お役立ち情報
COLUMN
毎月職員が交代で執筆しています。
ただ、自分の順番が回ってくると、
その対応は様々です。
税務のプロとして、日頃の実務や研究の成果を
淡々と短時間にまとめる者、
にわか勉強で急に残業が増える者、さて今月は…
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タイトル:
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52号
相続・贈与により取得した資産を売却した場合の譲渡所得の取得費について
相続等に係る登記費用の取扱いがかわりました。
土地・建物を相続、贈与したときにつきものの出費で登記費用というものがあります。今までは税務上何の経費にもならなかったものですが、ものによっては経費にできるようになりました、というお話です。
相続にかかる登記費用は、今までは譲渡所得の計算上、取得費には算入できないこととして取り扱われてきました。しかしながら、平成17年2月1日の最高裁の判決により、贈与・相続の際に支払われる不動産登記費用・名義書換手数料などについても取得費に含めて以下のように計算するよう取扱いが変更されました。(1) 貸アパートの建物など、業務用である減価償却資産の場合
譲渡所得の計算上、不動産登記費用を全額取得費として控除します。なお、必要経費、減価償却費の計算には影響を与えません。
(注)この規定は、平成17年6月24日付の所得税基本通達の一部改正により、平成17年1月1日以後に取得した資産については必要経費とされることとなりました。(2) 自宅の建物など、非業務用である減価償却資産の場合
譲渡所得の計算上、不動産登記費用から下記の算式により計算した減価の額の累計額を控除した残額を取得費として控除します。したがって、全額の控除はできません。
不動産登記費用×0.9×登記対象となった資産の
1.5倍の耐用年数×経過年数(3) 貸アパート・自宅の敷地など、非減価償却資産の場合
譲渡所得の計算上、不動産登記費用を全額取得費として控除します。したがって、譲渡資産が業務用か非業務用か、減価償却資産か否か、によって控除することのできる不動産登記費用が異なりますので注意が必要です。また、譲渡所得の計算上、概算取得費(譲渡金額の5%を取得費とする方法です)により譲渡所得を計算している場合には、不動産登記費用をその概算取得費に加算することはできませんし、譲渡資産とそれ以外の資産を同時に登記した場合には、譲渡資産に係るものとして不動産登記費用を按分して算出する必要があります。
この取扱いの変更は、更正等の除斥期間(5年)の制限により、申告期限から5年を経過している年分の所得税については法令上、還付を受けることができません。したがって、(1) 平成 17年分の売却については確定申告 (2) 平成16年分の売却については更正の請求(平成18年3月15日まで) (3) 平成12年から平成15年の売却については更正の嘆願書の提出(平成12年分の所得税については平成18年3月15日まで) により、対応する必要があります。 また、相続・贈与により取得したゴルフ会員権について名義書換料を支払った場合にも、不動産と同様に、その名義書換料を取得費に加算して譲渡所得の計算を行うことができます。ゴルフ会員権の譲渡により損失が発生した場合、他の総合課税となる所得(不動産所得、給与所得などが該当します)とその損失を相殺させることができます。それでもなお損失がある場合には、退職所得・山林所得と相殺させることができます。しかし、不動産の譲渡所得とは相殺させることはできません。例えば、バブル期に2,000万円で購入したゴルフ会員権で今の相場が100万円のものがあるとしましょう。ご子息が所得税の負担が重い方であれば、次のような工夫をすることにより所得税の負担を軽くすることができます。その工夫とは、一旦ご子息にそのゴルフ会員権を贈与したあとで売却するのです。これにより、ご子息はゴルフ会員権の譲渡損と他の所得を相殺させることができるのです。
以前から廃止されるされると噂されてきたゴルフ会員権の譲渡損の取扱い。平成18年以降は本当に認められないこととなりそうです。名義書換料の取扱いも変更され、譲渡損を出すメリットはさらに大きくなりました。売却するかどうか悩んでいた皆さん、今回がいい機会&最後のチャンスかもしれません。2005年10月17日
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51号
貸宅地物納のイ・ロ・ハ!?
先祖代々の土地をたくさん所有されている方にとって、借地権者のいる貸宅地の活用は頭の痛いところではないでしょうか。借地人は戦前からの親子3代にわたる付き合いがあり、換金したくても底地買取の交渉もままならない。ましてや更新料もなかなか満足にもらえない。そんな不良資産も相続の物納に向けて条件を整備すると、優良な資産に生まれ変わるかもしれません。
1.物納とは相続税の納付も他の税金同様、金銭で一時に納付することが原則となります。しかし、相続や遺贈により取得した財産が不動産等で、売却しなければ納付する金銭ができない、などという場合には例外的にモノで納付する「物納制度」が認められています。相続税評価額で収納され、しかも譲渡税は非課税!貸宅地も立派な納税資産になります。
2.お隣さんとは仲良くがベスト貸宅地物納に向けての重要なポイントは、まず隣地との境界確認です。隣地の所有者と「境界確認書」を交わします。この確認書に添付する測量図は現状での実測に基づく図面です。「縄伸びが怖い」といって測量を伸ばし伸ばしにしていると、いざ物納しようと思っても、時間と手間がかかりスムーズに進まず、相続人が大変苦労します。縄伸びしていても確定測量だけしておき、地積更正は相続時まで引っ張ればいいのです。そうすれば固定資産税は現状のままです。親が存命中に実測を行いお隣さんから気持ちよくハンコを頂いておきましょう。ここでもうひとつ物納の際に問題になるのが、境界上の塀です。
誰の所有物なのか、越境はしていないか、などの確認が必要になります。こちらについても「工作物に関する確認書」を物納時に提出しなければなりません。もし隣地の方が越境して塀を所有している場合は、境界線上から撤去又は移動することを確認するハンコが必要になります。また、これらの交渉でキーマンになるのが測量士です。物納申請に長けた測量士にお願いすると、物納申請をにらんだ書類を作成してくれるため作業が二度手間になりません。
3.借地人の相続が物納に関係?次に確認すべきことは、賃貸借契約書の中身です。戦前から貸されている土地については契約書すらない場合もあるのではないでしょうか。契約書があっても、借地人の名前がどうやら先代の名前のまま、契約面積もどうみても狭すぎる、なんてことも・・・。年月がたてば経つほど、問題もこじれてきます。物納申請時に借地人の権利を誰が相続したのか未確定の場合は、借地人の相続人全員の戸籍・住民票まで提出しなければなりません。この書類を用意するだけでも一苦労です。
4.地代の改定地代についても、測量後の貸付面積に改定する必要があります。今まで馴れ合いになっていた部分も測量を機に重い腰を上げて交渉に乗り出すときです。地代の適正価格は、居住用と事業用とでは国の算定基準が異なるため注意が必要となります。
5.契約内容が貸主に著しく不利な条項は削除すべき契約書を精査?すると「10年間は、地代の値上げを求めない」といった特約が盛り込まれている場合があります。この条項は、国の適正な管理・処分の支障になると判断され物納申請が却下されてしまいます。早急に削除しなければなりません。
6.意外と優良資産?以上のほかにも、物納申請時にはさまざまな書類を提出しなければなりません。しかし、貸宅地の整理に困っている土地所有者にとっては、相続はモノによる納付という換金化の絶好のチャンスにも早代わりします。
相続財産のほとんどが不動産のあなた、それも貸宅地がメインの方にとって物納はとても重要な納税方法です。相続税がとても金銭では納付できない方にとって、物納は条件さえ整備しておけば貸宅地のような一見不良資産も納税資産としては優良になります。
生前に貸宅地を物納に備えて整理しておけば、「相続人の気苦労が減る」という節税以上の大きな効果が見込まれるのではないでしょうか。2005年9月15日
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50号
農地の贈与にご注意を
今回は、農地の贈与にまつわる怖~いお話です。
1.農地法ある税理士事務所でのお話です。確定申告の忙しい時期が終わり、書類の整理をしながらほっとしているところに、司法書士の先生が電話をなさったそうです。「贈与登記ができない土地があります。」えっ、なぜ?
実は、贈与税の申告をしたものの贈与登記ができなかった事案の話なのです。理由を尋ねると、贈与契約をした土地の中に農地が含まれているからだと言うのです。早速調べてみました。農地法第三条によると
1 農地を農地のまま他人に権利移動する場合には、農業委員会又は知事の許可を受けなければならない。 2 権利を取得しようとする者が取得後において耕作の事業に供すべき農地のすべてについて耕作の事業を行うと認められない場合は、上記1の許可は受けられない。 すなわち、農地の贈与を受ける場合には、取得後耕作を行わなければ農業委員会等の許可を受けられず、その贈与契約は無効なのです。
2.相続税法それでは、相続税法ではどうなっているのでしょうか。相続税法基本通達では、農地の贈与による財産取得の時期について次のとおり規定されています。
相続税法基本通達(1の3・1の4共-10)
農地法第三条による許可を受けなければならない農地の贈与に係る取得の時期は、許可があった日後に贈与があったと認められる場合を除き、当該許可があった日によるものとする。 すなわち、農地法と同様、許可がなければ贈与もないことになります。
さあ大変です。贈与税の申告書を提出しています。納付済みの贈与税はどうなるのでしょうか。
3. 更正の請求最初に提出した申告書の税額より少なくなるような修正は、更正の請求書を提出して行います。提出期限は法定申告期限から一年以内です。従って、平成18年3月15日までに更正の請求書を提出し、贈与税の還付を受けることができます。
4.日々精進!以上のことを整理すると、民法上、農地の贈与契約は成立していますが、農地法により無効となるのです。相続税法は農地法に合わせて規定されているのです。追加の税負担がある訳ではないので、これらのことをお客様に説明すれば、ご了解を頂ける事柄ではあるでしょう。しかし、つくづく税理士というものは、税法だけではなく、いろいろな知識を求められるものだと、あらためて感じました。
土地の地目にはくれぐれも注意したいものです。2005年8月15日
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49号
変わる消費税 ~新規事業者への弾力的な運用措置~
1.免税点の引き下げ
平成15年度の税制改正により、消費税の納税義務が免除される課税売上高(消費税がかかる売上高)の上限、いわゆる免税点が1,000万円(改正前:3,000万円)に引き下げられました。個人事業者については、平成17年分から適用になります。課税事業者に該当するかどうかは、基準期間の課税売上高で判断します。基準期間とは、個人事業者の場合、課税期間の前々年ですので、平成17年分を課税期間とすると、基準期間は平成15年分が該当します。平成15年分の課税売上高が1,000万円を超えていれば、新規課税事業者に該当しますので、所轄税務署長に速やかに「消費税課税事業者届出書」を提出する必要があります。なお、簡易課税制度を適用できる課税売上高の上限も5,000万円(改正前:2億円)に引き下げられています。
■表1■ 基準期間課税売上高と課税事業者・簡易課税制度基準期間課税売上高 改正前 課税事業者 1,000万円超の事業者 3,000万円 簡易課税制度選択可能な事業者 5,000万円以下の事業者 2億円
2.課税期間と基準期間課税売上高が1,000万円前後で、課税事業者と免税事業者の間を行ったり来たりするようなケースが考えられます。たとえば、平成17年分の課税売上高が800万円と1,000万円を下回っている場合でも基準期間である平成15年分の課税売上高が1,000万円を超えていれば、平成17年分は課税売上高800万円について、消費税額の精算としての申告をする必要があります。つまり、基準期間の課税売上高はあくまでも、課税期間に課税事業者であるかどうかを判定するための基準であって、実際の消費税額の計算は課税期間の課税売上高によることになります。
3. 簡易課税制度の選択
基準期間の課税売上高が5,000万円以下の場合、簡易課税制度を選択することができます。簡易課税制度を選択するかどうかは、シミュレーションなどによる検討が必要になります。以下に簡単なシミュレーションの例をご紹介いたします。
事例平成15年分(基準期間)賃貸料収入1,200万円 平成17年分(課税期間)収入見通し1,575万円 経費見通し820万円(内訳:租税公課350万円、保険料50万円、管理手数料420万円)
① 原則課税方式を選択した場合
課税売上(消費税がかかる売上)から課税仕入(消費税がかかる経費)を差し引き、差額を納税額とします。
課税売上に対する消費税額
15,000,000×5%=750,000 ・・・(A)
課税仕入に対する消費税額
4,000,000×5%=200,000 ・・・(B)
(A)-(B)=550,000円② 簡易課税制度を選択した場合
課税売上に対する消費税額から、課税売上に係る消費税額にみなし仕入率を乗じて計算した控除対象仕入税額を控除し、納税額を算出します。
課税売上に対する消費税額
15,000,000×5%=750,000 ・・・(A)
課税売上に係る消費税額×みなし仕入率(サービス業は50%)
750,000×50%=375,000 ・・・(B) (控除対象仕入税額)(A)-(B)=375,000円
この事例では、簡易課税制度を選択した方が納税額が少なくなります。建物の新増築や大規模な修繕など課税仕入に該当する経費が大きくなると、場合によっては消費税の還付を受けることになります。しかし、簡易課税制度を選択した場合には、実際の仕入に係る消費税額を控除するわけではありませんので、還付を受けることはできません。そのうえ、簡易課税制度をいったん選択すると、2年間は同制度を継続して適用しなければなりません。したがって簡易課税制度の選択には慎重な検討が必要になります。
なお、簡易課税制度を選択するためには、通常その課税期間の開始日の前日までに、所轄税務署長に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出しなければなりません。ただし、平成17年分より、基準期間(平成15年分)の課税売上高が1,000万円を超えることを理由に、課税事業者となった「新規課税事業者」については、その提出が平成17年12月31日までと緩和されています。
また、いったん「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出していた場合でも、平成17年12月31日までであれば、その取下げが認められます。すでに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出済の方も改めて検討することが可能です。2005年6月15日
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48号
中小企業投資育成会社を利用して事業継承
Vol. 40で従業員持株会を利用して株価を引下げる方法をご紹介させていただきました。今回は、中小企業投資育成会社を利用して株価を引下げる方法をご紹介させていただきます。
1. 中小企業投資育成会社とは聞きなれない方がほとんどだと思います。中小企業投資育成会社とは、「中小企業投資育成会社法」という法律に基づいて、企業の成長・安定化と社会貢献を目的に設立された株式会社で、日本には3社あります。この投資育成会社の事業内容は大きく分けて2つ。1つは、創成期にある企業に投資し、公開を目指し、キャピタルゲインを狙うもの。もう1つは、増資引受けまたは金庫株の買取により株主となり、安定した配当収入を狙うものです。 後段の安定収入を狙う方の事業が、事業承継対策をしたいと思っているオーナー企業に利用することができます。
2. 株価引下げ効果オーナー企業K社のG会長が保有する株式は、10,000株(発行済み株式20,000株、資本金1千万円)。これら株式はすべて相続発生時には、純資産価額方式と呼ばれる方法で算定した株価で算定されるとします。この時のG会長が所有する株式の相続税評価額は1株100,000円、株式全体で10億円となります。
この時、相続税率の適用区分が50%であれば、単純に計算すると、5億円もの相続税が必要、ということになります。自社の株式はたくさん持っていても、納税資金は十分にない。それが事業承継時の最大の悩みです。非公開株式では、簡単には物納することもできません。
ところが、第三者割当増資で投資育成会社が株式を引受ける場合の株式発行価額は、投資育成評価額と呼ばれる方法で算定します。この投資育成評価額は株式の額面金額(現在は商法改正で額面は撤廃されていますが)もしくはそれにかなり近い価額になる場合がほとんどです。その結果発行済株式全体の株価が薄まり、オーナー所有株式の相続税評価額が引き下げられるのです。
3. 具体例投資育成評価額は次の計算式で求めることができます。
評価算式= (1株あたり予想純利益×配当性向※)/期待利回り
※配当性向=配当金/当期純利益K社の場合、例年1株あたり50円の配当を行っていました。また期待利回りは10%であったとします(期待利回りは企業の安定性、成長性などから8~12%の範囲内で決定されることになっています)。そして予想純利益は当期純利益に等しかったと仮定すると、1株あたりのK社の投資育成評価額は500円となります。
500円で10,000株増資したとします。純資産は5百万円増加し20億5百万円、株式は30,000株となるのですから、新たな純資産価額方式による評価額は20億5百万円/30,000株=66,833円となります。G会長の相続財産は1株当たり33,167円減少し、株式全体で3億3千万円減少、相続税額で1億6千万円の節税となるのです。
4. やっぱり心配なのは外部株主がはいってくること・・・そう思われるオーナーの方が大半だと思います。でも大丈夫です。中小企業投資育成会社は配当収入がもらえればよいのですから、利益がたくさん出ているのに、不当に低い配当性向だったり、本業を営業譲渡しようとしたりしなければ、特に議決権を行使して経営に口を出してくることはないといわれています。
株の評価が高く、安定した配当をできる会社をお持ちのオーナーの方は一考されてはいかがでしょうか。
2005年5月16日
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47号
気になる平成17年分の税制改正の内容は?
昨年12月に与党より、平成17年度税制改正の大綱が発表されました。しかし、17年度の税制改正ではそれほど大きな改正は行われることはないようです。17年度以降、税制はどのように変わっていくのでしょうか?読者の皆様に影響のありそうな改正点に限定して、過去の税制改正や今回の大綱を元に検証していきたいと思います。
1. 消費税の改正の影響は17年から個人事業者については、17年から免税点の引下げ等の影響を受けることとなります。
◆ 免税点(消費税の納税が必要のない個人事業者)
・16年まで・・・2年前の課税売上高が3千万円以下
・17年以降・・・2年前の課税売上高が1千万円以下
◆ 簡易課税による税額計算が認められる個人事業者
・16年まで・・・2年前の課税売上が2億円以下
・17年以降・・・2年前の課税売上が5千万円以下
今まで課税売上高が2千万円前後であったため、消費税の納税とは無縁だった個人事業者も17年からは納税の必要が出てきます。
2. 老年者控除の廃止老年者控除とは、年齢が65歳以上の方について、50万円を所得から控除することができる制度ですが、この制度は17年度から廃止となります。合計所得金額が1千万円超の方はもともとこの制度の対象外であるため影響はありませんが、合計所得金額が1千万円以下の方については増税となります。
3. 住宅ローン控除制度の縮小16年中に入居した場合(現行) ■ 居住年から10年間・・・住宅借入金(5千万円まで)×1%
17年中に入居した場合 ■ 居住年から8年間・・・住宅借入金(4千万円まで)×1%
■ 居住年から9年目、10年目・・・住宅借入金(4千万円まで)×0.5%住宅ローン控除については、18年以後も控除額が徐々に縮小される予定となっています。
4. 青色申告特別控除額の変更16年分まで 17分以降 複式簿記による記帳 55万円 65万円 簡易簿記による記帳 45万円 - 上記以外 10万円 10万円 複式簿記による記帳を行っている事業者については特別控除額が10万円増加する一方、簡易簿記の場合に認められていた45万円の特別控除はなくなり、10万円の控除額に統一されます。
5. 定率減税は半分の規模に縮小所得税 住民税 現行の減税額 所得税額の20%
(25万円が限度)住民税額の15%
(4万円が限度)18年分の減税額 所得税額の10%
(12万5千円が限度)住民税額の7.5%
(2万円が限度)
6. 特定口座へのタンス株の移行が17年4月以後から再び可能にいわゆるタンス株の特定口座への移行は、16年末が期限とされていましたが、17年4月から21年5月までの期間も実際の取得日と取得価額により移行が可能となりました。これに伴い、13年10月1日の終値の80%を取得価額とする「みなし取得価額の特例」は廃止となります。
7. 特定口座なら所有株式の発行法人が潰れてしまっても救いの手が・・・所有株式が西武鉄道のように上場廃止になったり、発行法人が清算してしまったりすると、株式の価値はなくなります。このような価値の損失は、残念ながら税金面での配慮がなされていません。株式の売買による損失としてその他の所得と相殺したり、翌年に繰り越したりすることができないのです。
しかし、その株式が特定口座内の株式であれば、通常の株式の売却損と同様の取扱いを受けることができることとなりました。具体的には、他の株式の売却益と相殺することができ、相殺しきれない損失は翌年へ繰り越すことができます。
他にも改正項目はありますが、紙面の都合上、主要なものだけを取り上げました。ただし大綱には、「消費税を含む税体系の抜本的な改革」を実現する旨の記載もあり、17年度の改正は、いわば嵐の前の静けさなのかも知れません。2005年3月15日
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46号
相続税評価額と物納収納価額
相続に際して、その相続した土地を物納しようとお考えになっている方もいらっしゃると思います。今回は物納の際の収納価額(国が引き取ってくれる価額)にまつわる、思わぬ落とし穴についてお話します。
通常、相続財産を物納しようとした場合、物納財産の収納価額は、相続税の申告書に記載された価額によることとされています。つまり、相続税を計算する際に1億円で評価された土地ならば、収納価額も1億円。税金を納める側の立場からすれば、これは当然なお話です。
ところがその土地の利用状況によっては、1億円で評価されているにもかかわらず、収納価額はその半分の金額にもならず、いざ物納を申請しようというときに大慌て…というケースもあります。そんな事にならない様、物納予定の土地については事前に利用状況を確認されておくことをおすすめします。
よくあるケースとして、以下の2つのケースをご紹介します。① 使用貸借に係る土地
父親から使用貸借した土地にアパートを建てて賃貸をしていたAさんが、父の死亡に伴いその土地を相続により取得。この土地を物納しようと考えているケース。② 土地の無償返還の届出が出されている土地
身内の経営する会社に貸与している土地(※)をBさんが相続により取得したため、その土地を物納しようと考えているケース。
上記の2つです。①の場合、相続税を計算する際には、自用地(更地)として評価されます。しかし、国がその土地を物納により収納する場合の収納価額は、自用地としての価額ではありません。借地権の価額に相当する額を差し引いた底地としての価額となります。本人以外の人物(Aさん)所有のアパートが建っている土地を国が引き取る訳ですから、物納後のその土地の権利関係は、「Aさんが国から土地を借りている」ことになります。
そのため、相続発生前の使用貸借とは状況が異なってしまうから、というのがその理由です。借地権割合が60%の土地においては、1億円で評価されていても4千万円でしか収納されないということになります。②の場合、土地の無償返還届出書が出されているため、相続税を計算する際には自用地(更地)としての価額の80%相当額として評価される分、①よりお得といえますが、収納価額は①と同様です。つまり、8千万円で評価されていても(自用地評価1億円とする)4千万円でしか収納されません。
ただし、上記のケースは物納時においても土地の上に他人の建物が建っている場合のお話です。物納時に建物を取り壊してしまった場合は、原則として収納価額は自用地(更地)評価額となりますので、老朽化した建物ならば思い切って取り壊すのも有効な一手段かもしれません。申告時には低い評価で得をして、物納時には高い収納額でもう一度得をする。こんな作戦をお試しになってはいかがでしょう。
(※)税務署に土地の無償返還に関する提出書を提出済。<用語の解説>
「土地の無償返還に関する届出書」とは、将来借地人がその借りている土地を無償で返還することを約束した際に、税務署に提出する届出書をいいます。(一方又は双方の当事者が法人であることが前提です。)本来、権利金等(借地権の対価)の授受を行う慣行のある地域では、建物を所有する目的をもって賃貸借契約を行うときに、権利金の授受が行われるのが一般的です。地主にとっては、借地人がその土地を使用することによって、利用を制限されることになります。従って、その利用を制限されるのに見合う金額の権利金を地主は借地人から受け取るという訳です。もし、借地権の設定が無償で行われた場合、税務当局は、地主が借地人に対して借地権に相当する権利金の支払いを免除した、と解釈します。そして、借地人に権利金相当額の課税が行われてしまいます。(これを権利金の認定課税といいます。)この権利金の認定を受けないための方法の一つが、契約書において当事者間で将来無償で借地を返還する旨を定め、税務当局に「土地の無償返還に関する届出書」を提出する事なのです。2005年2月1日
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45号
もし、災害などに遭ったときには・・・
昨年は大型台風の度重なる上陸、大地震の発生、浅間山の噴火、クマの出没など様々な災害に見舞われる年になりましたが、昨年を振り返り不幸にも災害などに遭われた方に、税務上の救済措置をご紹介致します。
1. 税額の軽減措置救済措置のうち、税額が少なくするなる制度として、所得税法による雑損控除(以下「雑損控除」)と災害減免法(以下「災免法」)による所得税額の減免があります。雑損控除が"所得の一部を控除できる制度"であるのに対し、災免法は"税額の免除又は一部を軽減できる制度"となります。
2. 適用要件この2つの制度は対象資産、適用される原因の範囲も若干異なります。雑損控除については、住宅、家財、動産(うち、後記の生活に通常必要でない資産とされるものを除きます)、1個又は1組の価額が30万円以下の貴金属等が対象となり、損失の原因が災害、盗難、横領による場合に適用されます。これに対し災免法の場合は、住宅、家財のみが対象であり、損失の原因も災害のみに限定されます。また、損害の規模要件もあり、住宅、家財の価額の1/2以上の損害であることが必要です。また、雑損控除の適用にあたり間違いやすい点として以下2点があります。
① 対象資産が、事業用資産やクルーザー・別荘、1個又は1組の価額が30万円超の貴金属等及び生活に通常必要でない資産に該当する場合 ② 詐欺・恐喝を原因とする損害(自己の意思が介在している場合)
には適用がありません。
3. 計算方法◆災免法の場合
一定の所得金額の場合には、税額が直接に減額または免除されます。今年の合計所得金額 所得税の軽減額 500万円以下 全額免除 500万円超750万円以下 50%相当額が軽減 750万円超1,000万円以下 25%相当額が軽減 1,000万円超 軽減なし
◆雑損控除の場合
次のうち、いずれか多い方の金額を所得(税額ではありません)から差し引くことができます。
(イ) 損失の額(*)- 所得金額の1/10
(ロ) 損失の額(*)のうち災害関連支出の金額 - 5万円
(*)損失の額は保険金などによって補填される金額を除きます。
(参考)上記の適用には、災免法の場合には確定申告書に明細添付、雑損控除の災害関連支出がある場合には領収書の添付又は提示が必要です。雑損控除の場合、所得から控除できなかった金額は翌年以後3年間繰越して控除することができます。災免法の場合には源泉所得税の早期還付を受けることも可能です(一定の所得要件があります)。
4. どちらが有利?実際に数字を使って試算してみましょう。
合計所得金額800万円(所得控除150万円(雑損控除以外))の方の場合、損失額に応じて以下のように所得税額が減少します(定率減税は考慮せず)。損失額
(全て災害等の損失額とします)雑損控除適用後の所得税額 災免法適用後の所得税額 なし 97万円(注1) 100万円 93万円(注2) 72.75万円(注5) 200万円 73万円(注3) 72.75万円(注5) 300万円 53万円(注4) 72.75万円(注5) (注1) 650*×20%-33=97
(注2) {650*-(100-80)}×20%-33=93
(注3) {650*-(200-80)}×20%-33=73
(注4) {650*-(300-80)}×20%-33=53
(注5) 97-97×25%=72.75
* 雑損控除以外の所得控除後の所得金額650(800-150)
上記のケースでは損失額が200万円の場合には災免法適用が有利、300万円の場合には雑損控除適用が有利となります(比較ができるのはその年の合計所得金額が1000万円以下の場合に限られます)。
5. 実務上の損失額上記はあくまで机上の計算です。というのは実務上損失の金額は何を基に計算し、かつそれらを立証できる資料が災害後に残っているのでしょうか?もともと1の損害を100といってしまうことだってできそうです。保険の世界に"焼け太り""保険太り"という言葉がありますが、税金の世界にもある"焼け太り"制度なのかもしれません。
2005年1月1日
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44号
税理士から見た ここは外せない遺言作成の注意点
最近、高齢化や少子化の影響か遺言を作成される方が増えているそうです。遺言には、相続争いの防止や相続権の無い人にも財産を分配できるというメリットがあります。今回は、主に税務の観点から遺言作成上注意する点についてお話させていただきます。
1.遺留分にご注意を!遺言を作成する場合、遺言者は誰にどの財産を引き継がせるかを自由に指定することができます。しかし、完全に自由かというとそうではありません。
例えば、全財産を国に寄付するという遺言があった場合、残された家族は、生活に困る可能性があります。そこで、法律により最低限度の相続財産を遺族に保証しています。これが、遺留分です。
しかし、遺留分は誰にでもあるわけではなく配偶者や子などにあります。遺留分が侵害された場合には、遺留分の減殺請求をすることにより最低限の取り分をもらうことができるのです。
2.税務上の特例について考慮した遺言を!遺言作成上、注意することは遺留分だけではありません。遺言の仕方で、税務上の特例の適用を受けることができなくなったり、適用を受ける金額が少なくなったりするケースもあります。
例えば小規模宅地等の評価減の特例です。小規模宅地等の評価減は、適用を受けようとする宅地等を取得する人や取得後継続して利用するか否かなどによって減額割合や減額対象となる面積が変わってきます。事業用の場合、最大400㎡まで8割引ですが、200㎡まで5割引となってしまうケースもありますので注意が必要です。例えば、小規模宅地等の評価減適用前で400㎡、4億円の事業用の土地のケースでは、減額割合と適用面積によって8千万円(※1)と3億円(※2)の評価額になります。その結果、差が2億2千万円も生じてしまうのです。(※1)特定事業用宅地等の場合
4億円-4億円×400㎡/400㎡×80%=8千万円
(※2)事業用宅地等の場合
4億円-4億円×200㎡/400㎡×50%=3億円
3.納税についても考慮した遺言を!納税についても注意が必要です。相続税の納税は金銭一括納付が原則です。相続させる財産額しか考えずに金融資産を特定の人にのみ相続させるという偏った遺言を作成した場合どうなるのでしょうか。金融資産を取得しなかった人は金銭で納付することができなくなり、延納や物納を選択、あるいは取得した財産を売却しなければならなくなるケースがでてきます。
例えば、次のようなケースです。相続人は子Aと子Bの二人。財産は1億円の土地建物と1億円の現金で相続税額は2千万円とします。現金を子Aに、土地建物を子Bに、という遺言の場合、子Aは納付すべき相続税1千万円を相続した現金で納められますが、子Bは自分の金融資産が1千万円ないと納められません。金融資産がない場合子Bは、財産を売却して相続税を納めるか、分割払いで納めなければならなくなってしまいます。この様な状況にならないためにも、事前に納税の可否についてのチェックも必要です。自分の財産を引き継がせるために遺留分を考慮したり、納税について考慮したりと、遺言作成には、結構、気を使います。法律的なことばかりでなく、遺言作成には税務の知識も必要なのです!!
2004年12月1日
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43号
保険料贈与を活用して孫の代まで相続対策
生命保険は、生命保険料控除や、相続税の生命保険金の非課税枠、年金保険の受給権評価をはじめ、幅広く節税に利用されています。保険契約に係る節税方策の1つに『保険料贈与』という方法があります。贈与税の申告等で贈与の事実関係を明確にする他、連年贈与と指摘されないようにする、など、注意点はありますが、相続税の納税対策にはお勧めの手法です。
1.保険料贈与とは?父(60歳)と母と長男という家庭を例に挙げて考えてみます。父の相続税は相当な額になると予想されます。そこで次のような方法により保険に加入することに。契約者は長男で、父を被保険者とした保険に加入します。受取人は長男です。保険料を低く抑えるため、変額終身保険に加入することにしました。死亡保険金額3,000万円、保険料払込期間は10年で毎年約195万円の保険料を支払うものとします。当然、長男は年間195万円もの保険料を支払うお金はありませんので、毎年父が現金210万円を贈与します。長男は贈与税の申告を行い、贈与税10万円を納付します。
何年かして父が亡くなると、長男に3,000万円の保険金が支払われます。受取った保険金のうち支払保険料との差額に対して、所得税(一時所得)がかかります。一時所得の金額は{(3000万円-1950万円-特別控除50万円)×1/2=500万円}となります。所得税の税率は住民税と合わせて15~50%ですので、多く見積もっても250万円です。手許に残る{ 3,000万円-250万円=2,750万円}は、まるまる相続税の納税に充てることができます。
2.父が保険料を払うのとどっちが得?一方、父が契約者となり直接保険料を払い、死亡保険金を遺族が受取る場合には、相続税の対象となり、法定相続人1人につき500万円の非課税枠があります。前述の保険料贈与とどちらが得なのでしょうか。
① 保険料贈与の場合の税負担
贈与税10万円×10年+所得税住民税最高250万円=最高350万円
② 相続税の対象となる場合の税負担
保険料贈与のケースと比較して増加する相続税の対象となる財産の額 約3,000万円相続税の税率は10%から50%の累進税率です。勿論、財産が少ない場合にはゼロですので、税負担は0~1,500万円の間で財産の額などにより異なる、ということになります。相続税率50%の方にいたっては、1,150万円も差が出るのです!
3.おじいさんから孫への贈与が効果的!将来ご両親から多くの財産を受け継ぐことになる方も、いつかはお亡くなりになります。そのときの相続税を考えれば、早めに対策を打つに越したことはありません。そこでの保険料贈与を活用してみましょう。
父・子(45歳)・孫という家族を想定します。孫が契約者・保険料負担者・保険金受取人、子が被保険者という保険に入ります。例えば、保険金額4000万円、保険料払込期間5年の変額終身保険で年間保険料は約290万円とします。父から孫へ年間310万円の現金を贈与し、20万円の贈与税を納めれば、290万円の保険料を支払うことができます。何十年も経って子が亡くなったときには、孫に保険金4000万円が支払われることになります。孫への贈与で、孫が将来納めなければならない相続税の準備もできるのです!保険料贈与は、保険料が安い若いうちに始めるのが効果的です。また、贈与税は贈与を受ける人ごとに課税がなされるもの。贈与対象者が複数名いれば、それぞれに保険料贈与を行うことで更に節税効果が増します。早めの対策で孫の代まで安泰です。是非ご検討を!
2004年11月11日
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42号
広大地が、最大65% 評価減に改正!
1.広大地とは
相続税における土地評価の方法に、「広大地」の評価があります。広大地とは、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で、都市計画法に定める開発行為を行なう場合に道路や公園などの公共公益的施設用地(=潰れ地)の提供が必要と認められるものをいいます。つまり、潰れ地が生じるために宅地として有効利用できる面積が減ってしまうので、土地の評価額が下がるのです。
改正前は、潰れ地の地積を控除した地積がその広大地の地積に占める割合を用いて評価額を計算していました。実務的には、潰れ地を計算するために、その土地の開発要綱等法令の要件を満たす図面を作成する必要がありました。測量士や開発業者の手を煩わせ、実際に開発しなくても開発図面を描いてもらうという時間と費用がかかっていたのです。しかも、その評価には不確実な要素が含まれるため、税務調査の対象になり争われることも多々ありました。
2.いいこと尽くめの改正今回の改正により、評価方法の簡素化が図られました。以下の評価方法は、平成16年1月1日以降の相続・贈与について適用されます。
広大地補正率=0.6-0.05×広大地の地積/1,000㎡
広大地評価額=正面路線価×広大地補正率×面積土地所有者の方にとっては、改正前の評価方法ではおおむね2~4割程度の評価減でしたが、改正後は500㎡では42.5%、1,000㎡では45%、5,000㎡では何と65%の評価減となるのです!!よほどの悪条件(不整形地・間口狭小・がけ地等)の土地でなければ、今回の税制改正は有利になります。この評価方法は5,000㎡以下の地積のものに限られています。ただし、5,000㎡を超える広大地についは個別評価とすることを原則としているものの、65%の評価減を適用しても差し支えないとしています。
税務署にとっては、一義的に評価額を決めることにより係争事案を少なくすることができます。これまでが、争う要素が多過ぎたのかも知れませんが・・・。
一方、税理士にとっては、評価方法が簡単になったという利点はございますが、難しいからこそ腕の見せどころではあったのです。
3.広大地評価できない宅地次のような土地はたとえ面積的には広大でも、税務上の広大地として評価をすることはできません。
[1] すでに開発行為を終えているマンション・大規模小売店舗等の敷地(更に開発を行う必要性がないため) [2] 道路に面しており、間口が広く、奥行がそれほどではない宅地・道路が二方、三方、及び四方にある宅地等(潰れ地がほとんど生じないため) [3] 「大規模工場用地」に該当する土地(別途、規定が設けられているため) [4] 最も適した利用法がマンション適地(中高層集合住宅の建築が最適とされる土地)に該当した場合(潰れ地が生じないため) 広大地に該当すれば、それだけで最大65%の評価減を適用することができるのです! これまで以上に広大地なのかどうかが重要な判定要素となってきました。
4.ちょっとの工夫で広大地評価!土地を細かく分割して相続するのではなく、広大地として評価することができるように共有財産として遺産分割することをお勧め致します。広大地として相続税の申告を済ませ、その後に共有物の分割(共有物の分割は譲渡税の課税対象になりますが、一定の要件を満たした場合には譲渡税はかかりません)をすれば、広大地の評価減を最大限に活用できるのではないでしょうか。
2004年10月1日
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41号
少ない資金で不動産経営~不動産投資信託(REIT)で銀座の地主?
不動産投資信託。最近よく聞く名前ですが、「どうせ投資信託でしょ。株はわからないから。」などといって食わず嫌いをしていませんか。じつは皆様の長年の経験が活かせる新しい形の不動産経営かもしれません。
1. REITって何?不動産投資信託とは、その名の通り、不動産を主な運用対象とする投資信託です。日本版リートなどとも呼ばれます。不特定多数の投資家から資金を集めて不動産を購入し、そこから生じる賃料や売却益を投資家に分配する商品です。要は、みんなでお金を出し合って不動産を購入し、そこからの収入をみんなで分配する、というイメージです。
2.REITの特徴◎高い配当利回り
配当の源泉は不動産から生まれる賃貸料収入です。仕組上、利益の90%以上を配当する決まりとなっているため、比較的高い配当利回りが期待できます。
◎換金が容易
REITの中には、株式同様、証券取引所に上場されているものもあります。上場されているものであれば、市場で簡単に売却することができるため、不動産とは異なり、すぐに現金化することが可能です。
◎少ない資金で投資が可能
通常の不動産投資であれば多額の資金が必要ですが、REITの中には、数十万円の単位で購入できるものがあるため、比較的手の届く範囲で投資が可能です。
3.税務上の取扱い不動産に投資をしているとはいえ、有価証券です。したがって、利益の配当があった場合には配当所得となります。しかも、上場REITであれば10%の源泉徴収(平成20年3月まで)のみで課税は終了です。勿論確定申告も選択可能ですが、次の①、②以外の方は、確定申告をしない方が有利となります。いずれにせよ、配当控除の対象とはなりません。
①他の所得に損失があるため、配当所得を確定申告に含めると源泉所得税が還付される場合
②他の所得と合算して配当所得を確定申告すると定率減税額が増加し、結果、申告税額が減少する場合
なお、出資元本を譲渡した場合には、譲渡益に対して10%の課税です(平成19年12月まで)。仮に譲渡損が生じたとしても他の株式の譲渡益があれば損失を相殺できますし、相殺しきれない損失が生じた場合には3年間の繰越控除が可能です。
4.結局のところ・・・現物の不動産を所有していれば、そこからの収入は不動産所得です。もし損失が生じれば他の所得と相殺可能です。ただし、所得が多ければ最高50%の課税です。ただしこのREITであれば、そこからの収入は配当所得です。どんなに配当が多くても上場REITであれば10%の課税で済みます。
売却の場合はどうでしょう。土地の売却であれば20%の課税です。ただし上場REITへの出資であれば10%の課税です。しかも今年の税制改正で土地の譲渡損失の損益通算は不可能となりました。損益通算が不可という点では条件は同じです。
投資信託は元本割れがあるんじゃないか?そんな声が聞こえてきそうですが、元本(買値)保証がないのは不動産も同じです。
そこで一計。不動産を見る目に自信があり、値下がりが続く土地をお持ちの方であれば、思い切って不動産を処分して上場REITに投資されては如何でしょうか。不良不動産を整理し、なおかつ、好立地の不動産から生じる収益が享受できます。不動産の譲渡時に20%の課税はありますが、不動産の価値が毎年5%ずつ減少しているのであれば4年目で20%の減少です。あの時売っておけば・・・なんてこともありえます。資産の組替え方法の一つとして、十分有用な選択肢ではないでしょうか。少ない資金で銀座の地主気分。夢ではないのかもしれません。2004年9月1日