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COLUMN
毎月職員が交代で執筆しています。
ただ、自分の順番が回ってくると、
その対応は様々です。
税務のプロとして、日頃の実務や研究の成果を
淡々と短時間にまとめる者、
にわか勉強で急に残業が増える者、さて今月は…
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90号
親の土地を子供が無償で借りて利用する場合
~土地の使用貸借~土地の利用に際し、民法上の契約パターンとしては、地代等の対価を無償とする使用貸借契約があります。今回は個人間における土地の使用貸借、特に親が所有する土地を子に利用させる場合を中心としてその活用について説明します。
1. 個人間における土地の使用貸借使用貸借による土地の借主には、賃貸借ではないため、借地借家法における借地権という権利は存在しないことになります。したがって、権利の移転(発生)を伴うようなことが生じないため、個人間における土地の使用貸借という行為自体について、税務上において問題が生じることは通常はありません。
つまり、土地の賃貸借の場合は借地権という問題が生じるところ、使用貸借であれば税務上においても問題なく借主はタダで土地を利用することが可能となるのです。そのため、土地の使用貸借は親族間、特に親子間でよく行われています。個人間で土地の貸借を行った場合の税務上のポイント
●賃貸借・・・借地権の問題、つまり権利金の授受等が行われないと贈与等の問題が生じる可能性がある。
●使用貸借・・それ自体で税務上の課税問題は生じない。
2.相続税上の土地の評価への影響は?子供が親の土地を使用貸借により借り受けて賃貸用建物などを建設することがよくあります。
この場合、建物から生じる収益はその全てを建物所有者である子供が享受することができるため、親の蓄積財産(金融資産)の増加を抑制できるというメリットがあります。
しかしながら、デメリットとしては土地の相続税評価額は自用地、つまり更地として評価されることが挙げられます。借地権という権利が発生していないのですから、当然に更地評価となります。したがってこのケースでは、親が所有する土地という財産自体の減少効果はないことになります。
3. 賃貸用建物の贈与と土地の使用貸借の合わせ技上記2のとおり、子供が親の土地を使用貸借により借り受けて建物を建築した場合には、土地の評価額は減少しません。
そこで、土地の評価額を減少させる方法を考えることにしましょう。
1つの方法として、親が自ら賃貸用建物を建築して賃貸に供した後に、子供に贈与する方法が考えられます。
この場合、自らの土地に賃貸用建物を建築していることから、賃貸後のこの土地は貸家建付地となり、相続税評価額が減少することになります。例えば、借地権割合が6割の地域であれば、自用地評価額の82%相当となり、土地の評価額は18%引きとなるのです。
その後、土地については使用貸借として、この建物を子供に贈与します。これにより、上記2と同様に子供に収益を移転させることができ、かつ、土地の評価額減少という効果も得ることが可能となります。
ただし、重要な注意点としては、賃貸用建物の賃借人が建物贈与後に異動した場合には、この貸家建付地による評価減という効果はなくなり自用地評価額に戻ってしまうということです。
そのため、賃借人に異動が起こらないような仕組みづくり、例えばサブリースによる一括賃貸方式などを利用する必要があるでしょう。ポイント
●土地所有者が建物を建築し、貸家建付地とする。
●親は建物評価額と建築コストの差異による相続税対策が図れる。
●贈与前後で賃借人に異動がないようにする。
●建物贈与により、収益の移転を図る。
●建物贈与にあたっては、贈与税の多寡により相続時精算課税の利用を考慮する必要がある。
4. 法人の活用も含めた検討が必要法人の活用を検討する必要もあります。
例えば、個人ではなく同族法人が土地を借り受けて賃貸用建物を建築することが考えられます。この場合、一定の要件等をクリアすることにより、土地の相続税評価額を20%引きとすることができ、小規模宅地等の特例の利用も可能となります。さらに、収益は法人に帰属することから、多くの人に収益を分散させることができ、所得分散効果を大きく享受することが可能となります。
また、同族法人に対してサブリースを行うことも考えられます。同族法人に対するものですから、外部へ賃料収入が流出するようなことはなく、上記3のポイントである賃借人の異動リスクを無くすという効果を得ることができるでしょう。2008年11月14日
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89号
特例を使って賢く納税
~相続財産を譲渡した場合の取得費の特例~土地や建物を譲渡した場合、譲渡益が発生すれば、その譲渡益に対して所得税等が課せられます。しかしながら、相続や遺贈により取得した土地や建物については、その譲渡益を減少させる特例があります。取得費加算という特例です。今回はこの取得費加算という特例についてのお話です。
1. 取得費加算とは(1)制度の概要 下記の要件を満たす場合には、その譲渡した資産の取得費に一定金額を加算することができます。
①相続や遺贈により取得した資産を譲渡すること
②その資産について相続税が課税されていること
③その資産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで
に譲渡していること
譲渡所得の金額は、下記の算式により計算されます。
譲渡代金-(資産の取得費+譲渡経費)=譲渡所得
したがって、資産の取得費が増加すれば譲渡代金から差し引く金額が多くなるため、譲渡所得は減少することとなります。
この特例の対象となる資産とは、土地・建物は勿論、相続により取得した株式、ゴルフ会員権などといったものまで対象となります。
(2)取得費に加算される一定の金額とは
譲渡した資産が
① 土地等
② ①以外
の、いずれに該当するかによって取得費に加算される金額の計算方法が変わります。つまり、支払った相続税のうち、相続した資産のうちに譲渡した資産の占める割合分だけ、取得費に加算することができます。しかしながら、土地については優遇されており、譲渡していない土地に係る相続税についても、取得費に加算することができるのです。
2.誰が譲渡(相続)するのかこの特例の適用を受けるためには、当然ではありますが、相続税を支払っていることが条件となります。被相続人の配偶者のように、配偶者の税額軽減の特例の規定により、相続税の納税がない方はこの特例の適用を受けることができません。したがって、まず納税額が発生する人に売却予定の資産を相続してもらい、この特例の適用を受けることにより、手取金額ができるだけ多くなるようにします。そうすれば、納税に充てる資金を多くすることができます。
また、一つの土地を複数の相続人で相続して売却したとしてもこの特例の適用はあります。本来であれば、土地の共有はお勧めしませんが、売却の見込みがある場合には、遺産分割の方法として有効な方法の一つです。換価分割という手法です
3. 買い手が現れない場合には・・・こういうご時世です。いい場所にある土地でも、市況が悪ければ買い手はなかなか現れません。売却ができなければ取得費加算の特例は使えません。そんな場合には、同族会社に買い取らせるという方法があります。資金は銀行から借入れます。個人が相続税納税のために借入れを行った場合、その支払利息は何ら経費にはなりませんが、法人が土地取得の目的で借入れを行えば、その支払利息は経費とすることができます。つまり、法人に買い取らせることにより、個人が納税資金を確保するという目的を達成しつつ、支払利息を経費とすることができるのです。
この取得費加算の特例、法定申告期限から3年を経過する日までが特例の適用をうけることができる期限です。相続税を所得税で取り返すことができる最後のチャンスなのかもしれません。2008年10月15日
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88号
借地権の課税上の扱い
一口に借地権と言っても、様々な借地権がある中で、今回は個人が土地所有者、法人が借地人のケースでの普通借地権の法人税法上の扱いについて述べたいと思います。
1. 借地権の借地借家法上の位置づけ「借地権とは、建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう。」ものとされています。存続期間が終了しても借地契約が更新されるのが原則である普通借地権と存続期間の満了によって、当然に消滅する定期借地権があります。定期借地権には、借地権の利用目的、存続期間、借地権消滅の相違から一般定期借地権、建物譲渡特約付借地権、事業用借地権と3種類あります。
2.法人が通常支払うべき権利金を支払っている場合まず、法人税法での借地権は、借地借家法の範囲よりは広く、単に地上権や土地の賃借権をいうこととされています。そのため、建物の所有を目的とするものだけに限定されていません。
したがって、構築物(例えば、広告塔やアスファルト式の駐車場)の所有を目的とするものであっても理論上は借地権が発生する場合があります。
これは、権利金を収受するという取引の実態に応じて、借地権を捉えようとする考え方があるからです。
個人の土地に法人が借地権を設定した場合、法人が通常支払うべき権利金の額を支払っていれば、法人に対して特段の課税の問題は発生しません。この場合の地代の額は、一般の地代の額でよいとされています。
3. 法人が通常支払うべき権利金を支払っていない場合法人が、通常支払うべき権利金の額を全く支払っていない場合には、通常支払うべき権利金の額と実際に支払った権利金の額との差額は、法人が贈与を受けたものとして取り扱われるので注意が必要です。
(借方)借地権 ○○○ (貸方)受贈益 ○○○
以下具体例を用いて計算します。
土地の更地価額=1億円、相当の地代の年額=600万円
実際に収受している地代の年額=240万円
実際に収受している権利金の額と特別な経済的な利益の額は0円と仮定します。
権利金額として認定される金額(基通13-1-3)
=1億円×(1-240万円÷600万円)=6,000万円
4.法人が通常支払うべき権利金を支払わず相当の地代を支払っている場合法人が、通常支払うべき権利金の額を支払わず、相当の地代の額を土地所有者に支払う場合には、権利金の認定課税は行われません。ここに相当の地代とは、公示価格等から算定した合理的な土地価額に6%を乗じて算出するものです。
この場合、賃貸借契約以降の地代額の算定については、①土地の価額の上昇に応じて順次その収受する相当の地代額を改定する方法、②改定をしないで据え置く方法があります。
上記①の改定する方法を選択する場合は、税務署に「相当の地代の改定方法に関する届出書」を提出し、3年ごとに相当の地代の額を改定する必要があります。
もし、この改定方法に関する届出書がないときには、改定しないで据え置く方法を選択したものとされます。
かつてバブル時、土地の価額が急上昇していたときには、地代を据え置く事によって法人に自然発生借地権を生じさせる方法が一世を風靡したものです。個人の土地の価格を法人に移転させる相続税対策として有効な方法だったのです。しかし、バブル再来の気運は期待できない昨今、あまり利用されていないのが実情です。
5.土地の無償返還の届出書の提出3の権利金が認定課税されるケースで、なんとかして権利金の認定課税を避ける方法はないのでしょうか。実は、これを回避する手段として、法人が遅滞なく土地の無償返還に関する届出書を税務署長に提出する方法があります。地主である個人と借地人である法人が連名でこの届出書を提出することにより権利金の認定課税は行われないのです。
また、借地人が法人の場合には、相当の地代の額と実際に支払っている地代の額の差額についても課税上の問題は発生しません。これは、差額の地代と受贈益は相殺関係にあると考えられるからです。
なお、土地の無償返還に関する届出書を提出する場合で、地主が個人、借地人が法人の場合には、地主の所有する土地の相続税評価額は更地価額の80%となります。
また、この場合に地主である個人が、借地人である法人の同族関係者のときは、法人の株価を算定する際に、純資産価額は更地価額の20%を加算して計算します。
借地権の設定料の支払もなく、土地価格の20%を法人に移転できるので相続税対策として、個人所有の土地に法人所有の建物を建築することは非常に有効なものと言えるでしょう。2008年9月16日
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87号
居住用の宅地が2つある場合・・・
~小規模宅地等の特例は2カ所適用できるの?~相続により土地を取得する場合、土地の評価を大幅に下げてくれる制度があります。この制度は『小規模宅地等についての課税価格の計算の特例(以下「小規模宅地等の特例」といいます)』です。この特例は、相続税評価額が最大で80%引きになる可能性があるものです。今回は、複数の生活拠点となる土地が存在する場合を考えました。
1. 小規模宅地等の特例相続や遺贈により取得した財産のうち、被相続人の居住用や事業用の宅地があった場合、これらの宅地は相続人の生活基盤を維持するために重要な財産といえます。そこで、このような事情に配慮するために相続税の負担の軽減を図る制度が用意されています。この制度は一般的に「小規模宅地等の特例」といいます。この小規模宅地等の特例には、その宅地の用途に応じて複数の種類が用意されており、その一つに被相続人の居住用の宅地があります。
2.複数の生活拠点がある場合には?Aは、母親Bの死亡により、Bが所有していたS市内のマンションとK市の住宅(面積合計約149㎡)を相続しました。Aは、2つの宅地について、小規模宅地等の特例の適用ができると判断して相続税の申告をしました。2つの宅地ともBが生前に住居として使用しており、また合計した面積が200㎡以下だったからです。なおAは、Bと別居していたため80%引きとなる「特定居住用宅地等」の特例の適用はありません。しかしS税務署は、2つの宅地の内、居住用のマンションの宅地については小規模宅地等の特例の適用を認めませんでした。
3. 「居住の用に供されていた土地等」はひとつ?S税務署が居住用の宅地を1つしか認めなかった背景には、次のような経緯があります。従前の税務署の取扱いは「主として居住の用に供していた宅地等」とされていたのです。その後法制化された際、「主として」の部分が削除されたのですが、趣旨は同一と判断したからです。
被相続人の居住用の宅地かどうかは、基本的には、被相続人が、その宅地の上に存する建物に生活の拠点をおいていたかどうかにより判定されます。具体的には、被相続人の日常生活の状況、その建物への入居目的、その建物の構造及び設備の状況、生活の拠点となるべき他の建物の有無その他の事実を総合勘案して、社会通念に照らして客観的に判断することとなります。
4.「主として」の規定が判断の分かれ目!まだ控訴期間中ですが、S地裁は今回の相続税の申告について、2つの宅地の小規模宅地等の特例の適用を認めています。相続税と所得税という税目の違いはありますが、所得税の場合には「主として」の規定があるのに対して、相続税の小規模宅地等の特例には「居住の用に供されていた宅地等」にこの「主として」の制限がないからです。そこで解釈として「居住の用に供されていた宅地等」が複数存在することも許容されているという判断をしたのです。
5.これからどうなる?最近のライフスタイルの変化もあり、先祖代々からの一戸建や都心のマンションなど住まいを複数所有して生活の拠点とする資産家は少なくありません。
今回は、一人の納税者の裁判の行方が今後の税制に影響を与えるかもしれないというお話です。この裁判の行方に目が離せません。例えば、居住用の宅地が複数認められる場合には、下記のC土地とD土地の両方で減額の適用を受けることができることとなります。複数の居宅で楽しく暮らせば、結果的にはそれが相続税対策!そんな夢のようなお話が実現するかもしれません。
2008年8月15日
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86号
相続開始時、家屋に固定資産税評価額がなかったら
相続税の課税価格を計算する際に、自宅やアパートなどの家屋は、原則としてその家屋の固定資産税評価額に評価倍率1.0倍を乗じて計算した金額により評価することとされています。つまり、固定資産税評価額がそのまま家屋の評価額となります。さらに、アパートなどの貸家は、その家屋の評価額から、貸家の評価の定めによって、借家権割合30%に賃貸割合を考慮した割合を控除します。明快な評価方法です。
ところが、家屋が新築や増改築によるもので、固定資産税評価額が付いていない又は変更されていないとなると、少し面倒な事態が生じます。
1. 固定資産税評価額がないと・・・例えば、1月に新築完成したばかりの自宅。残念なことに2月に相続が発生してしまい、その相続税の申告期限は12月です。家屋の固定資産税評価額は、相続開始の時点では付いていません。
こうした場合、国税庁が公表する財産評価基準書では、同様な状態での増改築等の場合の評価額の算定方法が明示されています。新築の場合もこの方法を用いることには、合理性が認められるでしょう。
その内容は、優先順位として、①相続税の申告期限までに固定資産税評価額が付いた場合には、その固定資産税評価額、②その家屋の付近にある状況の類似した家屋の固定資産税評価額を基として、その付近家屋との構造、経過年数、用途等の差を考慮して評定した価額、③状況の類似した付近家屋がない場合には、その家屋の再建築価額から経過年数に応ずる償却費相当額(定率法)を控除した価額の70%に相当する金額、となっています。
2.いつ付されるのかはわからないご存じのように、固定資産税評価額は、実際の購入代金や建築工事費ではなく、所定の固定資産評価基準による再建築価格等をもとに評価された金額です。新築の家屋については随時、市区町村(東京23区は都税事務所)がこれを決めていきますが、いつ決定されて台帳に登録されるのか、その実態はわかりません。
固定資産税評価額は、固定資産税だけでなく、不動産取得税の計算の基にもなるものです。相続税の申告期限まで10ヶ月ですから、その間に固定資産税評価額が付いてもよさそうなものですが、そうした個別の事情に対応してくれる窓口はありません。ただじっと付されるのを待つのみです。
また、現実問題として、付近にそう都合良く同じような建物があるはずもありません。
そうなると、③の方法により相続税の申告の準備を行うしかありません。つまり、建築工事費の70%です。これでは、一般的に言われている新築家屋の固定資産税評価額より高くなるケースがほとんどで、高い相続税額となってしまいます。
もし、③で申告をして相続税の申告期限後に固定資産税評価額が明らかになったら、申告のやり直しはできないのでしょうか。原則論からいえば、③は国税庁が公表している方法であり、本人が選択したものでその評価額計算に誤りがあるわけではないため、本来の更正の請求の理由には該当しません。このように、タイミング次第で、申告実務上は頭の痛い問題が発生します。
3. 新築分譲マンションでは固定資産税評価額が付されている場合も販売契約上の完成引き渡しは1月、という新築分譲マンションを取得してすぐの2月に相続が発生した事例がありました。同じマンション内で複数戸を取得しており、建物の購入金額の合計額は2億3,000万円でした。ところがこのケースでは、マンション販売会社が建物引渡しの前年10月の段階で新築の建物表題登記をしており、建物自体には平成19年新築として平成20年度の固定資産税評価額7,600万円が付いていました。もし、固定資産税評価額が付かないようなタイミングであったら、多額な相続税額になるところでした。
4.評価明細書の取得のためには固定資産税評価額を確認するための家屋の評価証明書は、その年1月1日現在の所有者(今回のケースでは販売会社)による固定資産課税台帳をもとにしており、原則としてその所有者の申請によらなければ発行されません。しかし、今回のケースでは、次のような取扱いを受けることができます。
都税事務所では、既に固定資産課税台帳に登録されている家屋であれば、登記情報により所有権の異動が確認できた段階で随時台帳の書き換えを行っているようです。こうした場合には、証明書申請日の所有者に対して、その旨を備考欄に記載した証明書を発行してくれます。また、台帳の書き換えがまだの場合であっても、所有権が確認できる建物の謄本を持参することで、証明書発行を受けることができるようです。
こうした手続きについては、所有家屋のある市区町村ごとに多少異なるかもしれませんので、専門家と連携を取って確認を行うようにしてください。2008年7月15日
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85号
居住用財産を譲渡した場合の所得税の特例
居住用財産については税務上様々な優遇措置があります。その中でも今回は、譲渡所得金額から3,000万円を減額できる特別控除の特例に焦点を当ててお話ししたいと思います。
1. 特例の内容一定の要件に該当する居住用財産(居住用家屋及びその敷地)を譲渡者の親族等以外の者に譲渡した場合には、譲渡所得の計算上最高3,000万円までを控除することができる、という特例があります。
2.譲渡資産の要件特例の適用を受けるには、居住用家屋及びその敷地の譲渡について、次のいずれかに該当する必要があります。
(1)居住用家屋のみの譲渡
(2)居住用家屋とその敷地である土地等の譲渡
①家屋と土地の所有者が同じ場合 または、
②家屋と土地の所有者が異なる場合、土地の所有者は家屋の所有者と生計一でその家屋に居住する親族であること(ただし、家屋所有者の控除不足額を限度に適用されます。)
(3)土地等のみの譲渡
家屋が災害により滅失した場合、または、家屋を取壊した場合には、一定の要件を満たしている譲渡
3. 特例適用の具体例上記2.(1)(2) について、家屋または土地を共有している前提で考えてみると、特別控除が適用される場合の譲渡所得金額は、次のケース(1)~(3)のように計算されます。
ケース(1)
A:3,000万円 - 3,000万円 = 0
B:3,000万円 - 3,000万円 = 0ケース(2)
A:4,000万円 - 3,000万円 = 1,000万円
B:2,000万円 - 2,000万円 = 0ケース(3)
A:2,500万円 - 2,500万円 = 0
B:2,000万円 -(3,000万円-2,500万円) = 1,500万円
4.贈与税の配偶者控除を組み合わせれば居住用財産の譲渡と、贈与税の配偶者控除を組み合わせれば、さらに税金上有利になります。
例えば、上記3.においてAとBが夫婦で、現在の所有状況がケース(3)のとおりであるとします。このまま家屋と土地を譲渡しても、Bは家屋を所有していないため、特例をまるまる受けることができません。この特例は、あくまで建物を売却することに伴う規定となっているためです。
そこで、Aが家屋の持分の一部を、贈与税の配偶者控除を使ってBに贈与し、ケース(1)のような 所有状況にするのです。
贈与税の配偶者控除に関して詳述はしませんが、一定の要件を満たす配偶者間の贈与については、贈与税の基礎控除と併せて2,110万円までは課税されないという規定です。
つまり、贈与する家屋を2,110万円以内にすれば、贈与税の課税もなく、譲渡についてもA,Bともにまるまる3,000万円以内の特例控除が活用できる、というからくりです。
5.元配偶者に対する譲渡であれば譲渡する相手が親族等である場合、特別控除の特例は適用できません。しかし、離婚の場合は例外です。譲渡する相手が離婚をした元配偶者(一定の場合には、除籍手続き前の配偶者でも認められます。)であれば親族等には該当しないことから、特例の適用は可能なのです。
離婚に伴う財産分与で居住用財産を移転した場合、分与した側は、分与時の時価でその居住用財産を譲渡したものとみなされてしまいます。しかし、要件を満たせば、この譲渡については3,000万円の特別控除を適用できるというわけです。
今回ご紹介した居住用財産を譲渡した場合の特別控除及び贈与税の配偶者控除は、記載した以外にも細かい適用要件があります。 実際に実行をお考えの際にはぜひご相談ください。2008年6月16日
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84号
相続人が遺産分割協議前に亡くなった場合
~数次相続~遺産分割協議を行っている最中に、不幸にも続けて相続人が亡くなってしまう場合があります。この場合には、当然ながら亡くなった相続人とは話し合いをすることが不可能となるわけです。それでは、いったいどのように分割協議を行ったらよいのでしょうか。
1. 遺産分割協議の必要性下記の親族家系図にあるAが死亡したことにより相続が発生しました。この時のAの相続人は、配偶者Bと長男C及び長女Dの3名となります。
Aに遺言が無いとすると、遺産を未分割の共有財産とする場合はともかく、通常は被相続人Aの財産債務に関し、各相続人が承継すべきものをそれぞれ決める必要があるでしょう。
この各相続人が承継すべき財産債務を決める手続きを遺産分割協議と言い、当然ながら相続人であるB、C、Dが協議を行う必要があります。
また、この遺産分割協議は、分割協議が整う前において相続人のうちいずれかが死亡した場合においても、当然に行う必要があるのです。
2.配偶者Bが亡くなった場合遺産分割協議を行うべき方が分割協議成立前に亡くなった場合には、その亡くなった方の法定相続人がその地位を引き継ぐことになります。
この遺産分割協議前に相続人が死亡し、相続人たる地位が相続人の法定相続人に引き継がれることを一般的には「数次相続」と呼んでいます。
したがって、配偶者Bが亡くなった場合であれば、Bの相続人であるC及びDがBの代わりに分割協議を行うことになり、結果としてC及びDの2人で分割協議を行えばよいことになります。
3. 長男Cが亡くなった場合長男Cが亡くなった場合には、その相続人はE及びFとなります。したがって、Aの遺産分割協議であったとしても、長男Cの代わりに配偶者E及び孫のFが分割協議に参加することになります。
この場合、利害関係人はB、D、E、Fとなり、遺産分割協議の内容が大幅に変更となってしまうことが予想されます。分割協議がスムーズに行われれば良いのですが、当初の相続人とはまったく異なる方との調整が必要になりますので、注意を要するでしょう。
4.数次相続と相次相続控除例えば、上記3でAから長男Cが承継すべき財産債務がE及びFを加えた協議により決定し、その後すぐに、長男CからE及びFへの分割協議もなされたとしましょう。つまり、短期間の間に2回の相続と遺産分割協議が行われるということです。
この場合、相続は2回発生しているのですから、相続税の計算ではAからCに対するものと、CからE及びFに対するものとの両方が相続税の計算対象になります。
しかし、これでは同一財産に対して短期間に2回の相続税が課税されるということになり、非常に酷となります。
したがって、相続税の計算では2回目の相続が10年以内に発生した場合には、2回目の相続により計算された相続税から、1回目の相続税のうち一定額を差し引くことができる「相次相続控除」という制度が用意されています。
5.その他の留意点上記のように相続が連続して発生した場合、相続税の計算においては一定の配慮がなされることから、通常は同じ財産に対して二重に納税がされるという問題は発生しないでしょう。
しかし、当然ながら相続税の諸問題が解決したことにはなりません。
例えば、配偶者BがAに引き続いて死亡した上記2の場合では、利害関係人が新たに増加する心配はありません。しかし、配偶者の税額軽減の適用に関して慎重な対応が必要になることに変わりはないのです。
遺産分割協議の方向性によっては、思わぬ税負担が生じる可能性もあるでしょう。ここはやはり、事前に税理士の的確なアドバイスが必要不可欠なのではないでしょうか。2008年5月15日
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83号
隠れた増税?
~逓増定期保険の取扱いの変更について~解約返戻金のある保険に係る支払保険料は、通常、全額経費となることはまずありません。しかしながら、一定の要件を満たせば支払保険料の全額が経費になり、しかも解約の時期などによっては、支払保険料のほとんどが戻ってくる保険商品があります。その名称は逓増定期保険といいます。支払保険料を全額経費としつつ、多額の解約返戻金も期待できる、法人の決算対策・利益対策としてよく利用されている保険ですが、この逓増定期保険の税務上の取り扱いが変更されたというお話です。
1. 逓増定期保険とは逓増定期保険とは、定額の保険料で毎年の死亡保障金額が増加(逓増)していく保険のことを言います。この保険、定期保険の一種ですので、保険期間満了時には解約返戻金はありません。しかしながら、保険期間の経過とともに解約返戻金が発生し被保険者の加入時の年齢と保険期間によってはピーク時に90%近い解約返戻金を得ることができるときもあります。この保険、個人で加入しても特段メリットはありませんが、法人で加入した場合には事情が異なります。法人が契約者・保険料負担者・保険金受取人、役員が被保険者となった場合、被保険者の年齢・保険期間の組み合わせにより、支払保険料を全額経費とすることができるのです。通常、解約返戻金のある保険については、支払った保険料が全額経費となることはまずありません。今回、この法人契約に係る逓増定期保険の取扱いの変更がありました。以下、法人契約に係る逓増定期保険について説明します。
2.従前の取扱い逓増定期保険について、支払った保険料の全額が経費となるパターンは下記の二種類です。
パターンA
保険期間満了時の被保険者の年齢≦60
パターンB(下記の二つの要件を満たす)
①保険満了時の被保険者の年齢>60
②加入時の被保険者の年齢+保険期間×2≦90
つまり、保険期間満了時の被保険者の年齢が60歳以下なら、全額経費。保険期間の満了時の被保険者の年齢が60歳を超えていたとしても、加入時の被保険者の年齢+保険期間×2の数が90以下であれば全額経費となるのです。しかも保険の解約時期によっては今までに支払った保険料の大半が解約返戻金として戻ってくることとなります。当然、この解約返戻金は法人の収入となりますが、解約返戻金を受け取った事業年度に何か臨時的な大きい経費が発生すれば、契約返戻金に係る税金を減少させることができます。社長の退職時期に保険の解約金のピークが来るように保険を設計し、支払保険料は全額経費、社長が退任する際に保険を解約し、退職金の原資とする、という使い方がポピュラーです。
3. 改正の内容平成20年2月28日、“「法人が支払う長期平準定期保険等の保険料の取扱いについて」の一部改正について”、が発表されました。改正後の内容によると、支払った保険料の全額が経費となるためパターンは下記の一種類のみとなりそうです。
パターンA
保険期間満了時の被保険者の年齢≦45
つまり、保険期間満了時の被保険者の年齢が45歳以下でないと、全額経費とならないという変更です。 上記以外の場合には支払保険料の四分の一~二分の一しか経費となりません。
改正後の取扱いの適用については、平成20年2月28日以後の契約に係る保険契約について適用することとされています。したがって、平成20年2月27日までに契約が完了した逓増定期保険であれば、全額損金計上のままでよいこととなります。
4.目的にあわせて賢く利用この逓増定期保険、経費という側面から見れば、今回の改正は納税者にとっては不利な改正かもしれません。しかしながら、支払ったときに全額経費であるならば、受け取ったときは全額収入です。ピーク時の解約を逃してほったらかしにしていれば解約返戻金はゼロとなります。ピーク時を逃さないために保険は解約したものの、解約による収入を圧縮するために、更に新しい逓増定期保険に加入・・・などということとなれば何のために保険に入っているのかわかりません。経費の側面ばかりに目を向けるのではなく、保険本来の目的、即ち何かがあったときの保障、という面も考え本当に必要な保険契約を選ぶべきではないでしょうか。そもそも必要のない保険に加入しているかもしれません。個人・会社を通じて現在加入されている保険について、定期的に見直しを行うことにより、保険をより効果的に利用することができるかもしれません
2008年4月15日
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82号
平成20年度税制改正
平成20年度税制改正の行方は例年とは違った様相を呈しています。改正法案の基となる税制改正大綱は、昨年12月13日に自民・公明の与党、これを踏まえて12月19日に財務省が発表。そして12月26日に民主党が独自の内容で発表を行いました。与党大綱は20年度に直接影響のあるものについては小幅な改正に止めた印象ですが、果たして衆参ねじれ国会ですんなり与党の改正法案が成立するのか、波乱はあるのか。今回は、与党大綱等から主な改正予定事項を整理してみました。
1. 相続税の総合的見直しを明記・取引相場のない株式等に係る相続税納税猶予制度を平成21年度に創設中小企業の事業承継については、オーナー経営者の相続によって、思わぬ高額な株式評価額により重い相続税負担が生じ、事業の承継自体が難しくなるといった深刻な問題が指摘されていました。この抜本的解消を目指して「中小企業の事業の継続の円滑化に関する法律(仮称)」が制定される予定です。これを踏まえて、税制面では平成21年度改正で「取引相場のない株式等にかかる相続税の納税猶予制度」を創設し、本制度を平成20年10月に予定される新法施行日以後の相続に遡って適用することが盛り込まれました。
注目すべきは、この創設に併せて相続税の課税方式を現行の「法定相続分遺産取得課税方式」から、各相続人が実際に取得した遺産額に応じて個別に課税計算を行う「遺産取得課税方式」に改めることです。更にこれに併せて、その際に相続税の総合的見直しを検討する、と明記されているのです。これは単なる検討課題という位置付けではなく、一歩踏み込んだ税制改正の具体的内容としての項目です。つまり、平成21年度に相続税を大改正する、とはっきり予告したということになるでしょう。今のところ改正内容は具体的ではありませんが、基礎控除の見直し等も考えられることから、今後の動向が注目される内容となりました。
2.上場株式等の譲渡・配当に係る証券税制平成20年中の取引には関係がありませんが、上場株式等の譲渡益、配当に関する現行の軽減税率は平成20年12月31日をもって廃止となります。ただし、いずれも特例措置として平成21年から22年末までの2年間は、上限を設けた上で、現行の軽減税率を継続します。
上場株式等の配当は、平成21年1月1日以後に支払われるものから、総合課税と申告分離課税のいずれかの選択適用ができる特例が創設されます。また、平成21年分以後では、譲渡損失と配当との間の損益通算を認める特例が創設されます。更に、平成22年1月1日以後支払われる配当については、申告不要の源泉徴収口座内でも譲渡損失と配当の損益通算が可能となります。
3. その他の主な改正土地の売買等にかかる登録免許税は、本則の二分の一の税率である現行の特例の適用期限が平成20年3月31日ですが、税率を段階的に引き上げながら適用期限を延長することとなります。
中小企業者等に関連する重要なものとして、少額減価償却資産の特例、交際費課税の特例については期間が2年間延長されます。
4.民主党は個別改正法案の提出を見送り大綱では、所得税の所得控除見直しによる「子ども手当」の創設、特殊支配同族会社の業務主宰役員給与の損金不算入制度の廃止など、与党にはない内容を盛り込んで大いに注目された民主党。しかし、今年度はこうした個別改正法案提出は見送りとなった模様です。
2008年3月15日
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81号
共同相続人に行方不明者がいたら!!
相続人の中に家出等で行方不明の方がいる場合、はたして相続税の申告ができるのか?遺産分割協議はどうすれば良いのか、名義書換はできるのか等の疑問について考えてみました。
1.行方不明から7年以上の場合行方不明から生死が7年以上明らかでない相続人がいる場合は、利害関係人の申立てに基づき、家庭裁判所で「失踪宣告」をしてもらいます。
失踪宣告がなされると、失踪者は死亡したとみなされます。つまりその失踪宣告が相続開始前であれば、失踪者の代襲相続人が相続人となり、他の相続人と共に遺産分割協議を行います。 なお、この失踪宣告には、厳密には以下の2つがあります。
① 普通失踪・・・不在者の生死が7年以上不明の場合(上記の場合)
② 特別失踪・・・遭難等の事故に遭って生死が1年以上不明の場合
2. 行方不明から7年未満の場合一方、行方不明から7年未満の場合は、上記の失踪宣告はできません。利害関係人の申立てに基づき、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任をしてもらいます。選任された不在者財産管理人は、家庭裁判所の許可を得た上で遺産分割の協議に参加することが出来ます。
つまり、遺産分割協議書には、本来の相続人(行方不明者)に代わって「不在者財産管理人」が署名・押印をすることになります。
この財産管理人は、行方不明者の財産について建物の修繕をしたり、賃貸するなどの現状に変更をきたさない管理行為は出来ます。しかし、これらを超える行為(処分行為)を行う場合には、家庭裁判所の許可が必要となります。
遺産分割を行うということは、処分行為にあたるため、家庭裁判所の許可が必要となるのです。
また、裁判所の許可を得るということは、不在者の取得財産については、それなりの財産が承継される必要があります。これは、遺産分割を進める上で時間がかかると共に、とても障害になると思われます。
3. 不在者財産管理人の選任をしないと不在者財産管理人を選任しない場合は、遺産分割協議が整わないため、未分割となります。つまり、相続人が一人いないのですから、遺産分割協議ができないということになります。納税の為に相続財産の処分(売却)が出来ず、預貯金等の異動も難しくなり、相続税の納税も困難になる場合もあります。
4. 遺産分割協議が整わないと・・・遺産分割協議が整わないと未分割での申告になります。未分割申告になると以下の重要な軽減特例が適用できません。
① 配偶者に対する相続税額の軽減
② 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例
③ 特定事業用資産についての相続税の課税価格の計算の特例
特に、相続人の中に配偶者がいる場合は、税額が最大で倍になってしまいます!地価の高い自宅をお持ちの場合も小規模宅地の減額が出来ず、ダブルパンチになります。
5. 未分割で申告したら上記特例は原則として、3年以内に遺産分割を行った場合に適用があります。しかし、相続税の申告期限の翌日から3年を経過する日までに分割できない場合は、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出します。この手続きにより、3年という分割期間を延長することが出来ます。
分割期間は延長できますが、この場合他の相続人の精神的疲労を考えると、ある程度のところで見切りをつけ、財産管理人の選任を行い、遺産分割を進められる方がよろしいのではないでしょうか。上述のように相続人の中に行方不明者がいると手続きが非常に大変かつ時間がかかり、遺産分割協議が整わない事態も生じてきます。しかし、万が一手元に行方不明者の実印があればどうなるでしょうか。他の相続人全員で同意し、実印を使用して分割協議を進めることも手続きの上では可能です。ただ、これは合法的ではありませんし、行方不明者が現われた時には新たな問題が生じることになります。決してお勧めできる方法ではありませんが、納税面からそうせざるを得ない事もあるかもしれません。最後は相続人全員で責任を取る覚悟で解決するより道はないのです。
2008年2月15日
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80号
売買契約の途中で相続が発生したら!?
相続はある時突然やってくるものです。もしかすると、土地等の売買契約の真っ最中に売主または買主が亡くなることがあるかもしれません。そのような場合における相続税及び所得税はちょっと意外な取扱いになっている、と言うお話です。
1.売買契約完了前に売主がなくなったら例えば、10月1日にAは宅地を1億円で売却する契約を締結し、同日に手付金1千万円を受領したものとします。その契約においては、11月30日に残額を受領すると伴に、土地の引渡しを行うこことなっていました。しかし、Aは最終決済を待たず11月15日に急逝してしまいました。
この場合、Aは土地の引渡しを完了していませんが、相続人が取得した財産は単純に土地と考えていいのでしょうか。
実は、Aの相続人は、その売買契約に係る土地の譲渡代金の請求権を取得したものとされるのです。つまり、土地の譲渡対価のうち相続開始時における未収入金で、設例の場合では、評価額は9千万円となります。
2. 売買契約完了前に買主がなくなったら逆に、上記1.の説例で、Aが買主側であったらどうなるでしょうか。
買主については、2通りの取扱いが認められています。
(1)原則
Aの相続人は、その売買契約に係る土地の引渡請求権という財産と、譲渡代金の未払金という債務を取得したものとされます。
引渡請求権の評価額は、原則として土地の譲渡対価の額である1億円です。一方、未払金は9千万円となります。
(2)特例
その売買契約に係る土地自体を相続財産として申告した場合には、それが認められます。
評価額は、一般的な土地と同様、路線価等による相続税評価額となります。
3.小規模宅地等の特例上記2.において、買主Aの相続人が(2)の特例により申告した場合には、要件に該当すれば小規模宅地等の課税価格の計算の特例と言う、非常に有利な規定を適用することができます。
この特例を適用できる土地は、相続開始の直前において被相続人等の事業または居住の用に供されていた宅地等に限られます。具体的には次のような事例が考えられます。
①被相続人(買主)Aが自己の事業または居住の用に供する建物を借地の上に所有していた場合
②その底地を地主から買取ることとなった場合
4.売主に係る譲渡所得次に、売主側の土地等の譲渡所得について考えてみたいと思います。
(1)原則~相続人の譲渡所得とする場合~
上記1.において、土地の譲渡代金の請求権を相続した相続人は、11月30日において残額を受取ると共に、その土地の引渡しを行うこととなります。
原則として、引渡しがあった時に当該契約に係る土地の譲渡があったものとされるため、譲渡所得は相続人に帰属することになります。
もし、譲渡時までにこの土地の譲渡代金に係る遺産分割が済んでいなければ、各相続人が法定相続分により譲渡所得の申告を行うことになります。ただし、譲渡所得の申告時までに、譲渡代金の分割が行われた場合には、その分割割合に応じた申告をすることができます。
このように、相続人に譲渡所得が帰属するものとして取り扱う場合には、その譲渡所得の計算上、税額が軽減される特例を適用することができます。詳述はしませんが、相続税額の取得費加算の特例と言い、相続税の一部を売却に係る経費のような扱いにできる使い勝手のいい規定です。
(2)特例~被相続人の譲渡所得とする場合
また、特例として、譲渡に関する契約の効力発生日をもって譲渡があったものとすることもできます。従って、元々の売主Aが居住用財産の譲渡の特例の適用を受けるつもりであった場合には、契約日である10月1日に被相続人となったAが譲渡したものとして申告をすれば、居住用財産の特例を受けることができます。
上記を表にまとめると次のようになります。
今回ご紹介した、売買契約の途中で当事者が亡くなってしまった場合には、4種類の立場の人が登場することになります。相続税だけでなく所得税までトータルで考えて、最も有利となる方法を選択したいものです。2008年1月15日
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79号
相続税申告の基礎の基礎
~相続人について~自分の財産は、大切な家族に引き継いでもらいたい。これは当然のことと思います。しかし、家族の全員が、財産を相続できる立場にある(=相続人)訳ではありません。
今回は、相続時の基本中の基本であり、最も重要な法定相続人の範囲や順位と、相続発生前の注意事項を、具体例を通して説明させていただきたいと思います。
1.法定相続人になるのは誰?亡くなった方の財産を相続する権利(遺言書のある場合を除きます。)を有するのは法定相続人であり、この法定相続人は民法で定められています。
図1をご覧ください。すべて被相続人の家族ではあります。ただ残念ながら全員が法定相続人に該当する訳ではありません。
まずは誰が法定相続人に該当するかを検討したいと思います。配偶者(夫又は妻)は、常に法定相続人に該当します。被相続人の財産形成に寄与もしているでしょうし、長年の貢献度を考えると当然かも知れません。配偶者相続人などとも呼ばれます。また、民法では配偶者相続人以外の相続人には、法定相続人になる順番が決まっています。
血縁関係のある場合、まず最初の順位としては子供です。この場合には、親や兄弟姉妹は、法定相続人になることはできません。
子供がいない場合には、親(直系尊属)が法定相続人となり、さらに親もいないという状況になって、初めて兄弟姉妹が法定相続人になる訳です。
2. 生活拠点が無くなる危機!!こんな例もありました。図2をご覧ください。被相続人Aは、妻であるBと次男Dの夫婦と一緒に住んでいましたが、BとDは早くに亡くなってしまっていたのです。今はAとEの二人で暮らしており、Aの身の回りのことなどはEが一生懸命しています。AにとってEは、とても大事な存在です。
このようなケースで、もしAが亡くなってしまうと、当然Aの財産は相続人間で分割されます。相続人は誰になるのかが大事な問題です。もうお気付きだと思いますが、相続人はCとFの二人になってしまうのです。Aがとても大事に思っていたEは、二人で住んでいた家(所有者はA)を相続することができないのです。家は相続人の名義となるため、Eは夫の兄弟から借りて住むことになります。兄弟がその関係を継続してくれれば、それでも良いかもしれません。しかし、突然その家を売却したり、その家に住みたいと言ってくる可能性もあります。そうするとEは住み慣れた家を失ってしまいます。とても寂しい状況です。
このような事態はできれば避けたいものです。例えば生前にEを養子にする方法が考えられます。こうすれば、家をEに相続させる内容の遺言書を作成することにより、本来相続人ではないEに財産を相続させることができるからです。実は相続税sには、通称“2割加算”と言われる規定があり、被相続人の財産を取得した人が、その親、子、配偶者以外の場合には相続税額が1.2倍になってしまうのです。しかし、Eを養子にすれば、この2割加算を避けられる事が可能なのです。
3. 時間が経っていれば遺言書の見直しも!ただ、遺言書さえ作成すれば問題は全て解決とばかりはいきません。例えば、遺言書を作成してから10年も経過すると、当時とは財産状況も変わり、生活状況も変化しているでしょう。ましてや推定相続人との関係にも何らかのトラブルでもあれば、遺言者の心情にも影響する事は必至です。
残されたご家族が円満に暮らせるように、 既に遺言書を作成されている方も、改めて見直しをご検討なさってみてはいかがでしょうか。2007年12月15日