お役立ち情報
COLUMN
毎月職員が交代で執筆しています。
ただ、自分の順番が回ってくると、
その対応は様々です。
税務のプロとして、日頃の実務や研究の成果を
淡々と短時間にまとめる者、
にわか勉強で急に残業が増える者、さて今月は…
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7号
金庫株の解禁 実は中小企業のオーナーにとって大変な朗報です
金庫株とは企業が特定の目的を定めずに自社の発行した株式を取得・保有する制度です。
従来の商法ではストックオプションや消却などの場合を除き、自社株の取得を原則禁止していましたが、今回の商法の改正により、金庫株の取得が正式に認められました。
新聞紙上はもっぱら上場企業を対象にした内容の報道をしていますが、実は中小企業のオーナーにとっても非常に重要な商法改正なのです。
今回の改正では、
①定時株主総会の決議により、会社が買い受けるべき株式の種類・総数・取得価格の総額を定め、
②取得価格の総額を利益処分後の配当可能利益の範囲とすれば、
会社自身の資金で、会社の株式を、目的を定めることなく、購入できるようになったのです。
もちろん、この制度は全ての法人に適用されます。
つまり、これまで評価だけが高く、全く流動性がないため不良資産として考えられていたオーナー所有の未上場株式の流動化が、自分の会社の資金で図れるようになったのです。
しかしながら、喜んでばかりもいられません。実際に対策を実行するには検討すべき事項も多く、また、税法の取り扱いも複雑で、大きな落とし穴が待っている場合もあります。
みなし配当の問題や買い取り価格の決定など、ひとつ間違えば、予想をはるかに上回る税金が・・・たとえば、金庫株の買い取り価格。買い取り価格は、原則として法人税法上の時価となっています。では、法人税法上の時価とはどうやって求めればいいのでしょうか。また、自社株式の相続税評価の場合には認められている「法人税等相当額(42%)」の純資産価額からの控除も認められませし、中心的同族株主(同族で25%以上保有する場合等)が保有する株式の評価方法も違ってくるのです。商法の改正が認められたばかりなので、まだまだ不明な点も多いですが、対策には細心の注意を払わなくてはいけないのも事実です。
少しでもお役に立てれば幸甚です、転ばぬ先のATO・・・2001年7月1日
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6号
消費税にご用心!
1.知らぬ間に納税義務者?
不動産を所有する個人の方が、本人が気づかずに消費税の納税義務者となることがあります。個人が所有する賃貸用建物を譲渡する場合です。今まで、個人の確定申告で不動産所得の申告をしていた方が、その所有する賃貸用建物を譲渡した場合の消費税について、以下ご説明いたします。
2.個人が法人に建物を譲渡した場合税務の世界では、個人が不動産所得として申告している建物を譲渡した場合に、譲渡した建物代金に消費税が含まれているものと考えます。例えば、1,000万円の駐車場収入(消費税込)以外に消費税の対象となる収入がなく、売却代金が2,000万円を超える建物を譲渡した場合を考えてみましょう。建物の売却代金も消費税の対象となる収入となります。その結果、その譲渡した年の消費税の課税対象となる収入が3,000万円を超えることとなってしまいます。3,000万円を超えてしまう場合には、その翌々年に預かった消費税から支払った消費税の差額を納税しなければなりません。したがって、その翌々年に消費税の申告が必要となります。今までは、消費税の対象となる収入が3,000万円以下であったので消費税を納付する必要がなかったにもかかわらず、です。その対策として、消費税を納めなければならない年に、簡易課税という厳密な計算をしない方法を選択する方法があります。また、翌々年に店舗用建物を取得するなどの多額の設備投資の予定がある場合には、上記の簡易課税を選択しないで、建物分の消費税の一部を還付させる方法もあります。
3.税務署の目税務署では、建物の譲渡所得に対する所得税については、資産税部門が担当します。不動産所得に対する所得税については、所得税部門が担当します。そして、消費税については、両所得ともに所得税部門が担当となります。このため、譲渡に係る消費税について、チェックがあまく、消費税申告書が送られてこない、といったこともあるようです。
4.専門家を使って節税を!消費税の納税義務者になるかどうかは、事前に判断できます。専門家のアドバイスを守り、計画的に対策を進めることが重要でしょう。利益に対して課税される所得税などとは違って、案外軽視されがちな消費税です。しかし、対策のあるとなしとで意外と差が出るのも消費税なのです。
2001年6月19日
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5号
税務署と争うということ
1.税理士の知恵?
申告書を提出する前から、税務署の見解が納得できない場合があります。たとえば相続税申告における土地の評価です。税務署の公式見解である通達・路線価で評価した場合に1億円で評価される土地が、鑑定士・地元の不動産業者の評価では、7千万円、このような場合です。納税者側の評価である7千万円で申告をする場合には、税務調査が予想されます。7千万円が低すぎると認定されると、修正申告を慫慂(しょうよう)され、応じない場合には、更正処分となります。修正申告に応じた場合でも、更正処分になった場合でも、本税(足りなかった税額)のほか、加算税・延滞税が課税されます。
加算税・延滞税の課税を避けるため、当初の申告では税務署の評価(1億円)に基づいて申告書を作成・税額を納付し、その後に納税者の評価(7千万円)で申告し直す方法があります。一度払った税金を返してもらこのような方法を更正の請求といいます。
更正の請求が認められる場合には、税金が戻ってきます。仮に認められない場合でも、税務署の見解通りの当初申告が提出され、税金を払っているので、本税が戻らないだけで、加算税・延滞税の心配は不要です。余計なものを支払うことを避けるために、更正の請求という方法をとるのは、「税理士の知恵」ともいわれています。
2.立証責任税務署と納税者の見解の相違は、最終的には裁判所で決着します。裁判で勝つためには、自分の主張を立証しなければなりません。税務署が納税者の申告を否認する場合には、税務署側に立証責任があり、納税者が更正の請求を行う場合には、納税者に立証責任があるとするのが、裁判所の考え方です。
お金を貸した・返したというような事実の争いならば、立証責任が特に問題になることは、ありません。事実を主張する側が、立証責任を負うことが、道理にかなっています。
しかし、「この土地の評価額はいくら」だとかいう問題は、本来が白黒のつけられないグレ-な領域の問題です。税務の問題には、実にグレ-な問題が多いのです。
グレ-な問題での立証責任は、裁判の行方を決める重要な要素です。いずれの主張も裁判官を納得させることができなければ立証責任を負う側が敗れることになっています。
3.強気でゴー裁判まで行って勝てる税金訴訟は、ほんのわずかにすぎません。裁判まで考えることは無駄かもしれません。しかし、見解の相違で争うことがわかっているならば、当初申告で納税者の見解を主張することがベタ-です。税務署との交渉もスム-ズにいくことが多いのです。更正の請求という手法をとれば、弱気を見透かされて、結局は足元を見られることになります。
2001年5月1日
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4号
ついうっかり申告し忘れ、思わぬ附帯税が!
確定申告期限から1月近くが経ちます。税金を納めた方あるいは還付を受けた方それぞれいらっしゃると思います。
振替納税の方は所得税が4月18日に、消費税は4月26日に銀行口座から引き落とされます。残高をご確認ください。
今回は、税金を払わなかったり、少な過ぎたりしたらどうなるの?という疑問についてお答えします。
附帯税がかかります法定期限内に確定申告書を提出しなかった場合や修正申告書の提出、更正があった場合等には、本来払うべき税金に延滞税や加算税などの税金を合わせて納付しなければなりません。
本来支払うべき税金に合わせて納付しなければならない税金を附帯税といいます。
附帯税は大きく2つに分かれます。1つは払わなければならない税金をまったく払わなかったり、正しい金額を払わなかったときにいわゆるペナルティーとして課されるもの。もう1つは期限までに納付できなかったときに利息として課されるものです。附帯税には以下の6つのものがあります。
ペナルティーとして課されるもの①期限までに申告書を提出している場合
期限内に確定申告書を提出した後、税務調査や税務署の指導等により修正申告書を提出した場合、または更正によって追加税額が生じた場合に課されるものを過少申告加算税といいます。
課税割合 原則として追加される本税の10%
ただし、その追加税額のうち
期限内確定申告額又は50万円のいずれか多い金額を超える部分については
15%
(計算した金額が5,000円未満の場合は徴収されません)②期限までに申告書を提出していない場合
決算の作業が申告期限までに間に合わなかった場合やうっかり申告し忘れて期限までに確定申告書を提出できなかった場合にペナルティーとして課されるものを無申告加算税といいます。申告書を提出していないために税務調査を受け、申告書を提出した場合等に課されます。ただし、税務署から言われる前に自ら申告書を提出すれば課税割合が軽減されます。
課税割合 納付税額の15%(自主的に申告した場合は5%)
(計算した金額が5,000円未満の場合は徴収されません)③源泉所得税を納めない場合
資金繰りの悪化が大半の理由になるでしょう。従業員から預かった給与などの源泉所得税を期限までに納めることができなかった場合に課されるものを不納付加算税といいます。
課税割合 納付税額の10%
(計算した金額が5,000円未満の場合は徴収されません)④悪質な税金逃れだと認められる場合
所得を故意に隠したり、相続の際不当に財産を隠していて税務調査でバレた場合等のペナルティーです。過少申告加算税などが課される場合に、仮装・隠ぺい等その手口が特に悪質だと税務署が認めたときは、その過少申告加算税などに代えて重加算税が課されます。
課税割合 過少申告加算税・不納付加算税に代わる場合 納付税額の35%
無申告加算税に代わる場合 納付税額の40%
(計算した金額が5,000円未満の場合は徴収されません)
利息として課されるもの⑤申告書は提出したが、納期限までに税金を納めない場合
申告書は期限までに提出しても、うっかり納めるのを忘れていた。あるいは資金不足で期限までに税金を納められなかった。こんな場合に課されるものを延滞税といい、まさに遅延利息です。
課税割合 年14.6%(ただし、納期限の翌日から2ヶ月間は年7.3%)
(年7.3%部分については現在の低金利を考慮して現在は年4.5%に軽減されて
おります)
(計算した金額が1,000円未満の場合は徴収されません)⑥税金が期限までに納められないので延納する場合
税金は期限までに現金で一括して納付するのが原則です。しかし相続により取得した財産が換金化しにくいものである場合は期限までに納付できないことがあります。
このように期限までに税金が納付できない場合には、延納届出書という書類を提出して税務署より延納の許可を受ける事ができます。延納の許可を受けた場合に本来の税金と合わせて納付するものを利子税といいます。課税割合 年7.3%(現在は年4.5%)
(計算した金額が1,000円未満の場合は徴収されません)⑤と⑥は遅延するのは同じでも、前もって申請すれば⑥の場合は利息が軽減されるのです。
このように、附帯税はかなり負担の重いものになります。
うっかり申告し忘れていることは無いでしょうか?今ならまだ間に合うかもしれません。2001年4月1日