却資産の場合には、減価償却費は少なくなり、毎年の所得税の負担は大きくなります。また、引き継いだ取得価額が減価していきますから、将来買換資産を譲渡する場合の取得費は、更に少ないものになってしまいます。
下記の例のような耐用年数の短い木造建物の場合には、毎年の所得税と住民税の合計税率が50%の方であれば、繰延べた税額との比較をしますと、9年後には、特例を適用しない場合の税負担の減少額が、繰延べた税額を超えてしまいます。目先の納税はわずかでも、特例を適用しないほうが有利な場合もあるのです。長期譲渡所得の税率である20%を超える税率で毎年の所得額に課税される方は、減価償却資産を買換資産とすることについては、慎重な検討が必要です。
4.分譲マンションは土地部分のみ特例選択が可能不動産賃貸業で買換え特例を適用するのであれば、課税が繰延べられる部分をすべて土地に充て、所有し続けるのが最も良い方法です。例えば、分譲マンションへの買換えを検討するケースでは、敷地権としての土地部分のみを買換資産として選択するという方法もあります。こうすれば、建物部分は今回の購入価額そのまま、減価償却を行えます。
なお、買換資産を将来譲渡した場合のその取得の日は、買換資産の実際の取得の日です。買換資産は、譲渡資産の取得日は引き継ぎません。買換え後、5年以内に売却してしまうと、短期譲渡所得の39%という高い税率が適用されることになってしまいますので、注意が必要です。2009年5月15日
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95号
定期借地権の設定をした時は
~土地所有者側からみて~平成4年に施行された借地借家法には、定期借地権制度が創設されています。これにより、土地所有者は契約更新の心配をする必要が無く、安心して土地を賃貸することが出来るようになりました。これから定期借地として土地を賃貸しようとしている方も、すでに定期借地を行っている方も税務上の取り扱いは気になるところだと思われます。そこで今回は一般定期借地権に係る土地所有者側について主な取り扱いをまとめてみました。
1.所得税法上の取り扱い定期借地権の設定をする場合には、通常は何らかの対価を授受するはずです。所得税法では、定期借地権であろうとも普通借地権であろうとも、この収受した設定の対価の取り扱いについては差異を設けておらず、次のように取り扱われます。
なお、この設定の対価とは土地所有者が受けた経済的利益のことを指しており、具体的には次の金額をいいますので注意してください。
したがって、土地所有者は設定の対価の多寡により適用される所得区分・税率が異なる結果となりますので注意する必要があるでしょう。なお、譲渡所得に該当した場合には事業用資産の買換えの特例を利用することも可能です。
しかしながら、定期借地権の場合には土地の更地価額の2分の1を超えるまでの権利金等を収受することは通常は考えられませんから、現実的には不動産所得に該当することでしょう。
2.相続税法上の土地の評価の取り扱い定期借地権が設定された土地の相続税法上の評価額は、簡単に言えば、更地の土地評価額から定期借地権相当の価額を控除して計算したものです。すなわち、土地の評価額は更地に比べて減少することになります。
なお、定期借地なのですから土地の評価額の減少幅は、期間の経過とともに逓減することになります。つまり、契約期間満了時には更地評価に戻ることになります。
また、権利金等を収受すれば当然に財産も増加しているはずですから注意してください。
したがって、上記1も考慮すると土地所有者としては、次のことを考えなけれなりません。①収受した権利金は不動産所得として高税率による所得税が課税される恐れがあるため、保証金方式か前払賃料方式が検討材料となります。
②ただし、保証金の場合には後日返還が必要となり、下記記載のとおり物納財産として考えている場合には注意が必要となります。
3.物納財産としての有効性相続税の納税にあたり、定期借地権が設定された土地を物納することは可能です。しかしながら、定期借地権が設定されている土地は以下のような問題点を解決する必要がありますので注意してください。
>保証金を収受していた場合には、この保証金を精算する必要があります。
>借地人が土地に抵当権を設定している場合には、これを抹消する必要があります。
>定期借地の賃料が低額の場合には、賃貸料の引き上げを行う必要が生じる場合があります。
4.広い視野で活用を定期借地権の設定にあたっては、実際には様々なことを考慮する必要があるでしょう。土地の所在場所にもよりますが、安定的収入の確保、固定資産税の軽減などを考慮して住宅用の定期借地権を行うことも考えられます。また、設定時に収受したまとまった金銭を利用して新たな建物の建築資金等へ充てる(投資)ことを考えてもいいでしょう。ただ、必ずしも評価の面で相続税対策にはならない事もありますので、幅広い観点からの検討が必要です。
2009年4月15日
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94号
平成21年度税制改正
平成21年度税制改正の大綱が、昨年12月12日に自民・公明の与党より、これを踏まえて12月19日に財務省より発表されました。今年度の改正案は、景気回復を念頭に置いた減税措置に重きを置いた内容となっています。主な改正予定事項をまとめてみました。
1.相続税関係税制(1)相続税の計算方法の改正(遺産取得課税方式への変更)は見送りに
今年度の税制改正項目として一番の注目を集めていた相続税の計算方法の大改正は、結局のところ見送りです。
昨年度の税制改正大綱には、各相続人が実際に取得した遺産額に応じて個別に税額を計算する「遺産取得課税方式」への改正を検討する旨が謳われていました。しかし、今までどおりの「法定相続分遺産取得課税方式」に変更はないことになります。(2)事業承継税制として
①取引相場のない株式等に係る相続税の納税猶予制度の創設
経済産業大臣の認定を受けた一定の非上場会社の後継者となる相続人が、その非上場会社の株式等を相続等により取得した場合、一定の計算により算出した相続税額について、その相続人の死亡等の日まで納税を猶予する、という特例が創設されました。
猶予される相続税額は、その株式等(相続開始前から既に保有していた株式等を含めて、発行済株式等の総数の2/3までの部分)の80%相当額に対する税額です。②取引相場のない株式等に係る贈与税の納税猶予制度の創設
経済産業大臣の認定を受けた一定の非上場会社の後継者が、その非上場会社の代表者であった者から贈与によりその保有株式等の全部を取得した場合、贈与税(贈与前から既に保有していた株式等を含め、その会社の発行済株式等の総数の2/3までの部分に対する税額に限る)全額の納税を猶予する、という特例が創設されました。(3)農地等に係る相続税の納税猶予制度等の見直し
①市街化区域外の農地等については、20年間の営農継続により猶予税額が免除される措置が廃止されます。②市街化区域外の農地について、改正後の農業経営基盤強化促進法の規定に基づき貸し付けられた農地等についても納税猶予の適用が認められるようになります。
2.中小企業関係税制(1)法人税の軽減税率の引下げ
現行の制度においては、中小法人等について、所得金額のうち年800万円以下の金額に対する法人税率は、22%と軽減税率が適用されています。それが、平成21年4月1日から平成23年3月31日までの間に終了する各事業年度については、さらに18%に引き下げられることになります。つまり、1年決算法人であれば、一般的に平成20年4月2日以降開始した事業年度から適用されるため、すぐに恩恵を受ける法人も多いのではないでしょうか。(2)欠損金の繰戻し還付制度の適用が可能に
中小法人等の平成21年2月1日以後に終了する各事業年度において生じた欠損金額については、欠損金の繰戻しによる還付制度(以下、「繰戻し還付制度」という。)の適用ができることになります。つまり、一般的には平成20年2月2日以降開始した事業年度から適用されることとなります。
繰戻し還付制度とは、前期が黒字で当期が赤字となった場合に、前期に納めた法人税の一部の還付を受けられるというものです。
現行では、平成4年4月1日から平成22年3月31日までの間に終了する各事業年度において生じた欠損金については、解散等の特殊な場合を除き、この制度は適用できないことになっています。
3.住宅・土地税制(1)土地等の長期譲渡所得の1,000万円特別控除制度の創設
個人又は法人が、平成21年及び平成22年中に取得をした国内にある土地等を、所有期間が5年を超えた後に譲渡した場合には、譲渡益から1,000万円が控除されるという制度が新たに創設されます。(2)平成21年及び平成22年中の土地等の先行取得をした場合の課税の特例の創設
事業者が、平成21年及び平成22年中に国内にある土地等を取得し、その取得をした事業年度後10年以内に、所有する他の土地等の譲渡をしたときは、譲渡益の80%(平成22年中取得の場合は60%)相当額を限度として、取得土地について圧縮されます。あくまで課税の繰り延べがされるだけで、免除ではありませんので注意が必要です。
なお、土地等の取得をした事業年度の確定申告期限までに、一定の届出の提出が要件とされています。(3)特定事業用資産の買換えの特例期限の延長
適用期限が平成20年12月31日までとされていた、特定の事業用資産の買換えをした場合の課税の繰り延べの特例が、平成23年12月31日までに延長されます。
4.その他の主な改正2009年3月13日
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93号
文言一つで相続財産が増加?
~家屋につき資本的支出がある場合等の相続税の取扱い~賃貸物件をお持ちの場合、避けて通れないのは修繕費です。この修繕費、払ったときの経費になるものもあれば、新たな資産の取得(資本的支出といいます)として減価償却資産の対象となるものもあります。家屋は当然ながら相続財産に該当します。そして家屋は固定資産税評価額で評価されます。では、資本的支出が行われた場合、その固定資産税評価額はどうなるのでしょうか。今回は、この資本的支出に注目し、相続税法上の取扱いについてお話をします。
1. 資本的支出とは(1)修繕費との区分
一口に修繕費といっても、その修繕の内容によって、税法上取扱いが異なります。税法上の修繕費に該当すれば、支払った年の経費となりますが、新たな資産の取得(資本的支出といいます)に該当すれば、減価償却資産の対象となります。
修繕費とは、その資産の通常の維持管理のため又は、災害等により毀損した資産につきその現状を回復するために要した費用を言います。資本的支出とは、その資産の価値を高め、又はその耐久性を増すこととなると認められる部分に対応する金額をいいます。(2)資本的支出の例示 資本的支出には、下記に掲げるような金額が該当します。
①避難階段の取付等、物理的に付加した部分にかかる金額
②用途変更のための模様替え等改造又は改装にかかる金額
2.資本的支出がある場合の相続税法上の評価の取扱い資本的支出については、その内容に応じて、下記の区分のように取り扱われます。
(1)この資本的支出が、増築・増床等、資産の物理的な増加に該当するものである場合で、
①その増加された部分について固定資産税評価額が既に付されている場合には、その固定資産税評価額
×1.0が評価額となります。
②固定資産税評価額が付されていない場合には、増改築等に係る部分と状況の類似した付近の
家屋の固定資産税評価額を参考とした価額が評価額となります。
③固定資産税評価額が付されておらず、付近に状況の類似した家屋が存在しない場合には、
下記の算式により評価した金額が評価額となります。
(再建築価額-減価償却累計額)×70%上記②、③の場合において、申告期限までに固定資産税評価額が付された場合には、当然その固定資産税評価額を基礎に評価することとなります。
(2)この資本的支出が、給排水設備の入替え、壁紙の張替え、部屋割りの変更等、既存の資産を除却した上で新たに資産を取得した場合には、原則、別個に評価の対象とはなりません。といいますのも、その修繕が既に存在する(固定資産税評価額が付されている)資産を同等のものと入替えただけのものであれば、新たに固定資産税評価額を付す必要がないからです。そして、その修繕が新たに固定資産税評価額を付す必要のない修繕であれば、その修繕は既に建物本体の固定資産税評価額に含まれていますので、別個に評価の対象とする必要がないのです。
所得税法上の家屋の取得価額は、当初の取得価額は勿論、後日発生した資本的支出の金額とともに積算され増加していきます。しかし、家屋の固定資産税評価額は、その建物の構造・材質を基礎に計算しますので、その構造・材質が変わらなければ、いくら資本的支出があったとしても、固定資産税評価額が増加するとは限らないのです。そして、家屋の固定資産税評価額が増加しないのであれば、相続財産である家屋の評価額も増加しないのです。
つまり、所得税法上の資産として計上することと、相続税法上の資産(財産)として評価することは別の話なのです。固定資産税評価を付す必要のない修繕であれば、その資本的支出は、別途資産として計上する必要はないのです。
3. 帳簿にあるもの=相続財産?ご自身の確定申告書を御覧ください。どこの建物の附属設備なのか、どこの建物の修繕なのか、よく判らない資産があるかもしれません。場合によっては、そもそも資産に計上する必要のないものまで資産に計上しているかもしれません。
資産に計上されていれば、何らかの経済的価値を見出そうとするのが税務署です。その資産がどの建物に帰属するものなのか、家屋の固定資産税評価額に含まれているのかいないのかが確定していれば、いらぬ詮索を受けることもないでしょう2009年2月13日
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92号
仲良し姉妹だからこそ、共有関係を解消する時期は?
~固定資産の交換の特例~土地や建物などを交換した場合には税務上、そのときの時価により譲渡があったものとされ、課税の対象となります。しかし、一定の要件に該当する場合には譲渡の時点での課税はなく、将来に繰り延べることができる特例があります。この特例は個人・法人双方にあります。今回はその交換の特例を適用して共有関係を解消しようとするものなのですが、その特例の適用の時期が違うと、思わぬ税金がかかると言うお話です。
1. 固定資産の交換の特例の適用の条件交換の特例は以下の要件を満たすことが必要です。
① 譲渡資産と取得資産は、同種の固定資産であること
② 譲渡資産と取得資産は、それぞれの所有者がいずれも1年以上所有していた固定資産であること
③交換のために取得した固定資産でないこと
④譲渡資産と取得資産の時価の差額は、これらの時価のうち多い方の金額の20%以内であること
⑤取得資産を譲渡資産の交換直前の用途と同一の用途に供すること
2.こんな場合は、交換できる?例えば、姉妹が10年前の相続によって、大阪の貸地(底地)Aと東京の土地Bを共有で2分の1ずつ取得しました。現在は、東京の土地Bには妹夫婦が住んでいます。今年(平成20年)の夏に建物の所有者に依頼されて、大阪の借地権付の建物を購入しました。この建物は、現在は事務所として貸付けています。今後姉妹は、2つの土地と建物を交換して共有関係を解消するつもりです。東京の土地と建物は自宅として住んでいる妹が、姉が大阪の土地と建物をそれぞれ単独で所有したいと思っています。
3. 今年交換するなら・・・金銭の授受(交換差金)がないとした場合には、今年のうちに交換の特例を用いて交換することができるのは、大阪の旧貸地Aの底地400万円のうち共有持分2分の1である200万円に相当する東京の姉の持分だけです。なぜなら大阪の建物を取得してから1年を経過していないので、建物及び借地権部分は1.の②の要件を満たさないからです。
4. 特例が認められないと思わぬ税金がかかります。それでは形式上、建物と土地の共有持分を今年の内に解消するために、200万円は交換、400万円は売買と別々の契約とすることができるのでしょうか。この場合、税務上は、別々の契約とみることはできずに400万円が交換差金とみられてしまいます。これでは、交換差金400万円が時価200万円×20%=40万円を超えるために上記1.の④の交換の要件を満たさないことになります。姉妹は二人とも今年の譲渡収入金額が600万円となり、それぞれに思わぬ所得税と住民税が課税されることになります。建物及び土地の共有持分を一度の無税の交換で解消したいのなら、大阪の建物を取得してから1年以上が経過した来年以降に検討することが望ましいでしょう。
5. 共有持分の解消をご検討ください!今回のように相続において先代の所有する不動産を複数の子が共有することがよくあります。例えば、その不動産が賃貸用であるなら「子」の世代でも毎年の所得税の確定申告は煩雑となるのに、「孫」の世代まで世代交代が続くと、持分が複雑となり権利関係がわかりにくくなってしまいます。このような共有持分を解消する方法の1つとして、交換の特例があります。交換の特例は条件を満たすのであれば、所得税及び住民税が全くかかりません。ただし、不動産取得税や登録免許税は免れませんので注意が必要です。他に共有持分を解消する方法としては、「不動産管理会社を設立し、その会社に売却する」、共有者同士で相互に「売買」または「贈与」する方法があります。ご自身にあったベストプランを専門家に相談してご検討ください。賃貸不動産を1人で所有すると、確定申告が簡単になり、自分の意思で不動産を処分することも可能となります。次世代のことを考えても不動産の共有状態は早期に解消することをお勧めします。
2009年1月15日
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91号
消費税を上手に節約する方法
消費税は、法人個人を問わず誰もが一番身近に感じる税金ではないでしょうか。しかし、うっかりすると余計に納めることになりかねない要注意の税金でもあります。そんな消費税の節税対策の一部を、オフィスビル賃貸業でその賃貸収入の全てが消費税の課税対象となる3月決算法人を前提にご紹介します。
1. 課税方法の選択をして節税を(1) 納税額の計算方法
消費税の計算方法は2通りから選択できます。それぞれ簡単にご説明すると次のとおりです。①原則課税
課税売上に係る消費税(A) - 課税仕入に係る消費税(B)②簡易課税
課税売上に係る消費税(A)- (A)×みなし仕入率不動産賃貸業の場合、②のみなし仕入率は50%となっています。一般的には、実額で計算する(B)の金額が少ないため、この50%を控除できる簡易課税の方が納税額を少なくすることができるうえに、計算が楽というメリットがあります。
(2) 簡易課税の注意点
しかし、メリットだらけのように思える簡易課税にも注意点があります。
①簡易課税は選択制で、適用したい事業年度開始日の前日までに税務署に届出をしなければならないこと
②いったん選択したら2年間適用し続ければならないこと
③基準期間(一般的に2年前)の課税売上高が5,000万円を超える事業年度は適用できないこと
④大規模な改修工事や建物の購入があった場合にも、これらに係る消費税の還付を受けられないこと
従って、簡易課税を選択してから2年間は、改修工事や建物の購入を控え、原則課税に戻してから行えばよいのです。原則課税に戻れば、(B)の金額が(A)の金額より大きくなる可能性が大きいため、消費税の還付を受けられると言うわけです。なお、本稿でいう建物は、オフィスビルに限定して考えてください。
2.課税期間の短縮を活用簡易課税から原則課税に戻るには、やはり適用したい事業 年度開始日の前日までに税務署に簡易課税をとりやめる届出をしなければなりません。しかし、もし届出をうっかり忘れ てしまったら泣き寝入りしなければならないのでしょうか。
そのような場合も、課税期間の特例選択の届出をし、課税期間を1ヶ月または3ヶ月に短縮することにより、事業年度の途中でも原則課税に戻すことができるのです。
(2) 原則課税→簡易課税
また、原則課税は簡易課税のように2年間の継続適用のしばりがないため、改修工事や建物の購入が完了したら次の課税期間から再度簡易課税を選択することができます。
H20.8月中にオフィスビルを購入する3月決算法人が、課税期間3ヶ月を選択したとします。次の(a)~(d)の届出を下記の線表のスケジュールのように提出することにより、かなりの節税効果が得られます。
(a) 簡易課税とりやめの届出
(b) 課税期間短縮の届出
(c) 簡易課税選択の届出
(d) 課税期間短縮とりやめの届出
課税期間を短縮すると、その分申告回数が増え手続きが大変になります。こちらも2年間のしばりがありますが、2年後に短縮を取りやめ、元の1年ごとの申告に戻せばよいのです。
3. そもそも納税義務のない法人の場合はこれまでのお話は、消費税の納税義務を負う課税事業者(基準期間の課税売上高が1,000万円超)を前提としていました。では、もし消費税の課税対象とならない免税事業者が大規模な改修工事や建物の購入をした場合はどうでしょうか。免税事業者はそもそも消費税の申告義務がないため、そのままでは消費税の還付をうけることができません。そこで、今度は課税事業者選択の届出をしてあえて課税事業者となり、申告書を提出することにより、還付を受ければよいのです。
しかし、いったん選択をすると簡易課税や課税期間短縮と同様2年間免税事業者に戻れませんので、2年間通算で有利不利判定を行う必要があります。さらに、住宅用建物の賃貸も併せて行っている法人や、新たに取得する建物が住宅用となる場合には、より複雑で厳密な検討が必要となります。やはり大切なのは良き専門家のアドバイスでしょうか。
2008年12月15日